広島高等裁判所 昭和59年(ツ)22号 判決 1985年10月17日
上告人
永江美保
永江正巳
右両名訴訟代理人
石倉孝夫
被上告人
ちどりクレジット株式会社
右代表者
野々村卓
主文
一 本件上告中、原判決主文第一項1に対する破棄を求める部分を却下する。
二 上告人らのその余の上告を棄却する。
三 上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告の適否について
原審は、上告人らの本訴請求中、本件公正証書に基づく強制執行は九三万三六〇〇円、及びこれに対する昭和五六年一二月二八日から支払ずみまで日歩八銭の割合による金員をこえる部分については許されないとして、原判決主文一1において上告人らの請求を一部認容しているから、上告人らは同認容部分について上告を申し立てる利益を欠くものといわねばならない。したがつて、上告人らの本件上告のうち同部分の破棄を求める部分は、不適法として却下を免れない。
上告理由第一点について
被上告人が上告人らに対し、立替金の請求をするのは信義則にもとるものではない旨の原審の判断は、原審の適法に確定した事実関係のもとでは、正当として是認することができる。その判断の過程に、所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨選択、事実の認定判断を非難するか、又は原審の認定と異なる事実を前提とし、若しくは独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつて、採用することができない。
同第二点について
本件売買契約について生じた事由が、ただちに立替払契約になんらかの影響を及ぼしたり、その解除原因になると解すべき理由はない旨の原審の判断は、被上告人と訴外会社(売主)との間には経済的な一体性などの特殊な関係は認められない等の原審の適法に確定した事実関係のもとでは正当として是認できる。その判断の過程に、所論の違法はない。論旨は、原審の認定と異なる事実を前提とし、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法三九九条の三、四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官村上博巳 裁判官高木積夫 裁判官高升五十雄)