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広島高等裁判所 昭和53年(ラ)72号 決定 1979年3月03日

抗告人

道花フジエ

外四一一名

右代理人

恵木尚

外五名

相手方

広島市

右代表者市長

荒木武

右代理人

岡咲恕一

外一名

右指定代理人

池原資実

外五名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一抗告人らの本件抗告の趣旨、理由は別紙(三)記載のとおりである。

二右理由について、本件記録中の疎明資料により、次のとおり判断する。

1  本件道路建設計画に基く点

一般に道路は公共性が強いものであつて、市道の建設は道路法に従い路線の認定又は変更、区域の決定又は変更予定地の権原取得、工事施行及び供用開始の順序により行われるのが通常であり、一連の手続をなすものである。

ところで行政事件訴訟法は行政庁の処分、処分の執行又は手続の続行の停止を求めるためには当該行政処分取消の訴等を提起するとともに処分の執行停止を求めるべきものとし、この場合の処分には法律行為的処分に限られるものではなく、事実行為的処分も含むものであり、他方行政庁の処分その他公権力の行使に当る行為については民事訴訟法所定の仮処分によることはできない旨規定している。

抗告人らの本件道路完成後の自動車の通行から受けるとする侵害排除を根拠とする仮処分申請は、相手方の道路計画を違法として本件道路工事の中止を求めることに帰し、本件道路の区域決定及び変更処分による手続の続行ないし公権力の行使に当る行為についての仮処分申請として、許されないものと解するのが相当である。

抗告人らは工事は区域決定及び変更と不可分一体のものではないとか、工事が区域決定等に先行しているとか、行政訴訟の勝訴によつては工事差止めの効果がないと主張するが、抗告人らの問題としているところは道路工事そのものというよりは工事の結果により生ずる自動車の通行すなわち本件道路計画の一環としての工事にあり、また抗告訴訟等が認容されるときは当事者その他の関係行政庁はこれに拘束される訳であるから、これを有効なものとして手続を進行させることはできないものであり、右主張は失当である。

2  遊歩道の工事に関する点

本件区域決定及び変更処分が遊歩道部分を対象としていないこと、工事には右部分も含まれていることは認められるが、右工事は本件道路予定地に隣接するところから、交通安全対策上行う補充的なものであつて、工事後も従来の遊歩道の利用に変更をきたすものとは認められないので、保全の必要は肯定できない。

3  抗告人中田茂関係土地に関する点

昭和三六年八月の右抗告人と国間の土地売買契約の効力の瑕疵を主張するが、契約時に作成された物件移転協議書にはこの点に関する特段の記載はなく、他に右主張を認めるべき資料はない。

三以上の次第で、原決定は抗告人らの主張に答えていない部分があるが、結局本件仮処分申請は認容しがたいものであり、これを却下した原決定は相当であり、仮処分の理由の疎明に代えて保証によることも相当でないので、本件抗告は理由がないので棄却することとし、抗告費用を抗告人らの負担とし、主文のとおり決定する。

(辻川利正 白石嘉孝 梶本俊明)

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