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広島高等裁判所 昭和49年(う)127号 判決 1974年9月26日

控訴人 原審検察官

被告人 木村忠こと河哲升

弁護人 鶴敍

検察官 飯嶋宏

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三月に処する。

原審における未決勾留日数中二五日を右本刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は広島高等検察庁検察官飯嶋宏提出にかかる広島地方検察庁尾道支部検察官秀岡幾仙作成名義の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は弁護人鶴敍作成名義の答弁書(但し一(骨子)(2) の冒頭五行を除く。)記載のとおりであるから、いずれもここにこれを引用する。

これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

検察官の論旨第一点。所論は公訴事実第一の点について、法令の適用の誤を主張し、出入国管理令七〇条七号の罪は継続犯と解すべきであるという。

按ずるに、出入国管理令七〇条七号の罪は、同号に「当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの」と規定されている如く、所定の期間を経過した後、本邦に引続き残留する限り(不法残留者の容疑で身柄を拘束されるまで)、継続して成立する所謂継続犯と解するのが、同号の文言にも合致し、同令の目的にそうものというべきである(最高裁判所昭和四三年(あ)第二五一六号同四五年一〇月二日決定、刑集二四巻一一号一四五七頁参照)。

然らば、本件三年の時効は被告人が本件に関連して身柄を拘束された昭和四九年三月一七日から進行すべきものであり、本件起訴当時は時効が完成していないに拘らず、公訴事実第一の点を認めながら、右犯罪行為の公訴時効が昭和四五年一〇月二七日から進行し、三年を経過した昭和四八年一〇月二七日時効が完成したものとして、昭和四九年三月二九日右犯罪について起訴された被告人をその点について免訴した原判決には法令の適用の誤があり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであり、右事実と原判示事実とは刑法四五条前段の併合罪として処断すべき場合であるから、原判決はその余の論旨に対する判断をまつまでもなく、右法令の適用の誤により破棄を免れない。

よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により更に判決する。

当裁判所が、原判示「罪となるべき事実」に加えて認定する罪となるべき事実は次のとおりであり、これに対する証拠の標目は原判決挙示の証拠と同一である。

(罪となるべき事実)

被告人は、韓国に国籍を有する外国人であるが、昭和四五年一〇月二七日貨物船大東号により北九州市小倉港に入港した際、下関入国管理事務所小倉港出張所入国審査官から寄港地上陸許可を受けて上陸したが、同許可証に記載された同日午後五時までの期間を経過して昭和四九年三月一七日まで不法に本邦に残留したものである。

(法令の適用)

当裁判所が認定した前掲事実と、原判決が適法に確定した原判示事実とに法令を適用すると、被告人の判示出入国管理令違反の所為は、同令七〇条七号(一四条)に、原判示外国人登録法違反の所為は、同法一八条一項一号(三条一項)に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、各所定刑中懲役刑を選択の上、同法四七条本文、一〇条により重い前者の罪の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役三月に処し、刑法二一条を適用して原審における未決勾留日数中二五日を右本刑に算入し、原審及び当審における訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項但書によりこれを被告人に負担させないこととして主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋文恵 裁判官 雑賀飛龍 裁判官 渡辺伸平)

検察官秀岡幾仙の控訴趣意

原審は、

被告人は、韓国に国籍を有する外国人であるが

第一昭和四五年一〇月二七日、貨物船大東号により北九州市小倉港に入港した際、下関入国管理事務所小倉港出張所入国審査官から寄港地上陸許可を受けて上陸したが、同許可証に記載された同日午後五時までの期間を経過して、昭和四九年三月一七日まで不法に本邦に残留し

第二前記のとおり、前記日時、本邦に上陸入国し、その頃から三原市に居住していたものであるが、右上陸の日から六〇日以内に、三原市長に対して所定の登録申請をしないで、その期間をこえて本邦に在留し

