大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和40年(行ス)2号 決定 1966年2月10日

二号事件抗告人(三号事件相手方)

山口県教育委員会

二号事件相手方

五十川偉臣

三号事件抗告人

多治比丈夫 ほか三人

主文

抗告人山口県教育委員会の抗告を棄却する。

抗告人多治比丈夫、同国光日出生、同原田昭夫、同久保輝雄の各抗告を棄却する。

抗告費のうち、抗告人山口県教育委員会の抗告によつて生じた分は、同抗告人の負担とし、その余の抗告人等の抗告によつて生じた分は、同抗告人等の負担とする。

理由

抗告人山口県教育委員会は、「原決定中、相手方五十川偉臣の申立を認容した部分を取消す。右相手方の本件申立を却下する。申立費用及び抗告費用は右相手方の負担とする。」との裁判を求め、抗告人多治比丈夫、久保輝雄、国光日出生、原田昭夫は、「原決定を取消す。相手方山口県教育委員会が抗告人多治比丈夫、久保輝雄に対し昭和四〇年三月三一日なした各懲戒免職処分及び抗告人国光日出生、原田昭夫に対し同日なした各停職処分は、本案判決が確定するまでいずれもその効力を停止する。」との裁判を求めた。

本件各抗告に対する当裁判所の判断は次のとおりである。

第一、山口県教育委員会の抗告について。

本件記録によれば、相手方五十川偉臣が、本件免職処分により俸給が得られなくなつたばかりでなく、教職にある者としての社会的信用を失墜し、物質的にも精神的にも回復の困難な損害を蒙つていること、しかも、本案訴訟の裁判が確定するまでには相当の日時を要するものと予想されるから、右のような損害を避けるために本件免職処分の効力を停止する緊急の必要があることを一応認め得る。そして、当裁判所もまた、相手方五十川偉臣の場合、本案の理由がないとみえることについての蔬明資料は十分でないと判断するものであるが、その理由は原決定理由に判示せられたところと同様であるから、これを引用する。

従つて、相手方五十川偉臣に対する本件徴戒免職処分の効力の停止を認容した原決定は相当であつて、抗告人山口県教育委員会の抗告は理由がない。

第二、抗告人多治比丈夫、国光日出生、原田昭夫、久保輝雄の抗告について、

本件記録によれば、抗告人多治比丈夫、久保輝雄に対する本件免職処分の効力を停止するについて、前示五十川偉臣の場合と同様の理由で、回復困難な損害を避けるため緊急の必要があることを一応認め得る。しかし、当裁判所もまた、同抗告人等の所為が地方公務員法第二九条第一項第二号に当るものであつて、本件徴戒免職処分は一応適法であると考えられ、右処分の取消を求める同抗告人等の本案請求は理由がないとみえるものであると判断する。

そしてその理由は、原決定理由の判示と同様であるから、これを引用する。従つて、同抗告人等の本件処分の効力の停止の申請は理由がない。

次に、本件記録によれば、抗告人国光日出生、原田昭夫に対する本件停職処分は、いずれも、すでにその処分に付された期限を経過した現在では、右処分の執行の終了したことが蔬明されるから、更にその処分の効力を停止する余地なく、同抗告人等の本件停職処分の効力の停止の申請は理由がない。

そうしてみると、抗告人多治比丈夫、国光日出生、原田昭夫、久保輝雄の各申立を却下した原決定は、結局相当であるから、右抗告人等の抗告は、いずれも理由がない。

よつて、本件各抗告はいずれもこれを棄却することとし、抗告費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条の規定に従い、主文のとおり決定する。(原決定については本集5参照)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例