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広島高等裁判所 昭和63年(行コ)9号 判決 1991年4月10日

広島市中区上幟町九番三二号

亡金子修郎訴訟承継人

控訴人

金子郁子

右同所

亡金子修郎訴訟承継人

控訴人

金子富久子

右両名訴訟代理人弁護士

相良勝美

広島市中区上八丁堀三番一九号

被控訴人

広島東税務署長 地家操

右指定代理人

見越正秋

岡田泰徳

井上繁正

米田満

景山高資

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、訴訟承継前の一審原告金子修郎(以下「亡修郎」という。)に対してなした以下の各処分を取り消す。

(一) 昭和四六年三月一二日付け同四〇年分所得税更正処分のうち総所得金額一二九万七六二三円を越える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(二) 同四六年五月二九日付け同四一年分所得税更正処分のうち総所得金額一二九万七四八一円を越える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(三) 同日付け同四二年分所得税更正処分のうち総所得金額一六七万八九〇〇円を越える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(四) 同日付け同四三年分所得税更正処分のうち総所得金額二三五万七五二三円を越える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(五) 同日付け同四四年分所得税更正処分(被控訴人の同四六年一〇月一四日付け異議決定による一部取消後のもの)のうち総所得金額二六五万円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分

(六) 昭和四八年八月一三日付け同四五年分所得税更正処分(国税不服審判所長の同五〇年一月三一日付け裁決による一部取消後のもの)のうち総所得(損失)金額二六万九九二七円及び分離長期譲渡所得金額一三六〇万円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分

(七) 同日付け同四六年分所得税の分離長期譲渡所得金額を八九五万〇三一〇円とする更正処分

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決七枚目裏二行目は、同八枚目表四行目、同一〇行目、同裏二行目、同二一枚目表三行目の各「同人」をそれぞれ「亡修郎」に改める。同九枚目裏二行目の「亡修郎の昭和四〇年一月」を同三行目の「一日現在」の前に挿入する。同二〇枚目裏二行目冒頭から同八行目末尾までの記載を削除する。同九行目の「ケ」を「ク」に、同二一枚目表九行目の「コ」を「ケ」にそれぞれ改める。

二  同二二枚目表九行目の「五九万七九七五円となる。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「コ 仁保土地(22)

広島市仁保町字大町七八番地の五の土地七七坪四勺及び右土地上の建物(以下「仁保土地建物」という。)には、昭和三九年七月三〇日付けで債務者を中尾常五郎とし、根抵当権者を亡修郎とする手形割引、手形貸付、証書貸付及び商取引保証を原因とする根抵当権が設定されており、さらに、右土地建物には、右同日付けで停止条件付代物弁済契約(条件は右根抵当権にかかる債務不履行)を原因とする亡修郎への停止条件付所有権移転仮登記が、同四〇年五月二九日付けで同人への所有権移転登記がそれぞれ経由された後、同四三年四月一日付けで右土地を訴外高井寿ほか二名への売買を原因とする所有権移転登記がなされている(なお、建物は昭和四二年一二月一一日に取り壊されている。)

右登記の経過からもわかるとおり、仁保土地は、金融業を営んでいた亡修郎が、昭和四〇年五月に代物弁済契約に基づき取得し、同四三年四月に第三者に売却したものであるから、右土地の売却に係る所得は、譲渡所得には該当せず、事業所得に該当する。そして、右土地の取得原価は金二九〇万円であるので、昭和四〇年に二九〇万円の資産として計上し、同四三年はは零として算定した。」

三  同二九枚目裏四行目冒頭から同六行目末尾までの記載を削除する。

同七行目の「ソ」を「セ」に、同三〇枚目表一〇行目の「タ」を「ソ」に、同三二枚目表末行の「コ」を「ケ」にそれぞれ改める。

同三三枚目裏五行目の「必要経費」の前に「「」を加える。

四  同三六枚目裏九行目の「4」から同一〇行目の「41」までの記載を「4、8、10、11、13、14、17、19、21、23、26、29、32、37、41」に、同三七枚目表一行目の「ケ」を「ク」に、同行目の「タ」を「ソ」に、同行目の「コ」を「ケ」にそれぞれ改める。