たものである。

との公訴事実に対し、公訴事実どおりの認定をしたうえ、検察官の懲役八月の求刑に対し、第一の出入国管理令違反の罪につき、公訴時効が完成しているとして免訴、第二の外国人登録法違反の罪につき、懲役三月、三年間執行猶予の判決を言い渡したが、原判決は、出入国管理令(七〇条七号)違反の罪はいわゆる継続犯であり、したがつて公訴時効は完成していないのにかかわらず、これをいわゆる即時犯と解し、公訴時効が完成していると判示した点において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤があり、かつ、出入国管理令違反の罪が成立する以上、原判決の量刑は著しく軽きに失して不当であるから、とうてい破棄を免れないものと信ずる。

以下その理由を述べる。

第一法令の適用の誤りについて

原判決は、出入国管理令違反を免訴にした理由について

本件公訴提起のなされたのが昭和四九年三月二九日であることは本件記録上明らかなところ、右時点においては、右出入国管理令違反の罪についてはすでに三年の公訴時効が完成しているといわなければならない。すなわち、出入国管理令一四条一項により寄港地上陸の許可を受けた者が、同条三項により入国審査官の附した上陸時間の制限(期間)に違反した場合の罰則規定である同令七〇条七号は、寄港地上陸の許可を受けた者が許可書に記載された期間を経過して本邦に「残留」したことを処罰するものではなく、「期間を経過した」こと自体を処罰するものであり、同条同号の罪は右期間の経過により成立し既遂となるのであつて、この意味で即時犯であり継続犯ではなく、したがつて右罪の公訴時効もそのとき直ちに進行を開始すると解するのが相当である。このことは、出入国管理令が不法残留に伴う外国人の本邦内での居住、移動関係を規制しようとするものではなく、本邦に入国し本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理をはかることを目的としており(同令一条)、すべての人の出入国そのものの適正な管理取扱を趣旨としていることから導かれる解釈であり、同令七〇条一号(三条違反)の罪が密入国者が本邦に入れば直ちに成立し以後密入国者が本邦内に居住し本邦内を移動したとしても、それは単に密入国の罪成立後の違法な状態が継続するにとどまると解すべきことと同様であつて、この点、外国人登録法の諸規定が外国人の居住関係および身分関係を明確ならしめ、もつて在留外国人の公正な管理に資することを目的とし(同法一条)、本邦在留外国人に対する公正な管理、適正な取扱いを期する立場からその時々における客観的な本邦在留外国人の実態を正確に把握すべき必要に出たものと解されるから、同法三条の規定による外国人登録申請義務は同法同条の六〇日の期間経過後といえども登録申請のあるまで存続し、したがつて登録不申請の罪(同法一八条一項一号)も右期間経過後において成立し、継続犯と解されることと全然異るわけである。

それで、結局、被告人の出入国管理令違反の罪については前示昭和四五年一〇月二七日午後五時の経過によつて成立し公訴時効は進行を開始したと解されるので、右時効完成後の公訴提起であることが明らかである。

と判示しているが、出入国管理令七〇条七号の罪は継続犯と解すべきであり、原判決には法令の解釈適用の誤りがある。

一 出入国管理令七〇条七号は、許可書に記載された期間を経過して本邦に引き続いて残留する者を処罰の対象にしているもので、同号の罪は継続犯と解すべきである。

1 もともと即時犯と継続犯は、法益侵害の結果との関係において認められる区別で、即時犯は、一定の法益の侵害又は侵害の危険が発生することによつて犯罪事実が完成し、同時に終了するものをいい、継続犯とは、例えば監禁罪のように一定の法益侵害の状態が継続するあいだ、犯罪事実が継続するものである(注釈刑法(2) の1二四頁)。後述するように、判例によつて、外国人登録・不申請罪においては、行為者は外国人登録を申請すべき作為義務を継続して負つており、その義務が履行されない限り、期間の始めから終りまで間断なく、一瞬一瞬ごとの不履行として犯罪が存在するし、その限り違法状態の継続は当然予想し得るのである(綜合判例研究叢書刑法(13)七六頁)。そして、継続犯にあつては、法益侵害の状態が継続している限り、公訴時効も進行しないと解されている。

