大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和42年(う)11号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕所論はまず、被告人の原判示第二の出刃包丁の携帯は、被告人が同判示屋台店の調理台のところえ行き、出刃包丁を掴み外に出ようとしたところ、同店経営者白川八重子が背後から右包丁の柄を握つて取り上げたものであつて、その携帯は、時間にして僅か二、三分、距離にして僅か二、三米移動しているに過ぎないことがその挙示する証拠により認められるから、右は銃砲刀剣類所持等取締法第二二条にいう携帯には該らないものと解すべきである。しかるに、これを同条の携帯に該るものとした原判決には理由にくいちがいがあり、また法令適用の誤りがあるというである。

よつて考察するに銃砲刀剣類所持等取締法第二二条が同条所定の刃物の携帯を禁止しているのは、人に危害を加えるのに役立つ刃物を業務その他正当な理由がないのに、手に持つか、身体に帯びるが如く直ちにこれを使用し得べき支配状態に置くときは、容易にこれを用い易く人に危害を加える虞があるから、これを防止しようとするにあり、従つて同条にいう携帯とは、同条所定の刃物を手に持ち、或は身体に帯びる等これを直ちに使用し得る状態で身辺に置くことをいい、その状態は時間的、または距離的に持続するのを通常とすることは勿論であるが、短時間また近距離の携帯を禁止から除外したものとは認められないから、その状態が多少持続するにおいてはこれを携帯というに妨げないと解するのを相当とする。これを本件についてみるに、原判決挙示の関係各証拠を綜合すると、弁護人所論のように、被告人は原判示第二の屋台店で飲酒中隣にいた客と口論し、共に一旦外に出たが、被告人は相手方を脅かすつもりで再び同店に引き返して調理台のところえ行き、そこにあつた同判示の出刃包丁を掴みこれを持つて外に出かけたところ、同店経営者白川八重子に背後から右包丁の柄を握つて取り上げられたもので、被告人は調理台のところから、右包丁を手にして出口の方へ数歩移動し、白川八重子から取り上げられるまでの間これを持つていたものであることが認められるから、右被告人の所為は前記法条の携帯に該当するものというべきである。従つてこれを銃砲刀剣類所持等取締法第二二条に該るものとした原判決の判断には所論のような誤りはない。この点に関する論旨は理由がない。(幸田輝治 高橋文恵 浅野芳朗)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!