大判例

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広島高等裁判所 昭和31年(ま)1号 判決

請求人

楠博光

〔抄録〕

請求人は昭和二八年七月二七日詐欺の嫌疑により広島地方裁判所呉支部裁判官の逮捕状により逮捕せられ、同月二九日同裁判所裁判官の勾留状の執行を受けて呉拘置支所に勾留され、同年八月七日同裁判所に右詐欺並びに窃盗(窃盗は後に訴因変更により横領に改められる)の併合罪として起訴公判に付せられ、昭和二九年二月一一日同裁判所の保釈許可決定により釈放されたが、同年一〇月八日同裁判所において右詐欺並びに横領の併合罪として懲役一年、二年間執行猶予の判決宣告があり、これに対し請求人から控訴を申立て、その結果当裁判所において昭和三一年四月九日右詐欺の部分については無罪、横領の部分についてのみ有罪とし懲役六月、二年間執行猶予の判決宣告があり該判決は確定したことは右被告事件の訴訟記録に徴し明らかである。

そして右のように併合罪の一部が無罪となり他が有罪となつた場合における補償に関する刑事補償法第三条第二号については、併合罪を構成するそれぞれの罪と勾留との実質的な関連を検討し、若し有罪となつた事実だけについてならば勾留の理由も必要もないと認められるときは補償の請求を認めるのが相当であると解すべきところ、右訴訟記録を検討すると、前記横領(最初起訴は窃盗であつたが後に訴因変更により横領に改められたもの)は、島田卓三、小沢勇蔵等と共謀にかかるものとして右島田、小沢と共に起訴されたものであるが(島田、小沢の起訴は右横領のみについてである)島田、小沢は最初から不拘束のままで起訴されたものであること、右横領については請求人も最初からこれを自白し敢て争わなかつたものであつて、若し右の事実だけについてならば前記島田、小沢と同様に勾留の理由も必要もなく不拘束のまま起訴されたものと認め得られ、本件拘禁は一に右無罪となつた詐欺の事実のためであつたことが看取される。従つて本件は前記説示の理由によりその拘禁日数全部に対し所定の補償をするのが相当であると認められる。

請求人は右拘禁日数二〇〇日に対し一日金四〇〇円の割合による補償を請求しているけれども、当裁判所は同法第四条第二項に定める一切の事情を斟酌し、右拘禁日数に対し一日金三〇〇円の割合により合計金六万円の補償をなすを以て相当と認め、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 柴原八一 裁判官 尾坂貞治 裁判官 池田章)

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