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広島高等裁判所 昭和50年(行コ)2号 判決 1977年12月01日

山口県萩市浜崎町一〇五番地

控訴人

小池理義

右訴訟代理人弁護士

西田信義

同市唐樋三一番地

被控訴人

萩税務署長

日出嶋恒夫

右指定代理人

河村幸登

山口英雄

菅近保徳

平野勉

岩井清

右当事者間の所得税の更正処分取消請求控訴事件について当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一、控訴代理人は

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人が控訴人に対し昭和四六年二月一二日付でした昭和四四年度分所得税の更正処分中、国税不服審判所長の裁決により取り消された残額一〇一六万七〇二五円のうち、金一三一万五〇〇四円を超える部分を取り消す。

(三)  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決を求めた。

二、被控訴代理人は

主文と同旨の判決を求めた。

第二当事者双方の主張

次に付加するもの以外は、すべて原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。 一、控訴代理人

控訴人の製材業については、営業担当の従業員はおらず、その営業成績、販路拡張、配達及び集金等の業務は、有限会社萩乳製品センターのセールスマン一五名余りをもつてこれをなし、右センターの従業員を通じて挙げた製材等の売上は全体の二割程度を占めていた。その販路は萩市、山口市及び阿武郡であり、得意先も数百軒あつた。これらのことから、控訴人の製材業の運営上、右センターが潰れるようなことがあつては困るので、控訴人は製材業の資金をもつて本件貸付をしたものである。

控訴人は、右センターに対し製材業の資金以外に、自ら経営する有限会社浜荘(旅館業)の資金も貸し付けており、この貸付も長年月、多数回に及んでおり、この貸付残については石浜荘の貸倒損としては被控訴人は容認した。石浜荘については貸倒れを認めながら控訴人の製材業に関してはその貸倒れを容認しない被控訴人の処置は不当というべきである。

二、被控訴代理人

控訴人の主張にそう当審証人らの証言中には、容易に措信し難い面もあるが、右証言等によつても前記センターの外務員には特別の手当は支給されておらず、その員数には変動があつた等の事情が認められるから、右外務員が控訴人の製材業を手伝つたとの外形上の事実があるからといつても、特別に控訴人の企業計画に組み入れられる程度のものではなかつたというべきである。更に、控訴人主張の形態の販売方法が控訴人の営業にとつて企業計画上意味のある程度のものであつたとしても、右センターの苦境を救う為の融資をもつて控訴人の製材業の必要出費に当たるものと解することはできない。

有限会社浜荘について貸倒損が認められたのは、法人税法の損益通算の建前から当然にされたものであり、その為に本件貸倒損金を右同様に扱うべきものとする控訴人の主張は、所得税法の誤解にでるものというべきである。

第三証拠関係

当事者双方の証拠関係については原判決の摘示を引用するほか、控訴代理人において、当審における証人白神健治及び同小池初美の各証言並びに控訴人本人尋問の結果を援用した。

理由

当裁判所は、被控訴人の本件更正処分(国税不服審判所長の裁決により一部取消がある)は相当であり、控訴人の本訴請求はすべて理由がないと判断するものであり、その理由も原判決の説示と同旨であるから原判決の理由を引用する。当審においての主張と新たに取り調べた結果を参酌しても、右の結論を左右すべきものは見出せない。

よつて、民訴法第三八四条第一項、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 熊佐義里 裁判官 武波保男 裁判官白石嘉孝は病気につき署名押印できない。裁判長裁判官 熊佐義里)

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