大判例

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広島高等裁判所 昭和57年(う)57号 判決

一 被告人は、原判示日時、原判示大型貨物自動車を運転し、本件道路を時速約四五キロメートルで南西から北東に向け走行し、交差点手前(南西)約一一〇メートルの地点で、横断歩道北西側歩道上に数名の主婦と二名ないし三名の幼児を発見したが、立ち話をしているように見えたので、そのまま走行し、交差点手前約二五メートルの地点まで進行したとき、警音器を吹鳴して自車の接近を知らせたけれども、ほぼ同速度のまま走行し、交差点手前約一三メートルの地点まで進行したとき、幼稚園児崎本龍司が、急に前記歩道から横断歩道の北東約三・八メートルの本件道路上に走つて飛び出したのを発見し、急制動の措置を講じたが間に合わず、自車左前部を同人に衝突させて原判示の傷害を負わせたことを認めることができる。前記認定した本件事故現場の状況、本件事故発生の具体的情況に徴すれば、被告人は、横断歩道北西側歩道上にいる主婦又は幼児が、本件道路を横断するかも知れないこと、殊に幼児が急に飛び出すかも知れないことは十分予測し得たのであるから、被告人としては、このような歩行者があつた場合に備えて、交差点に接近するに従い、次第に減速、徐行して、横断する歩行者との衝突を回避すべく、また、減速、徐行することは容易になし得るのであるから、原判示の注意義務があることは明らかであり、被告人が右注意義務を遵守しておれば、被害者崎本を発見したときに急制動の措置を採ることによつて、本件事故の発生を回避し得たことも明らかである。

二 所論は、被害者の母親も崎本の飛び出しを予測し得なかつたし、対進車両が継続して走行していた状況に照せば、被告人が被害者の飛び出しを予測するのは不可能であると主張するのであるが、被害者の母親の思惑又は対進車両の存在如何にかかわらず、横断歩道の入口付近に歩行者それも幼児がいた場合に、横断するかも知れないことを予測すべきことは自動車運転者の基本的注意義務である。

三 本件における事故発生直前の具体的情況殊に横断歩道北西側歩道上の歩行者の年齢、佇立情況に徴し、これら歩行者が横断しようとしていないことが明らかとは認められない本件において、被告人に信頼の原則が適用されないことも原判示のとおりである。

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