広島高等裁判所 昭和60年(行コ)1号 判決 1986年11月21日
広島県佐伯郡廿日市町阿品台二丁目一三番四一号
控訴人
矢野智司
広島市中区上八丁堀三番一九号
被控訴人
広島東税務署長
米田達郎
右指定代理人
工藤真義
同
宮越健次
同
河村龍三
同
土井哲生
同
大土井秀樹
右当事者間の更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一申立
控訴人は「原判決を取り消す。控訴人の昭和六五年分所得税について被控訴人が昭和五八年八月一八日付でした納付すべき税額二一〇万四〇〇〇円とする更正処分及び重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人は、注文と同旨の判決を求めた。
第二主張
当事者双方の主張は、控訴人の次の主張を付加するほか、原判決事実摘示欄記載と同一であるから、これを引用する。
一 控訴人の主張
更正をする場合、青色申告書に係るものであるか否かを問わず、すべての更正通知書にその更正の理由が付記されるべきであり、青色申告書に係る以外の更正通知書に理由の付記を要求していない現行の所得税法は憲法一四条、二九条、三一条に違反しているから、これを根拠としてなした本件各処分は違法である。
二 被控訴人の右主張に対する答弁
争う。
第三証拠
本件記録中の原審における書証目録及び当審における書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほか原判決理由と同一であるから、これを引用する。
1 原判決一〇枚目表五行目「第二号証」の次に「(後記措信しない部分を除く。)」を加え、原判決一〇枚目表九行目「乙第三号証」、同一〇行目「乙第六号証」、同一一行目「乙第一〇号証」、同裏二行目「乙第一四号証」を消除し、同三行目「第一九号証」の次に「当審における証人清水信夫の証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証(後記措信しない部分を除く。)、第六号証、第一〇号誠、第一四号証、当審における証人清水信夫の証言、当審における控訴人本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)」を加え、同五行目「乙第三号証」の次に「甲第八号証、当審における控訴人本人尋問の結果」を加える。
2 原判決一一枚目表七行目「原告」の次に「大学生某に対し、その在学期間の昭和五〇年四月から昭和五四年三月まで本件家屋を賃貸し、さらに、」を加える。
3 原判決一四枚目裏八行目「主張している。」を「主帳し、」と改め、その次に「前記甲第七号証、乙第二、三号証、当審における控訴人本人尋問の結果中には控訴人が昭和五六年三月三一日以降本件家屋を控訴人の生活の本拠とした旨の供述記載ないし供述部分があるが、右認定事実に照らし、これらはいずれもたやすく措信できない。」を加え、同一五枚目表三行目「容易に肯認しがたい。」を「右度実をもってしてもこれを推認するに足りない。」と改める。
4 原判決一七枚目表一一行目「いえる。」の次に「なお、控訴人は、青偽申告書に係る以外の更正通知書に理由の記載を要求していない所得税法は憲法一四条、二九条、三一条に違反すると主張するが、理由の記載を更正処分の手続上の要件とするかどうかは立法府の決定に委ねられているものと解すべきであるから、憲法違反の問題を生じない。よって、控訴人の右主張は採用できない。」を加える。
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村捷三 裁判官 高木積夫 裁判官 池田克俊)