同二行目の「bは争う。」の次に「コのうち仁保土地の取得、売却の経緯については認めるが、仁保土地の資産評価について、昭和四〇年期首を二九〇万円と算定することは争う。右資産評価については、昭和四〇年期首を二〇〇万円、同年期末を二九〇万円として算定すべきである。」を加える。

五  同三八枚目表四行目から五行目にかけての「適法なものとはいえない。」の次に「仮に亡修郎の所得額を推計するに当たって資産負債増減法を採用するとしても、亡修郎が営んでいた質商という営業の性格から、質商の商品ともいうべき現金と質草(流質品)との増減を考慮すべきところ、被控訴人は、この増減関係を全く無視しており、このような所得決定は正確性、合理性を欠き、これに基づく本件更正処分は適法とはいえない。」を加える。

六  同三八目表七行目冒頭から一〇行目末尾までの記載を次のとおり改める。

「亡修郎の事業所得額推計に当たり資産負債増減法を採用した場合の同人の昭和四〇年から同四四年度までの事業所得に係る資産、負債等の各科目の金額は、別表10の「控訴人ら主張の資産負債調」記載のとおりとなる。これによれば、亡修郎の昭和四〇年ないし同四四年度までの事業所得額は、

昭和四〇年度 マイナス一一三万二八二六円

同 四一年度 七六五万五五一一円

同 四二年度 五二二万〇八四七円

同 四三年度 三〇九万二六一二円

同 四四年度 二八六万三一七四円

となる。

そして、亡修郎の昭和四〇年から同四四年度までの事業所得に係る資産、負債等の各科目のうち、被控訴人の認定額と異なる科目についての控訴人らの主張は、次のとおりである。」

七  同三八枚目表末行の「預金(1)」の次に行を改め、次の記載を加える。

「被控訴人は、亡修郎の預金残高を推計するにあたり、随意に期首期末計算の根拠を作為し、数字を拾っている。したがって、被控訴人の認定した亡修郎の預金残高の期首期末の数値は曖昧かつ不正確である。このことは、原判決別表3「預金残高明細表三」の広島信用金庫銀山支店の亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)について昭和四一年八月二二日の繰越金二万九四九九円が繰越金であることを無視し、同日に預金があったものとして計算していること等から明らかである。被控訴人の認定した預金残高のうち、期首期末の計算の明確なのは、せいぜい昭和四一年の期末と同四二年の期末程度である。よって、亡修郎の預金残高を算定するにあたっては、昭和四二年分だけを預金として計上し、その余の預金については数字が不正確なので、零とすべきである。仮に、控訴人らの右主張が理由がないとしても、少なくとも金子郁子、金子政(正)子、金子タカ名義の預金はそれぞれ名義人の預金であり、亡修郎のものではない。したがって、右三名の名義の各預金は、亡修郎の預金と認定すべきではない。その理由は、次の(1)ないし(3)記載のとおりである。」

八  同四〇枚目表三行目冒頭から同九行目末尾までの記載を次のとおり改める。

「亡修郎は、昭和四〇年六月、訴外みどり農園に対する貸付金の担保として停止条件付代物弁済契約を締結していた西村土地を第三者に処分して右貸付金を回収し、その結果、右貸金債権は消滅した。そうすると、亡修郎の訴外みどり農園に対する貸付金五〇〇万円は、資産として計上すべきではなく、零とすべきである。」

九  同四〇枚目裏三行目の「右貸付金は回収されている。」の次に「仮に右貸付金が回収されていないとするならば、物品税法違反として売却を認めた宝石等の棚卸についてその減少を考慮すべきであるところ、被控訴人は、その減少を考慮することなく貸金のみを資産負債増減法の基礎としており、これは誤りというほかない。」を加える。

