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広島高等裁判所 昭和61年(行コ)4号 判決 1990年9月13日

控訴人(原告) 金平久美子

被控訴人(被告) 広島県教育委員会 佐伯町立津田小学校長

主文

一  控訴人の本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決をすべて取り消す。

2  控訴人の被控訴人佐伯町立津田小学校長道旧[馬風]に対する各訴えをいずれも第一審裁判所に差し戻す。

3  被控訴人広島県教育委員会が控訴人に対し、昭和五三年六月一九日にした「停職にする」との懲戒処分を取り消す。

4  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文同旨

第二主張

一  控訴人は、当審において、新たに、「被控訴人広島県教育委員会(以下「被控訴人県教委」という。)の代表者は教育委員長であるところ、原審では、被控訴人県教委の訴訟代理人らは右教育委員長から委任を受けることなく訴訟活動を行っていたものであり、この点を看過してなされた原判決は訴訟要件を欠いた無効な判決であり、取り消されるべきである。」との主張を追加し、これに対し、被控訴人県教委は、「右主張は争う。地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)二六条一項は、教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その権限に属する事務の一部を教育長に委任し、又は教育長をして臨時に代理させることができると規定している。そして、この規定に基づき、教育委員会の権限に属する事務の一部を教育長に委任する規則が定められているが、右規則によると、教育委員会の権限に属する事務のうち、争訟手続において当事者として行わなければならない事務を教育長に委任すると規定されている。県教委の訴訟代理人らは右規則に基づき教育長から委任を受け、訴訟活動を行ったものであり、何ら訴訟要件に欠けるところがない。」と答弁した。

二  右一以外の当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六枚目裏一行目「学校教育法」の次に「(以下、「学教法」という。)」を、同一〇行目「(以下、「地公法」という。)」の次に「二九条一項」をそれぞれ加え、同七枚目裏一行目「学校教育法」を「学教法」と改める。

2  同八枚目裏七行目「争う。」の次に行を改め、「被控訴人らは、所属職員を利用して一部父母を組織させ、控訴人の思想、信条、組合活動を嫌悪する余り、控訴人を担任から排除するよう画策し、その要求を実現するため右父母らに登校拒否、同盟休校を組織、実施させ、右同盟休校を回避するためと称して、本件研修命令、担任解除命令を出し、さらには一部父母らをして同盟休校を強行させて学校現場を混乱せしめ、本件懲戒処分を発したものであるといわざるを得ない。」を加える。

3  同九枚目裏三行目「のである。」の次に「このような本件担任解除命令は、すべて国民は平等に取り扱われなければならず、人種、信条、性別、社会的身分若しくは政治的所属関係によって差別されてはならないとする地公法一三条、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が期せられなければならず、教育は不当な支配に服することなく国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものであるという教育基本法(以下「教基法」という。)六条二項、一〇条一項にそれぞれ違反し、かつ思想および良心の自由はこれを侵してはならない、すべて国民は法の下に平等であって人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的、経済的又は社会的関係において差別されないという憲法一九条、一四条に違反し、また、憲法二三条、二六条にも違反し、学教法二八条六項において保障された「教諭は児童の教育をつかさどる」との法的地位を一方的に奪うもので違法である。」を加え、次に改行して、「そもそも、どの学年、どの組の担任になるかは、各小学校において、教員の希望に基づき職員会議により決定されるべき事項であり、校長の職務命令としての校務分掌命令によって決まるべき事項ではない。しかるに、本件担任解除命令は、権限を持たない校長の校務分掌命令として行われたものであるから違法である。」を加える。

4  同一一枚目表三行目「無縁なものである。」の次に「したがって、本件懲戒処分は、公正の原則を定めた地公法二七条一項に違反し、違法である。」を加える。

5  同一一枚目裏八行目「ある。」を「あり、地公法五六条に違反し、違法である。」と改める。

6  同一三枚目表八行目「である。」を「であり、被控訴人佐伯町立津田小学校長(以下「被控訴人校長」という。)が命じた本件第一次研修命令及び本件研修命令は教特法二〇条三項に違反しており、違法である。」を加える。

7  同一三枚目裏末行「である。」の次に「したがって、一部保護者の違法な要求に迎合して行われた本件第一次研修命令及び本件研修命令は、「教育の自由」、「教育権の独立」、「教育の自主性」を規定した憲法二三条、二六条、教基法一〇条一項に違反し、違法である。」を加える。

8  同一四枚目裏二行目「教育基本法」を「教基法」と、同七行目から八行目にかけて「反し許されないものというべきである」を「反するものであり、教特法一九、二〇条に違反し、「教育の自由」、「教育の独立」、「教育の自主性」を規定した憲法二三条、二六条、教基法一〇条に違反し、違法である。」とそれぞれ改める。

