広島高等裁判所 昭和32年(ネ)192号 判決 1958年4月24日
岡山県津山市川崎五百七十二番地
控訴人
福井幸吉承継人
福井秀治
同所
控訴人
同 承継人
福井嘉子
同所
控訴人
同 承継人
福井良二
岡山県英田郡英田町鳥淵四百三十九番地
控訴人
同 承継人
中瀬節子
右四名訴訟代理人弁護士
薬師寺一
広島市霞町
広島国税局長
被控訴人
竹村忠一
右指定代理人
西本寿喜
同
加藤宏
同
米沢久雄
同
笠行文三郎
同
森田政治
同
田原広
同
常本一三
右当事者間の昭和三二年(ネ)第一九二号所得税金額決定に対する取消請求控訴事件につき当裁判所は次のように判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人等の負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人が控訴人等に対し、昭和二十五年七月十三日附通知書を以てなした審査決定及び昭和二十七年十一月六日附通知書を以てなした誤謬訂正決定はこれを取消す、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決、右請求が容れられない場合の予備的請求として「被控訴人が控訴人等先代福井幸吉に対してなした右各決定の無効なることを確認する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、認否、援用は左記に附加する外何れも原判決事実摘示と同一なのでここにこれを引用する。
一、控訴代理人の主張
控訴人等先代福井幸吉は昭和三十二年一月二十八日死亡し、控訴人等がこれを相続した。本件審査決定並に誤謬訂正決定に際しては事前に帳簿書類を調査し決定と同時にその理由を明かにすべきであるのにこれが附記されていないから右各決定は違法である。
二、被控訴代理人の主張
控訴人等主張の日福井幸吉が死亡し控訴人等がこれを相続したことは認める。昭和二十四年度分の所得に関する審査決定をなす当時の所得税法には審査決定に対し理由を附記する旨の規定はなかつた。
三、証拠関係
控訴代理人は甲第二十九乃至第三十二号証を提出し、原審原告福井幸吉本人尋問の結果を援用し、被控訴代理人は右甲号各証の成立を認めると述べた。
理由
当裁判所も亦原判決と同様控訴人等の請求を失当であると判断したがその理由は左記に附加する外は原判決理由中の説示と全く同一なのでここにこれを引用する。
一、控訴人等先代福井幸吉が昭和三十二年一月二十八日死亡し控訴人等がこれを相続したことは当事者間に争がない。
二、原判決書八枚目(四六五丁)裏末尾から二行以下を次のように補充訂正する。
「(四)前顕各証拠を綜合すれば原告の昭和二十四年度分所得額は金五十二万一千七百円に達していることが明らかである。
以上の各事実を認めるに十分であつて証人中瀬節子、原告本人の各供述中右認定に反する部分は措信し難く他に右認定を覆すに足る証拠はない。そうすると被告は十分調査の上原告の昭和二十四年度の所得金額の存在を確定(最初はその所得額を金五十五万円と決定したが後誤謬訂正決定により金五十二万一千七百円に減額していることは第一の(二)認定の通りである)して前記審査決定をしたものであつて原告主張のように見込課税により所得のないものを存在するとしたものでなく、前記審査決定(誤謬訂正前)と雖もこれに重大且つ明白な瑕疵が存在するものと謂えないこと勿論で該決定が無効である旨の確認を求める原告の請求は失当である。」
三、成立に争のない甲第二十九乃至第三十二号証も原審認定事実を左右するに足りない。
四、控訴人等は本件審査決定はその理由を附していないから違法であると主張するが、昭和二十四年度分の所得に関する審査決定をなす当時の所得税法には該決定に理由を附記する旨の規定が存しないから本件決定に理由を附してなくてもこれを違法とすることはできない。
然らば控訴人等が昭和二十四年度分所得金額及び所得税額に関する審査決定並に誤謬訂正決定の各取消を求める訴と右後者の無効確認を求める訴は何れも不適法であるからこれを却下すべく、右審査決定の無効確認を求める訴は理由がないからこれを棄却すべきである。右と同趣旨にでた原判決はもとより相当で本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条、第九五条、第九三条、第八九条を適用して主文のように判決した。
(裁判長裁判官 岡田建治 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)