一〇  同四一枚目表七行目の「消滅しているものである。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「(八) 阿慈谷分(別表10控訴人ら主張の資産負債調、科目番号11-2)

亡修郎は、昭和四〇年期末に、訴外阿慈谷孝に対し、金二〇〇万円を貸し付けていたが、右貸付金は同四三年中に前記友貞との決裁により消滅した。」

一一  同四一枚目表八行目冒頭から同裏二行目末尾までの記載を削除する。

同四二枚目表六行目の「極めて不合理というべきである。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「(二) 仁保土地(22)

亡修郎は、昭和四〇年に、同人の実母の居宅用として、訴外中尾輿四郎から、仁保土地を取得し、これを、同四三年に売却したが、その取得価額は金二〇〇万円であった。したがって、仁保土地の売却は亡修郎の事業所得とは関係ないため資産負債増減法による事業所得の推計に当たっては右売却益は控除されるべきである。仮に計上するとしても、昭和四〇年の期首を二〇〇万円、同年の期末を二九〇万円として算定すべきである。」

一二  同四二枚目表七行目の「(一一)」を「(一二)」に、同九行目の「(一二)」を「(一三)」にそれぞれ改める。

一三  同四二枚目裏二行目の「仮に同人が」から同六行目の「二重評価となる。」までを「仮に亡修郎が右土地を取得したものであるとしても、その時期は昭和四三年一一月であり、その価額は七四〇万円であった。したがって、右土地を資産として計上する場合、昭和四三年から七四〇万円として計上すべきである。」に改める。

一四  同四二枚目裏七行目の「(一三)」を「(一四)」に改める。

同四二枚目裏九行目から一〇行目にかけての「加算すべきでない。」の次に行を改め「また、亡修郎は、昭和四二年中に、中島土地建物の賃料収入として四九〇〇円を得ているが、少なくとも右金額は同年度の支払利息から控除すべきである。そうでなければ右四九〇〇円は二重課税となる。」を加える。

第三証拠

原審及び当審記録中の各書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人らの被控訴人に対する本訴請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決四六枚目裏五行目の「採用しない。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「また、控訴人らは、仮に亡修郎の所得額を推計するに当たって資産負債増減法を採用するとしても、亡修郎が営んでいた質商という営業の性格から、質商の商品ともいうべき現金と質草(流質品)との増減を考慮すべきところ、被控訴人は、この増減関係を全く無視しており、このような所得額の算定は正確性、合理性を欠き、これに基づく本件更正処分は適法とはいえないと主張する。しかし、前記認定及び後記(三)(2)認定のとおり、亡修郎の各年末現在の現金の実額を確認する資料はなく、また、亡修郎の法定帳簿、裏帳簿には取引の一部が記載されているのみで、その記載には不正確、虚偽の記載が多々あり、これについて被控訴人側の職員が亡修郎及び控訴人金子郁子に説明を求めたが、両人は非協力的態度に終始していたのであるから、このような状況下で被控訴人側が亡修郎の事業上の現金と質草との増減関係を正確に把握することはおよそ困難というほかない。また、現金と質草との増減関係を考慮しなくても、後記のとおり亡修郎の事業上の資産と負債の増減関係は一応合理的に推計できるのであるから、この点に関する控訴人らの主張は結局理由がないというほかない。」

2  同四六枚目裏一〇行目の「4」から「37」までの記載を「4、8、10、11、13、14、17、19、21、23、26、29、32、37」に改める。

同四七枚目表五行目の「乙第一号証の」の次に「一九五の一、同号証の二一三の一、」を加える。

同四八枚目表八行目の「同号証の一九五」から同九行目末尾までを「同号証の一九五の二ないし四(右証言により真正に成立したものと認められる。)、前掲乙第一号証の一九五の一」に改める。