2 ところで、出入国管理令七〇条七号の構成要件は、「寄港地上陸の許可……を受けた者で、当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの」と規定されており、単に「期間経過」のみでなく、期間を経過して本邦に引き続いて残留する者を処罰の対象にしている。

出入国管理令一四条一項によれば、「入国審査官は、船舶等に乗つている外国人が、その船舶等が同一の出入国港にある間七二時間の範囲内で当該出入国港の近傍に上陸することを希望するときは、その船舶等の長の申請に基き、当該外国人に対し寄港地上陸を許可することができる」が、同条二項によつて、右の「許可を与える場合には、入国審査官は、当該外国人に寄港地上陸許可書を交付しなければならない」とされ、更に同条三項によつて、「許可を与える場合には、入国審査官は、法務省令で定めるところにより、当該外国人に対し、上陸時間、行動の範囲その他必要と認める制限を附し、且つ、必要があると認めるときは、指紋を押なつさせることができる」とされている。このように寄港地上陸について、その時間・場所などに種々制限を附しているのは、このような寄港地上陸がしばしば密入国の手段として使用されるためであると考えられる。そして、同令二四条六号によれば、右の寄港地「上陸の許可……を受けた者で、当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの」は、退去強制手続によつて本邦から強制退去させることができるとともに、同令七〇条七号によつて処罰されるのである。

これら寄港地上陸に関する規定からみれば、もともと外国人は、有効な旅券又は乗員手帳を所持しなければ、本邦に入つてはならないし、本邦に上陸しようとするには、入国審査官による審査を受けるなど所定の手続を経なければならない(同令三条、六条ないし一二条)。寄港地上陸は、例外として七二時間以内などの制限を附して、簡易な手続で、一時的に本邦に上陸することを認めたものであるから、寄港地上陸の許可を受けた者は、当然、当該許可書に記載された期間を超えて残留することは許されず、そのため期間内に帰船すべきはもちろん、期間経過後は常に本邦外に退去すべき義務を負つているのであるが、往々にしてこの寄港地上陸が本邦に不法に入国する手段として悪用されるおそれがあることから、出入国管理令は、右違反者に対し、罰則をもつて臨んでいるのである。

したがつて、寄港地上陸の許可を受けた者が退去義務に違背して残留を継続する場合には、まず許可期限の経過とともに同令七〇条七号の法益侵害が始まり、同号の「期間を経過して」との構成要件を充足することになるが、それで直ちに終了するのではなく、それを始点として残留を継続している間は、更に同号の「残留するもの」との構成要件を充足しつつ法益侵害が継続するものである。それ故同号は継続犯であつて、残留する限り犯罪は継続しているといわなければならない。

二 判例は、不法在留する外国人の登録不申請罪及び出入国管理令七〇条五号の罪について、これを継続犯と解している。

1 昭和二八年五月一四日最高裁判所第一小法廷判決は、外国人登録不申請について、「(一)外国人登録令施行の際本邦に在留する外国人で、同令附則第二項の規定に違反して三〇日以内に所定の登録申請をしなかつた者については、その登録義務を履行するまで不申請罪は継続して成立する。(二)外国人登録令附則第二項所定の三〇日以内に登録しなかつた罪の公訴時効は、当該外国人が本邦に在留する限りその登録義務を履行した時から進行する。」旨判示している(刑集七巻五号一〇二六頁)。

