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広島高等裁判所 昭和43年(く)8号 決定 1968年7月25日

少年 M・H(昭二九・五・六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年作成名義の抗告申立書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

所論は要するに、本件は共犯者のAに犯意を誘発され、同人と共謀のうえ犯したものであるが、少年は被害者の学生らから一旦強取した金員を返還したところ、右Aが学生らから金員を強取したものであり、少年は父親が死亡したため一家の中心となつて弟妹の面倒を見ねばならず、今は前非を悔い更生を誓つているので、原決定の処分は著しく不当であるから、原決定を取消し更に相当な裁判を求める、というのである。

そこで記録により検討するに、本件非行の罪質、態様、動機、少年の性格、交友関係、従前の非行歴など諸般の事情を総合して考察すれば、少年には要保護性が認められ、少年の家庭においては、父は既に亡く母は少年に対して全くの放任状態で少年を指導監督する能力はないこと、少年が一四歳の年少であることなどを考慮すれば、少年に対しては教護院に収容して健全な社会性および生活意欲を涵養せしめるを相当と思料されるので、所論の事情を斟酌しても原決定の処分は相当であり、著しく不当ではないから、論旨は採用しえない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 竹島義郎 裁判官 高橋正男 裁判官 岡田勝一郎)

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