広島高等裁判所 昭和46年(行コ)10号 判決 1974年12月09日
下関市彦島後山町八六〇番地
控訴人
有限会社森田商店
右代表者代表取締役
森田良博
右訴訟代理人弁護士
西田信義
下関市山ノ口
被控訴人
下関税務署長
浅野栄
右指定代理人
菅野由喜子
同
後藤健公
同
戸田由己
有藤秀樹
右当事者間の更正処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和三九年一一月三〇日付で控訴人に対してなした控訴人の事業年度昭和三八年一〇月一日から同三九年九月三〇日までの法人税更正処分中、広島国税局長の裁決により取消された残額金四三三、八八五円のうち金一三三、二一三円を超える部分を取消す。被控訴人が昭和四〇年一一月三〇日付で控訴人に対してなした控訴人の事業年度昭和三九年一〇月一日から同四〇年九月三〇日までの法人税更正処分中、広島国税局長の裁決により取消された残額金九八七、二九五円のうち、金五三四、七八三円を超える部分を取消す。被控訴人が昭和四一年六月二九日付で控訴人に対してなした控訴人の昭和三九年一月から同四〇年九月までの源泉徴収にかゝる所得税の納付告知処分のうち、広島国税局長の裁決により取消された残額金一三四、九〇〇円の部分を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり訂正、附加する外原判決の事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
(一) 原判決一八枚目裏二行に「三九年」とあるのを「四〇年」と、同末行の算式を
「現金売分 72.58%×15.38%=11.16%
掛売分 27.42%×21.96%=6.02%
合計 17.18%」 と、
同二〇枚目表七行に<省略>とあるのを
<省略>と、同八行に「40年」とあるのを「39年」とそれぞれ訂正する。
(二) 控訴人の補充主張
被控訴人主張の控訴会社における昭和四〇年九月から同年一一月までの三ケ月間における総売上量(特選米、普通米)に対する現金売、掛売の比率および右現金売、掛売に対する特選米、普通米の各比率については争わない。
(三) 控訴人は、甲第一〇、第一一号証の各一ないし一〇を提出し、当審証人黒田繁夫の証言及び当審における控訴会社代表者森田良博の尋問結果(第一・二回)を援用し、乙第九、第一〇号証、第一一号証の一・二の成立は認める、と述べた。
(四) 被控訴人は、乙第九、第一〇号証、第一一号証の一・二を提出し、当審証人池永秋雄の証言を援用し、甲第一〇、第一一号証の各一ないし一〇の成立は認める、と述べた。
理由
一 当裁判所も控訴人の本訴請求を失当であると判断した。その理由は、次に記載する外原判決判示の理由と同様であるからこれを引用する。
(一) 原判決九枚目表三行の「成立に争いのない乙」とある次に「第二号証、同」と加える。
(二) 原判決一〇枚目表五行に「本件係争年度」とあるのを「昭和四〇年八月三一日」と、同表四行から五行にかけて「まず、昭和四〇年以降の」とあるのを「昭和四〇年度分については、まず昭和四〇年九月から一一月までの」とそれぞれ訂正する。
(三) 原判決一一枚目表三行から六行にかけて「これをもとにして……同年度分の」とあるのを「昭和三九年度分については、まず昭和四〇年度分の売上差益率を算出し、次に控訴会社の記帳額を基礎として昭和三九年度分の差益率を昭和四〇年度分の差益率で除して得た差益率の低下割合を算出し、これらの数値を基礎として昭和三九年度分の」と訂正する。
(四) 原判決一二枚目表二行から同表四行にかけて「前記のことき調査日数の量………これに代る反証は存しない」とあるのを次のとおり訂正する。