ここで判示されている外国人登録令とは、昭和二二年五月二日施行勅令二〇七号であつて、同令では、四条により、「外国人は本邦に入つたときは、六〇日以内に、外国人でないものが外国人になつたときは、一四日以内に、居住地を定め、内務大臣の定めるところにより、当該居住地の市町村の長に対し、所要の事項を登録しなければならない」とされ(附則二項によつて、勅令施行の際本邦に在留する外国人は、三〇日以内に登録申請することとされた)、処罰規定としては、単に一二条二号が「四条の登録の申請をなさなかつた者は、六月以下の懲役若しくは禁錮、千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」としていただけで、登録申請をしないで「本邦に在留する」とまでは規定していなかつた。

その後、同令は改正されて外国人登録法となつたが、登録不申請罪の構成要件は、右最高裁判所判例の趣旨にかんがみ、継続犯としての罪質を明確にして、一八条一項一号に「第三条第一項(登録申請)……の規定に違反して、これらの規定による申請をしないでこれらの項に規定する期間をこえて本邦に在留する者」を処罰する旨規定されるにいたつたのであるが、その規定内容は、本件出入国管理令七〇条七号の「……期間を経過して本邦に残留するもの」と同一である。

すなわち、旧外国人登録令の登録不申請罪に規定する「所定の期間内に、登録の申請をしなかつた者」と、改正された外国人登録法の登録不申請罪に規定する「登録の申請をしないで所定の期間をこえて、本邦に在留する者」とは法的評価は同じであり、その不法在留は、本件出入国管理令の不法残留に相当する構成要件であると考えられ、したがつて、外国人登録令の登録不申請罪を継続犯と解した右最高裁判所判例の趣旨は、出入国管理令七〇条七号の不法残留にも当然推及し得るものである。

2 更に、出入国管理令七〇条五号の不法残留は、「旅券に記載した期間を経過して本邦に残留する者」と規定され、本件、七号の不法残留と全く同一の構成要件であるところ、昭和四五年一〇月二日最高裁判所第二小法廷決定は、同条五号の不法残留について「出入国管理令四条一項六号の在留資格により、本邦に在留する外国人が在留期間中二度にわたつて同令二一条による在留期間の更新を申請し、いずれも在留期間経過後に、更新許可の通知を受け、更に第三回目の更新を申請し、在留期間経過後に不許可の通知を受けたが、引き続き在留していたため不法残留者の容疑で身柄を収容された場合には、右更新不許可の通知を受けた後身柄を収容されるまでの期間について、同令七〇条五号の罪が成立する」旨判示している(刑集二四巻一一号一四五七頁)。

右判例は、更新不許可通知を受けた後、身柄を収容されるまでの期間犯罪が成立するとしているのであるから、同条五号の不法残留を継続犯と解していることは明らかで、この趣旨は、同一要件が規定されている同令七〇条七号の不法残留についても当然類推されるべきである。

三 その他、原判決が出入国管理令七〇条七号を即時犯と解した根拠は正当でない。

1 原判決は、出入国管理令七〇条七号を即時犯とする理由として、まず、出入国管理令は、「不法残留に伴う外国人の本邦内での居住、移動関係を規制しようとするものでなく、本邦に入国し、本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理をはかることを目的としており(同令一条)」、したがつて、「同令七〇条一号(三条違反)の罪が本邦に入れば直ちに成立し、以後密入国者が本邦内に居住し本邦内を移動したとしても、それは単に密入国の罪成立後の違法な状態が継続するにとどまると解すべきことと同様である」と述べている。しかし、その解釈は明らかに誤つているといわなければならない。

(一) 出入国管理令一条は「この政令は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理について規定することを目的とする」と規定しているが、同令は、また外国人の本邦内での居住、移動関係をも規制しており、たとえば、第四章「在留及び出国」において、一九条ないし二二条は、合法的に入国した外国人の本邦における在留、在留資格及び在留期間の更新について詳細に規定し、二三条は、本邦に在留する外国人に対して常に旅券又は仮上陸許可書、寄港地上陸許可書等の携帯を命じ、二四条四号イでは旅券に記載された在留資格の変更を受けないで当該在留資格以外の在留資格に属する者の行うべき活動をもつぱら行つていると明らかに認められる者には、本邦からの退去強制をできると規定している。そしてこのような規定に従わず違反をおかす外国人に対処するため、第八章において、六一条の三は、入国警備官は、入国、上陸又は在留に関する違反事件を調査する事務を担当することとされているのであり、第九章「罰則」において、七〇条五号、七号及び八号は、在留期間の定めに従わず、期間経過後も不法残留する者に対して罰則を科することにしているのである。

