広島高等裁判所 昭和31年(う)165号 判決
所論は原判決は主文第二項において労役場留置の言渡をしているのに法令の適用においてこれが該当法条刑法第一八条を示さなかつたことは理由不備であるというにある。しかし刑法第一八条は刑事訴訟法第三三五条第一項の罪となるべき事実に対する適用条文ではなく、罰金不完納の場合における労役場の留置期間を定むるときの準拠法規に過ぎないものである。従つて刑法第一八条を判決理由中に明示しなかつたことをもつて刑事訴訟法第三七八条第四号にいう判決に理由を附しない違法があるとの論旨は理由がない。そこで更に原判決を調査するに原判決はその法条の適用を示すにあたり単に法条を羅列しているのであつて、その際刑法第一八条を記載していないのである。而して刑法第一八条は前記の如き性質の法規であるから必ずしもこれを明示する必要はないにしても理由中にその旨の説明をなすか理由の説明によつて之が適用を為したことが認められることを要するものである。このことは判決に理由を附しなければならないという刑事訴訟法第四四条第一項の精神に徴し明らかである。従つて原判決にはこの点に瑕疵があり、この瑕疵は法令の違反にあたるものといわねばならない。けれども原判決において言渡された労役場留置期間は刑法第一八条所定の範囲内において裁定されたものであるから、右の違法は原判決に影響を及ぼさないことが明らかであり原判決は破棄に値しない(最高裁判所昭和二五年(れ)第一五号昭和二五年四月二〇日言渡判決参照)。
(裁判長判事 伏見正保 判事 村木友市 判事 小竹正)