9  同一五枚目表七行目「得ない。」を「得ず、「思想信条の自由」、「平等取扱の原則」等を規定した憲法一九条、一四条一項、地公法一三条、教基法六条二項に違反し、違法である。」と改める。

10  同一八枚目表一〇行目「両立しうるものである。」の次に行を改め、「控訴人は、学級担任は、教員の希望に基づき、職員会議により決定されると主張するが、右主張は独自の見解にすぎず、失当である。学級担任の任免は、学教法二八条三項の趣旨から考えて、校務をつかさどり所属職員を監督する立場にある校長の権限である。校長は、校務掌理権に基づき、地教行法四三条二項の職務命令として学級担任解除命令をなすことができるのである。」を加える。

11  同一九枚目表八行目「学校教育法」を「学教法」と改める。

第三証拠<省略>

理由

一  訴訟代理権の欠缺の主張について

控訴人は、原審では県教委の訴訟代理人らは県教委の代表者である教育委員長から訴訟の委任を受けることなく訴訟活動を行っていたと主張する。右主張の事実が存在することは記録上明らかである。しかし、地教行法二六条一項及び教育委員会の権限に属する事務の一部を教育長に委任する規則によれば、争訟事件については教育長が訴訟代理人を選任することができることが認められているのであり、原審において県教委の訴訟代理人らは教育長から受任したうえで訴訟活動していたこともまた記録上明らかである。そうだとすると、この点についての控訴人の主張は、その余の点を判断するまでもなく失当であり、理由がない。

二  被控訴人校長に対する請求について

1  本件担任解除命令取消の訴えについて

控訴人は、被控訴人校長に対し、同人がした本件担任解除命令の取り消しを求めるので、まずこの点について判断する。

抗告訴訟の対象となる処分といいうるためには、当該処分が個人の法律上の地位又は利益に対し、直接影響を及ぼすようなものでなければならず、このような性質を有しない処分については、当該処分により個人が事実上不利益を受けたとしても、右個人は抗告訴訟によりその取消を求めることができないと解すべきである。

これを本件についてみるに、公立小学校の教諭は、特定の小学校の教諭に補職されるのであって(学教法二八条一項、地教行法三七条一項、市町村立学校職員給与負担法一条)、特定の学級の担任に補職されるものではなく、特定の学級の担任になるのは校長の校務分掌命令(学教法二八条三項)に基づくものであり、これ以上に学級担任の地位、職責、資格要件等を定めた法令はなく、その選任手続に関する法令もない(控訴人は、学教法二八条六項及び同法施行規則二二条をいうが、前者は教諭の一般的職務内容を規定したものであり、後者は小学校の設備編成を定めたものであって、教諭の法的地位を定めたものと解することはできない。)。換言すると、教諭の具体的な職務の内容は、校務をつかさどり所属職員を監督する(学教法二八条三項)校長が発する職務命令によってはじめて定まるものであって、教諭は特定の学級を担任することを法的に保障された地位にあるものではなく、またこれを請求する権利も有していない。したがって、本件の控訴人の学級担任を外すとの被控訴人校長の行為は、特定の学級の担任を解くという校長の職務命令であって、これによって、学教法、地公法等によって規定されている控訴人の教諭としての地位や給与その他その法的地位又は利益に対して何らの変更を生ぜしめるものではないというべきである。そうだとすると、本件担任解除命令は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当らないというべきである。

よって、本件担任解除命令の取消を求める訴えは、不適法として却下を免れないところ、これと同一の判断をした原判決は相当であり、この点に関する本件控訴は理由がない。

2  本件研修命令取消の訴えについて

控訴人は、被控訴人校長に対し、同人がした本件研修命令の取り消しを求めるが、当裁判所も、原審同様右訴えは、訴えの利益を欠き不適法であると考える。その理由は、原判決の理由説示(原判決二一枚目表七行目から同二一枚目裏五行目まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。

よって、この点に関する控訴人の本件控訴は理由がない。

三  被控訴人県教委に対する請求について

控訴人は、被控訴人県教委がした本件懲戒処分の取消を求めるが、当裁判所も、原審同様、本件懲戒処分は適法であり取消事由は存在しないと考える。その理由は、原判決を次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示(原判決二一枚目裏七行目から同四一枚目表六行目まで)と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決二一枚目裏六行目「処分」の次に「取消」を、同二二枚目表三行目「認める」の次に「甲第三一号証、」を、同四行目「一司」の次に「、当審における証人山今彰」を、同四行目「原告本人尋問の結果」の次に「当審における控訴人本人尋問の結果」をそれぞれ加える。

2  同二三枚目表九行目「一部の保護者が」を、「被控訴人県教委の職員で湯来町教育委員会に主事として派遣されていた中田英夫及び被控訴人県教委の監督下にある佐伯町教育委員会の社会教育課長の地位にあった正木収ら一部の保護者が中心となり、」と改める。