元来推計課税は間接事実等から基礎金額を推計もしくは認定して、類似または比準的推論によつて実額にできるだけ近似した額を認定しようとするものであるから、その基礎事実が相当にしてその推計方法自体が合理的であれば足りると解すべきであり、被控訴人が前記のような調査日数とその抽出方法をもつて特選米と普通米の各販売数量を算出し、その結果をもとに当該事業年度全体に通ずる右両種米の販売比率を推計することは、調査日とそれ以外の日との間に右両種米の販売比率に格別の増減が存するなどの特別事情が認められない本件においては、相当にして且つ合理的であるというべきである。もつとも控訴人主張の方法によつて算定される比率がより正確であることは否定し難いとしても、これにより直ちに被控訴人の算定、推計方法が不相当であると解することはできないし、また、前記甲第五号証が、控訴会社代表者本人の供述するように営業日誌から推測される特選米等の数量を忠実に記載したものであるかとうかについてその真実性を担保するに足る証拠もないので、控訴人の前記主張は採用できない。
(五) 原判決一二枚目裏一二行の「特別の事情」の次に「即ち控訴会社のみが他の同業種法人に比べて特に玄米三等米を特選米に、また玄米下等米を普通米に各格上げする比率または数量が大きいこと(控訴会社における右格上数量の比率自体も証拠上明確でない)などの事情」を挿入する。
(六) 原判決一三枚目表四行から六行にかけて「被告主張のごとく……算数上明らかであり」とあるのを「本判決別表第一ないし第三記載のとおりの計算数式等により(ただし本判決別表第一の(1)ないし(3)の各比率については控訴人は争わない)被控訴人主張の売上金額と同一或いはそれ以上の金額となることが計算上明らかであり」と訂正する。
(七) 成立に争いない乙第五号証の四、八、原審証人池永秋雄の証言及び弁論の全趣旨によると、被控訴人が売上金額の算出基礎とした昭和三九年一〇月から一二月まで及び昭和四〇年一月から九月までの特選米・普通米・徳用米の合計売上数量は、控訴会社の売上帳(雑記帳)の記載によつたものであることが認められるところ、成立に争いがない乙第六号証によれば控訴会社の米穀売上記帳方法は前日の棚卸数量に当日の仕入数量を加え、その合計量から当日の棚卸数量を差引いた数量を売上数量としていたのであるから、被控訴人がその売上総数量そのものは正確とみて特選米、普通米、徳用米の売上数量算出の基礎としたことは正当である。被控訴人が推計の基礎とした特選米、普通米、徳用米の売上総量が過大であるとする趣旨の当審証人黒田繁夫の証言及び当審における控訴人代表者森田良博の尋問結果(第一・二回)はたやすく措信することができない。また右控訴人代表者の尋問結果(第一回)のうち原判決理由三の事実認定に反する部分は措信できない。
二 してみると、原判決は相当であり本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 胡田勲 裁判官 西内英二 裁判官 高山晨)
別表第一
四〇年度分の総売上げに対する特選米の売上比率算式
(1) 四〇年九月から同年一一月までの総売上量(特選米、普通米)に対する現金売、掛売各数量の比率
現金売 七二・五八% 掛売 二七・四二%
(算式基礎) 現金売 七一、七二〇キログラム
掛売り 二七、〇九七キログラム
<省略>
<省略>
(2) 右同期間の掛売分における特選米の比率 二九・三〇%
(算式基礎) 特選米 七、九四二キログラム
普通米 一九、一五五キログラム
<省略>
(3) 右同期間の現金売分における特選米の比率 二〇・五二%
(算式基礎) 特選米 一四、七二〇キログラム
普通米 五七、〇〇〇キログラム
<省略>
(4) 四〇年度分の掛売分における特選米の比率 二一・九八%
(算式基礎) 特選米 五、五四八キログラム
普通米 一九、六八三キログラム
<省略>
(成立に争いがない乙第五号証の五、原審証人池永秋雄の証言並びに弁論の全趣旨を総合すれば、控訴会社の営業日誌によつて昭和三九年一一月、昭和四〇年一月、三月、五月、七月、九月の合計六ケ月につき、各月一日から四日まで、一四日から一六日まで、二八日から三〇日までの計一〇日間について、その特選米と普通米の各掛売売上高を算出すると、特選米は計五、五四八キログラム、普通米は計一九、六八三キログラムであることが認められる)
(5) 同年度分の現金売分における特選米の比率 一五・三九%
(算式)29.30:20.52=21.98:x <省略>
(6) 同年度分の総売上げにおける特選米の売上比率 一七・一九%