(二) 次に、出入国管理令七〇条七号と同条一号を比較した場合、七号は「寄港地上陸の許可を受けた者で当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの」と規定しているのに対し、一号は単に「第三条の規定に違反して本邦に入つた者」と規定され、「第三条の規定に違反して本邦に入り残留したもの」とはされていないのであつて、形式的にも明らかに構成要件が異なる。すなわち、七号は「期間を経過して本邦に残留する」ことを処罰の対象とするのに対し、一号は「入国する」こと自体を処罰しようとするものであり、両者は実質的にも同一ではない。

ただ、出入国管理令七〇条七号を継続犯とすると、往々にして、本邦に密入国を企てた者が、単純に密入国した場合は、同条一号に該当することとなるところ、同号は即時犯であるから公訴時効は三年であるのに対し、寄港地上陸の許可を得てその期間中に逃亡して不法残留した場合は、同条七号に該当し、残留している期間は公訴時効が進行しないことになり、均衡を失するのではないかとの懸念を生ずることが考えられる。しかし、出入国管理令による評価からすれば、後者は、単純な密入国者ではなく、入国審査官に対し、同審査官の付する上陸時間、行動の範囲等の制限を遵守する旨を申し出て、同審査官をしてその旨信用させたうえ、寄港地上陸の許可を得て合法的に入国したうえで、不法に残留し密入国者となつたのであるから、単純な密入国者よりは、加重される要素が加わつているといえるのであつて、このため公訴時効の完成については不利益をこうむることもやむを得ない。

2 原判決は、更に出入国管理令七〇条七号を即時犯と解釈する理由について、「外国人登録法違反の諸規定が外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もつて在留外国人の公正な管理に資することを目的とし(同法一条)、本邦在留外国人に対する公正な管理・適正な取り扱いを期する立場から」外国人登録申請違反は継続犯と解されるが、出入国管理令七〇条七号はこれとは異なると述べている。しかし、この判断も誤つているといわねばならない。

すなわち、外国人登録不申請罪を継続犯とすることは正当であるが、前記二の1において述べたように、出入国管理令七〇条七号と外国人登録不申請罪とは、その構成要件が形式的に同一であり、構成要件が同一であれば同様に解するのが通常であるのに、単に立法目的からという理由だけで、両者はその罪質が全然異なると解釈するのは独断であるのみならず、右三の1の(一)に述べたように出入国管理令も、出入国の適正な管理をはかるためには、不法残留に伴う外国人の本邦内での居住関係を規制する必要もあるのであり、したがつて、出入国管理令七〇条七号は、前記二の1において述べたように、外国人登録不申請罪と同じく継続犯と解すべきである。

以上詳述したことから明らかなように、本件出入国管理令七〇条七号の不法残留の罪は、同条自体の解釈からも、外国人登録令の登録不申請の罪及び出入国管理令七〇条五号の不法残留の罪についての前記最高裁判所判例の趣旨からしても、明らかに継続犯である。したがつて、被告人については、逮捕された昭和四九年三月一七日までは、七〇条七号の罪の犯罪は継続していたのであつて、公訴時効が進行していない。しかるに、本件不法残留の罪は即時犯と解して、許可書に記載された期間を経過した昭和四五年一〇月二七日から公訴時効が進行するとし、公訴時効が完成しているとの理由で免訴を言い渡した原判決には、法令の適用の誤りがあつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

(その他の控訴趣意は省略する)

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