3  同二三枚目裏九行目「乙第一、第二号証、」を「乙第一ないし第五号証、当審における証人山今彰の証言により原本の存在とその成立を認めることができる甲第六四号証」と改め、同二四枚目表一行目「各本人尋問の結果」の次に「当審における控訴人本人尋問の結果」を加える。

4  同二四枚目表六行目「つたが」の次に「(なお、控訴人は、梅組が障害児学級である五年松組の原学級とされていたところから、松組に属する生徒二名に対する音楽、体育、図工の授業をも担任した。)」を加え、同末行目から同裏一行目「いわゆる成田闘争に参加しているのではない」を「年休をとって、いわゆる成田闘争に参加したのではないか」と改める。

5  同二五枚目表一〇行目「柴田教諭」から同裏一行目「ある。」までを、「五年松組の担任である柴田教諭が出席して学級懇談会が開催され、前記中田英夫が司会者となり議事進行が行われたが、保護者側の主な質問内容と控訴人の回答は次のとおりであった。」と改める。

6  同二六枚目表七行目「右閉会後一二名の保護者が」を「右閉会直後ころ、控訴人の回答に不満であった前記正木収が長女を登校拒否させると発言した。そして、これに続いて、約一一名の保護者が」と改める。

7  同二六枚目裏三行目「校長に対し」の次に「、再度、」を加え、同七行目「拡大すると考え」を「拡大するとの意見を述べ」と改め、同一〇行目「訪問して」の次に「正木を」を、同二七枚目表五行目「三〇日にも」の次に「河野義刀、河野一司らから」をそれぞれ加える。

8  同二七枚目裏七行目「学級教育」を「学校教育」と、同二八枚目表六、七行目「前記要望書の内容について質疑や」を「保護者との関係修復を計るべく、保護者との話し合いに応じたらどうか等の」とそれぞれ改め、同二八枚目裏六行目「電話連絡して」の次に「、保護者に対し」を加える。

9  同三〇枚目裏三行目「告げ、」から同六行目「発言した。」までを、「告げた。これに対し、岡原教諭が研修命令自体おかしいとして反対意見を述べたが、児童教務主任の谷教諭が「控訴人は研修命令に従うべきだ。児童の前で妨害的態度をとるべきでない。教室に出て児童を巻き込むような混乱は避けるべきだ。」と発言し、他の大多数の教諭も谷教諭と同意見の様子であった。」と、同三一枚目表七行目「入り」を「入って児童の間を巡回したり」とそれぞれ改める。

10  同三二枚目表三行目「答えたので、」の次に「その児童三名は」を、同一〇行目「児童もでて」の次に「大混乱となり」をそれぞれ加え、同三二枚目裏七行目「児童は二名のみで一名は欠席し、」を「五年梅、松組の児童は三二名中二名のみで、欠席した一名を除く」と改める。

11  同三三枚目表五行目「交付した。」の次に行を改め、「本件懲戒に至る経緯は以上のとおりであって、前記(五)からも窺えるように、被控訴人校長は控訴人と担任児童らの保護者との間のわだかまりを解くため、控訴人に対し学級懇談会に出席し、十分話し合うことを指導するなど両者間の円満な解決をはかるべく努力していることが認められる。また、被控訴人校長には、控訴人の思想、信条、組合活動を嫌悪する余り控訴人を学級担任からはずそうともくろむ保護者の態度に対し、これを諫める等の積極的姿勢は見られないものの、さりとて、控訴人の主張するような被控訴人らが所属職員を利用して一部保護者を組織させ控訴人の思想、信条、組合活動の嫌悪の情の故に、控訴人を担任から排除するよう画策し、その要求を実現するため登校拒否、同盟休校を組織、実施させ、右同盟休校を強行させて学校現場を混乱せしめ、本件懲戒処分を発したと認めるに足る証拠は存在しない。」を加える。