同裏八行目から九行目にかけての「、二一三の一」を削除し、同九行目の「前掲乙第一号証の」の次に「二一三の一、」を加える。

同四九枚目裏七行目の「相当である。」の次に行を改め、次の記録を加える。

「なお、控訴人らは、被控訴人の亡修郎預金残高の推計について、随意に期首期末計算の根拠を作為し、数字を拾っており、その推計は曖昧かつ不正確である旨主張し、その根拠として、原判決別表3「預金残高明細表三」の広島信用金庫銀山支店の亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)について昭和四一年八月二二日の金二万九四九九円が繰越金であることを無視し、同日に預金があったものとして計算していることを挙げる。そして、被控訴人の認定した預金残高のうち、期首期末の計算の明確なのは、せいぜい昭和四一年の期末と同四二年の期末程度であり、亡修郎の預金残高を算定するにあたっては、昭和四二年分だけを預金として計上し、その余の預金については数字が不正確なので、零とすべきであると主張する。

控訴人らの右主張は、前記亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)についてその数値に不正確な部分があれば、それが他に波及し、昭和四〇年、四一年、四三年、四四年の各預金残高までもが不正確となるから、これらの年度の預金残高はいずれも零とすべきであるとの主張に理解できるが、かかる主張は相当ではない。けだし、仮に前記亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)について不正確な部分が存在するならば、その部分のみを除外して計算すれば足りるからである。これを本件についてみるに、前掲乙第一号証の一八七及び弁論の全趣旨によれは、確かに前記亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)の預金残高は昭和四一年八月二二日現在で二万九四九九円であり、しかも右金員は新規の預金ではなく、従前からの繰越金であることが認められる。しかし、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、亡修郎及び控訴人金子郁子は被控訴人の税務調査に非協力的であったため、亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)については、ようやく乙第一号証の一八七、一八八の資料を入手することができたにとどまり、それ以上の資料は入手することができなかったこと、このため被控訴人は前記亡修郎の普通預金の昭和四一年八月二二日以前の入出金及び残高の把握を断念し、判明している限度で、前記のとおり算定し、前記亡修郎名義の預金(番号七-六六五)については昭和四〇年分の期首及び期末の資産額には加えなかったことが認められる。仮に、被控訴人の前記亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)の預金が昭和四〇年当時から存在する等の事実があり、被控訴人の預金残高の算定が誤りであるというのであれば、控訴人らにおいて資料を提出する等して右事実を立証すべきであるところ(かかる立証は亡修郎及び控訴人金子郁子には容易である)、かかる立証を試みた形跡の窺えない本件においては、前記認定のとおり判明している資料(乙第1号証の一八七)に基づいて、亡修郎名義の普通預金(番号七-六六五)残高は、昭和四一年八月二二日当時、金二万九四九九円であったとする被控訴人の推計は合理的であり、控訴人らが主張するような違法な点はないと解する。また、控訴人らは、被控訴人の亡修郎預金残高の推計は随意に期首期末計算の根拠を作為し、数字を拾っており、曖昧かつ不正確である旨主張するが、先に認定したとおり、被控訴人らは前掲乙号各証により亡修郎の預金残高を合理的に推計しており、控訴人らの主張するような事実はこれを認めるに足りない。」

同四九枚目裏八行目の「原告らは、」の前に「また、」を加える。

3  同五二枚目表末行の「第二八号証の一、二、」の次に「第二九号証、」を加え、同五三枚目裏一行目の「一般貸付金額」を「一般貸付金残高」に改め、同五六枚目表一行目の「第八号証の二ないし五、」の次に「第七二号証、原本の存在及びその成立に争いのない甲第一五号証の三ないし五、」を、同三行目の「証言」の次に「並びに弁論の全趣旨」を、同四行目の「商号変更した。」の次に「代表者代表取締役坂谷勇」をそれぞれ加える。

