大判例

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広島高等裁判所 昭和42年(う)419号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原判決挙示の各証拠によると、被告人は、本件当日同判示場所で賭博を開張するに先立ち、賭客のための両替用とし、或いは被告人自身も胴にのつて賭事をする資金として必要と考え、予め金二二万円(うち一一万円は、広島信用金庫銀山支店で一〇〇〇円札一〇〇枚、一〇〇円札一〇〇枚に両替えし)を用意して鞄に入れ、本件賭場に持ち込み、被告人自身も同判示第一の二の犯行に及んだこと、しかして被告人の右所為は、胴にのるという方法で行われたもので、胴にのるというのは、胴元と張り子の間で行われる賭事に関し、胴元の勝敗に金銭の得喪を賭けるもので、胴元が勝てば勝ち金の中からテラ銭等を除いた金額を、「のり」の本数に応じて分配にあずかり、胴元が負けた場合には、胴の負け金と同じ金額を「のり」の本数に応じ胴元と共に負担するというもので、被告人は、榎木島夫に対し、胴(胴元は同判示の中井実)に二〇本のせてくれと頼んで、右現金二二万円入りの鞄を預けて中座したこと、右榎木は、被告人のために胴にのつた(二〇本)もので、いまだ胴の勝敗による精算の段階に至らぬうちに、警察の手入れを受けたものであること、又胴にのる人は、直接賭場に賭金を出すわけでなく、胴元による勝敗が確定して精算する際、胴元が負けておれば、右の方法で計算した金額を負担することとなるが、胴元が勝つている場合は、金員を負担することなく、ただ右の方法で計算した金額の分配にあずかるに過ぎないことが認められる。

してみると、右の現金が同判示第一の二の犯罪行為を組成したものでないことは明らかである。

次いで右金員が同判示の賭博の用に供しようとしたものといえるかどうかについて検討するに、榎木島夫の検察官に対する供述調書によると、被告人は右榎木に対し「胴がいたんだら(負けたらの意味)、あそこに銭の入つた鞄があるけん」と言つて外出したというのであるが、被告人は、原審及び当審における公判廷において、榎木に、胴にのつておいてくれと頼んだこと及び右現金入りの鞄を預けたことを認めながら、右現金入り鞄を預けたのは、胴にのるためではないと一貫して供述しているところであり、又それまでに右金員中より賭金として金員が支出されているわけでもないこと並びに前認定のような胴にのるという方法で行われた本件賭博の態様等を併せ考えると、被告人が右現金中の一部を当夜行わるべき賭博に際し、胴にのるための資金にあてようとして、本件賭場に持ちこんだこと前認定のとおりではあるが、被告人の右弁解や金銭の用途の多様性等を考慮すると未だ右金員を同判示の賭博の用に供しようとしたと認め全部没収するには証拠上なお確実性や具体性に欠けるものというべきである。

従つて、右金員が同判示第一の二の賭博の所為を組成し、又はその用に供しようとしたものであるとしてこれを全部没収した原判決は、事実を誤認し、ひいては法律の適用を誤つたもので、その誤が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由がある。(幸田輝治 浅野芳朗 畠山勝美)

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