12  同三三枚目表六行目「右認定事実によると、」から同一一行目「認めることができる。」までを、「右認定事実によれば、本件紛争の発端及び拡大の責任の一端は、控訴人の担任する児童の保護者であり、被控訴人県教委の職員である中田英夫、被控訴人県教委の監督下にある佐伯町教育委員会の課長であった正木収らが、控訴人の組合活動等を嫌悪する余り、児童及び他の保護者らを巻き込んで控訴人の思想、信条等を追及し、満足する回答が得られないとみるや、自己の要求を押しとおすべく、児童を登校させないという行動に出たことにあることは否定できないところである。また、被控訴人校長にも、控訴人は五年梅、松組を担任してからまだ日が浅かったのであり、前記のとおり保護者の行動に問題があったのであるから、控訴人に保護者との話し合いを勧めるだけでなく、より積極的に保護者の態度をたしなめる等の行動があってしかるべきであったと思われる。しかし、被控訴人らが、被控訴人県教委の職員である保護者らを煽動して学校現場を混乱させ、控訴人に対する本件懲戒処分、本件研修命令を出させる状況を作出したとの証拠は見当たらない。かえって、被控訴人校長としても、万全ではないにしても、事態を収拾すべく、控訴人と保護者の間に立って、控訴人に種々の助言を与えていたのである。しかるに、控訴人は、自己の信念、正当性を押し通そうとする余り右助言に耳を貸そうとせず、このことが保護者の不信感を強め、紛争を拡大させる一因となったことも否定できない事実である。紛争が拡大し、控訴人と保護者との間での事態収拾が困難となり、前記のとおり本件第一次研修命令、本件担任解除命令が出たのであり、しかも、右各命令には後記のとおり明白な瑕疵あるいはこれに従えば違法な行為を行う結果になるような瑕疵は認められないのであるから、このような場合、児童の教育に携わる教育公務員としては、児童と離れざるを得ないという無念な心情はわからないではないが、ここは混乱を避けるため自ら一歩引き下がり、右各命令に従うべき義務があったというべきである。しかるに、控訴人は、自己の考えに固執する余り、前記のとおり右各命令に従わないのみならず、再三にわたって授業を混乱させ、児童に不安を与えるとともに教師に対する不信の念を強めさせたことは明らかであり、ひいては保護者及び地域住民の信託に背いた結果を招いたことは動かしがたい事実であり、これらは地公法二九条一項各号に該当するものと認めることができる。」と改める。

13  同三三枚目裏一〇行目「定めておる」を「定めている」に改め、同三四枚目表六、七行目「どうかは」の次に「処分者である」を加える。同三四枚目表七行目「委ねられている」を、「委ねられており、ただ、右の告知、聴聞の機会を与えることにより、処分の基礎となる事実の認定に影響を及ぼす可能性がある場合は、右の機会を与えないでした処分が手続上違法となることもあり得る」と改める。

14  同三五枚目裏一〇行目「なお、」の次に「前掲甲第六四号証、」を、同三六枚目表九行目「発したことは、」の次に「教特法二〇条三項に違反し、」を、同裏一〇行目「別紙(四)」の次に「(別紙(一)に対する認否)」をそれぞれ加える。

15  同三七枚目表五行目「取扱である」を「取扱であり、憲法一四条一項、一九条、二三条、二六条、教基法一〇条一項、六条二項、地公法一三条に違反し、違法である」に改める。

16  同三七枚目裏一行目「図った」の次に「ものである」を加え、同五行目「ところで、」を削除し、そのあとに、「以上(一)ないし(三)の検討から確かに本件第一次研修命令は発令者、主たる目的の点で違法な点があると言わなければならない。しかし、本件第一次研修命令に右のような違法な点があるからといって、右命令を受けた者が、これに服従する義務がないかどうかはまた別個に考察する必要がある問題である。けだし、」を加える。

17  同三八枚目表六行目「ある。」を「あるからである。」と、同七行目「本件第一次研修命令は、」を「これを本件についてみるに、本件第一次研修命令は、」とそれぞれ改める。

18  同三八枚目裏四行目「発したものである」を「発したものであり、しかも右命令は町教育長同席のもとで発せられた」と、同五行目から六行目「できるし、」を「できないわけではないし、」とそれぞれ改め、同一〇行目「明白」の次に「であり、」を、同末行目「ができない」の次に「(こういうこともあってか、前記のとおり控訴人は、一旦は、昭和五三年六月一二日、本件第一次研修命令を受けることを了承した。)」をそれぞれ加える。

19  同三九枚目表五行目「しかし、」から同裏一行目「相当である。」までを次のとおり改める。

「 控訴人は、まず、学級担任の任免は校長の職務命令としての校務分掌命令によって決まるべき事項ではないと主張するが、学級担任の任免は学教法二八条三項の趣旨から考えて、校務をつかさどり所属職員を監督する立場にある校長の権限であり、この点に関する控訴人の主張は採用することができない。そして、校長の右権限は、前記二、1で検討のとおり担任解除命令が学教法、地公法等によって規定されている教諭としての地位や給与その他その法的地位又は利益に対して何らの変動を及ぼすものではないことからすれば、無制限でないことは当然としても、相当程度、校長の裁量に委ねられているものと解するのが相当である。」

20  同四〇枚目表五行目「なされた旨」の次に「(地公法二七条一項違反)」を、同六行目「ある旨」の次に「(同法五六条違反)」をそれぞれ加える。

四  以上によれば、控訴人の本訴請求のうち本件担任解除命令取消の訴え及び本件研修命令取消の訴えは不適法であるから却下し、本件懲戒処分取消の訴えは理由がないから棄却すべきところ、これと同一の結論である原判決は相当である。よって、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 篠清 宇佐見隆男 難波孝一)

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