広島高等裁判所 昭和31年(う)162号 判決
「論旨は、原判示第一及び第二の被告人大津同田中間の五万円の授受の点は何等犯罪を構成しない。即ち右金五万円は田中の要求に基き他の運動員である中村義雄等に対し報酬等として供与する目的を以て授受されたものであつて田中の所得に帰せしめる趣旨ではないから右は供与ではなく交付であり、且つ右中村義雄等に対する供与の準備行為に過ぎないのであるから、右供与行為が実行された以上右金五万円授受の点は後の供与行為に吸収せられ別罪を構成しないというのであるけれども原判決挙示の証拠によれば、右金五万円はそのすべてを他の運動員に供与すべき趣旨の下に授受されたわけのものではなく、他の運動員の何人に対し如何なる額を供与すべきやについては何等具体的な取り極め等はなくこれらは挙げて受領者たる被告人田中の裁量に一任されて授受されたものであつて、その中には当然同被告人に対する報酬も不可分的に含まれていたものであることが認め得られるから(現に同被告人はその中から金一万二千円を自己に所得している)右金五万円全額につき供与並びに受供与罪が成立するものと解する相当とする。従つて右五万円授受の点が交付又は供与の準備行為であることを前提とする所論は到底採用し難い。それ故論旨は理由がない。」