(算式)現金売分 72.58%×15.39%=11.17006%
掛売分 27.42%×21.98%=6.02691%
合計 17.19697%
別表第二
四〇年度分の総売上金額算式表
<省略>
(算式基礎)
(1) 特選米、普通米、徳用米の総量は、前記の営業日誌より抽出推計する方法によつたもので、その計算の結果は、成立に争いがない乙第五号証の四、第五号証の八と弁論の全趣旨を総合すれば、三九年一〇月から同年一二月までの分が一〇五、八二二キログラム、四〇年一月から同年九月までの分が二七三、二二一キログラムであると認められるから、特選米については本判決別表第一の(6)の比率を、徳用米については成立に争いがない乙第五号証の六によつて認められる四〇年九月から一一月までの売上比率〇、一六%を、普通米については八二、六五%(100-17.19-0.16=82.65)を乗じて数量を算出した。モチ米の数量は前記乙第五号証の四、成立に争いのない同号証の九、原審証人池永秋雄の証言と弁論の全趣旨を総合して、仕入数量一一、七五〇キログラム(内玄米九、〇〇〇キログラム)に対し前記玄米精白歩留率九一%を適用算出した。
(2) 各種米の一キログラム当り単価は、前記乙第五号証の四、成立に争いがない乙第九、第一〇号証によれば、三九年一〇月から同年一二月までの分については、特選米一〇一円五〇銭、普通米九五円五〇銭、徳用米八六円五〇銭、モチ米一二〇円五〇銭、四〇年一月から同年九月までの分については、特選米一一八円、普通米一一〇円、徳用米九三円五〇銭、モチ米一三三円五〇銭である。
(3) 麦紛の売上額は前記乙第五号証の四、成立に争いがない同号証の七と弁論の全趣旨とによつて認められる仕入額三〇三、三八四円、控訴会社の平均差益率一五%を適用算出した。
(4) ビタライスの売上額は、前記乙第五号証の四、成立に争いのない甲第八号証と弁論の全趣旨により、昭和四〇年九、一〇、一一月の実績から推計し六〇、四五〇円と認める。
(5) 四〇年度の控訴会社の記帳売上金額が四一、八六九、七九五円であることは成立に争いがない乙第四号証の二、前記乙第五号証の四によつて認められる。
別表第三
三九年度分の総売上金額算式
(1) 四〇年度分差益率 八・一四%
<省略>
売上原価=繰越高+仕入高-期末在庫=261,066+38,974,832-262,618=38,973,280
(2) 三九年、四〇年度分の各記帳額による差益率の低下割合 八〇・九二%
<省略>
39年度分売上原価=188,680+30,095,080-261,066=30,022,694
(3) 三九年度分の差益率 六・五八%
(1)×(2)=8.14%×0.8092=6.5868%
(4) 同年度分の総売上金額 三二、一三七、三三〇円
<省略>
(5) 控訴会社の記帳売上金額 三一、八〇六、三一二円
(6) 差引売上げ脱ろう金額 三三一、〇一八円
(算式基礎)
(1) 四〇年度分の総売上金額四二、四二八、六六七円は、本判決別表第二の総計欄記載の金額であり、同売上原価が三八、九七三、二八〇円であることは成立に争いがない乙第七号証の四、原審証人池永秋雄の証言によつて認められる。
(2) 三九年度分の記帳額による差益率について
同年度の記帳額総売上金額が三一、八〇六、三一二円であることは成立に争いがない乙第四号証の二、乙第七号証の二によつて、同年度の記帳額総売上原価が三〇、〇二二、六九四円であることは、前記乙第四号証の二、乙第七号証の四によつて認められる。
四〇年度分の記帳額による差益率について
同年度の記帳額総売上金額が四一、八六九、七九五円であることは前記乙第四号証の二、成立に争いがない乙第五号証の四によつて、同年度の記帳額総売上原価が三八、九七三、二八〇円であることは前記乙第四号証の二、乙第十号証の四によつて認められる。
同年度の記帳額総売上金額が四一、八六九、七九五円であることは前記乙第四号証の二、成立に争いがない乙第五号証の四によつて、同年度の記帳額総売上原価が三八、九七三、二八〇円であることは前記乙第四号証の二、乙第七号証の四によつて認められる。