大判例

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広島高等裁判所 昭和59年(う)90号 判決

弁護人の論旨は,いずれも原判決の量刑不当を主張するものである。

そこで所論にかんがみ記録を精査し,当審における事実取調べの結果をも参酌して検討するに,本件は,原判示医療法人清風会の理事あるいは理事長をしていた被告人姜仁秀並びに同会理事であった被告人水木義人,原審相被告人佐伯清(以下佐伯という)の3名が,山口県国民健康保険団体連合会及び同県社会保険診療報酬支払基金事務所に対し,原判示湯野シルバー病院の診療報酬を請求するにあたり,基準看護料名下に不法の利益を得ようと企て,共謀のうえ,基準看護(一般病棟一類)を実施する医療機関の承認を受けるための看護婦数が不足しているにもかかわらず,看護婦数を架空計上した原判示基準看護承認申請書及び基準看護変更申請書を山口県知事宛に提出して,同知事の右承認を受ける等し,原判示第1のとおり,昭和56年8月10日ごろから同57年11月10日ごろまでの間,16回にわたり,国民健康保険診療報酬明細書等に一般病棟一類の基準看護料を加算計上し,これを前記連合会に送付して診療報酬を請求し,その旨同連合会係員らを誤信させ,よって昭和56年9月25日ごろから同57年12月25日ごろまでの間,16回にわたり,同連合会係員をして,原判示各預金口座に基準看護料として合計3,687万9,700円を振込入金させ,同額の財産上不法の利益を得,原判示第2のとおり,昭和56年8月6日ごろから同57年11月6日ごろまでの間,16回にわたり,診療報酬明細書等に一般病棟一類の基準看護料を加算計上し,これを前記基金事務所に送付して診療報酬を請求し,その旨同事務所係員らを誤信させ,よって昭和56年9月18日ごろから同57年12月21日ごろまでの間,16回にわたり,同事務所係員をして,原判示各預金口座に基準看護料として合計2,299万9,680円を振込入金させ,もって同額の財産上不法の利益を得たという事案である。

被告人姜は,老人医療に関心を持つうち病院を経営したいと考えるようになり,そのため昭和54年7月ごろ被告人水木を雇傭し,同55年1月湯野シルバー診療所を開設,同年7月には増床して湯野シルバー病院を開設し,同年9月ごろ同病院の事務局長として前記佐伯を迎え,被告人水木,右佐伯らの協力により,同年12月医療法人清風会を設立したうえ,翌56年1月から同会湯野シルバー病院を発足させるに至ったが,経営に対する医師の非協力等もあり,右診療所当時から予期に反して大幅な赤字が続き,その対策に苦慮していたところ,入院患者1人当たり1日につき1,110円が加算される基準看護制度(一類)のあることを知り,その承認を受けるのに必要な看護婦の獲得に努力したけれども思うにまかせず,被告人姜,同水木,右佐伯において,遂に看護婦の名義借りで右承認をとることに決め,部下に指示して,必要な帳簿等に就労してもいない架空の看護婦名を記入させる等工作した揚句,結局右承認を得て,前記のとおり,長期間多数回にわたり,同種詐欺を反覆して合計6,000万円近い財産上不法の利益を得たのであって,入院患者に対する看護を手厚くする趣旨で設けられた基準看護制度を悪用した計画的犯行というほかなく,被告人姜は,当初は事実上の,のちには名実ともに最高責任者として,被告人水木は,名義を貸してくれる看護婦を積極的に集める等被告人姜に次ぐ責任者として,それぞれ本件を遂行したものであるから,厳しい非難を受けるのは当然である。しかも被告人姜は,昭和52年7月有印私文書偽造,同行使等の罪により懲役1年6月,4年間執行猶予に処せられ,自力による更生の機会を与えられたにもかかわらず,右猶予の期間中に本件詐欺の実行に着手しており,加えて,事件が警察当局に発覚するや,同被告人は,被告人水木,右佐伯らと協議して,自己は無関係である旨供述するよう打ち合わせるなど証拠隠滅を図っていること明らかであって,これらを併せ考えると,犯情悪質で被告人姜の責任は最も重く,被告人水木の責任はこれに次いで重いというべく,不正に受給した基準看護料はすべて返還している等所論指摘の事情を十分斟酌しても,被告人両名に対する原判決の量刑(被告人姜仁秀は,懲役2年,被告人水木義人は,懲役1年6月)はいずれもやむを得ないところで,重きに失して不当であるとは認められない。論旨は理由がない。

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