同五六枚目表七行目の「同広島書店」を「同人が代表取締役を務める訴外株式会社広島書店」に改める。

同五六枚目裏二行目の「西村土地」から同五七枚目表一行目の「足りる証拠はない。」までを「西村土地を自己の取得とした。そして、右土地の名義は長年の友人である友貞唯一の使用人である渡部徳一及びその娘婿である阿慈谷孝名義を借用した。この点控訴人らは、西村土地は一旦亡修郎が取得し、これを前記友貞唯一に譲渡し、その後亡修郎が取得した旨主張し、当審における証人友貞唯道及び同控訴人金子郁子本人はこれに副う供述をするが、亡修郎と訴外友貞唯一間の売買を証する書類等は一切提出されておらず、また、控訴人金子郁子本人は右取引で売買代金二〇〇万円が未払いのままであったと供述するが、かかる未払の事実が亡修郎の帳簿等に記載されておらず、また、右二〇〇万円を支払うよう催促した形跡も認められない本件においては、前記証人友貞唯道及び控訴人金子郁子本人の供述はたやすく措信することができず、他に前記認定を覆すに足りる証拠は存在しない。そして、昭和四〇年当時の西村土地の価額は後記(12)認定のとおり一〇一二万八〇〇〇円を下らなかったことが認められ、他に右判断を左右するに足りる証拠は存在しない。」に改める。

同五七枚目表四行目の「第三者に処分して」を「自己の取得として」に改める。

4  同五十八枚目表四行目の「証拠はない。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「また、控訴人らは、被控訴人において前記関川に対する貸付金が回収されていないというのであれば、物品税法違反として売却を認めた宝石等の棚卸しについてその減少を考慮すべきであると主張する。しかし、後記「(9) 棚卸商品」の項での認定事実及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人が算定した昭和四四年一二月末の棚卸商品の金額は、物品税法違反事件において押収した金銭出納簿(乙第五四号証)に基づき、被控訴人の所得税調査担当者が亡修郎の説明を求め、右金銭出納簿のうち昭和四四年中に古美術品仕入れに充てられたものと認められる支出金額から同年中のその売上に係る商品の原価を控除して同年一二月三一日現在の古美術品の棚卸商品の金額を算定したのであり、右貸付金とは関係なく算定したものであるから、控訴人らの前記主張は理由がない。」

5  同五八枚目表八行目の「乙第四二号証」の次に「、原審における承認田村精三の証言」を加える。

同五九枚目表末行冒頭から同六〇枚目裏三行目末尾までの記載を削除する。

同六〇枚目裏の「(9)」を「(8)」に、同六一枚目裏三行目の「(10)」を「(9)」に、同六二枚目表一〇行目の「証人金子郁子は、同旨の証言」を「原審における証人金子郁子及び当審における控訴人金子郁子本人は同旨の証言、供述」にそれぞれ改める。

6  同六三枚目表一行目の「あるとはいえない。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「(10) 仁保土地

成立に争いのない甲第九号証、乙第一九号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二〇号証、原審における証人金子郁子の証言及び当審における控訴人金子郁子本人尋問の結果(但し、金子郁子の証言及び供述中、後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

亡修郎は金融業を営んでいたが、昭和三八年七月ころ、訴外中尾與四郎に対し、金二〇〇万円を貸し付け、右債権を担保するため、訴外中尾與四郎の父親常五郎所有の仁保土地建物に亡修郎を権利者とする根抵当権設定登記及び停止条件付代物弁済契約(条件は右根抵当権にかかる債務不履行)を原因とする停止条件付所有権移転仮登記を受けた。訴外中尾與四郎は、期限が到来するも、前記債務を支払わなかった。このため、亡修郎は、前記代物弁済契約の条件成就により、仁保土地建物の所有権を取得し、訴外中尾與四郎に対し右土地建物の明渡しを求めたが、同人はこれに応じなかった。結局、昭和四〇年五月、亡修郎は、訴外中尾與四郎に対し、前記土地建物の明渡料として、金九〇万円を支払い、右土地建物の引渡しを受けると同時に、右土地建物の所有権移転登記を受けた。しかし、右建物には、訴外中尾與四郎から右建物の一部分を借り受けたと称する者が右建物の占有を続けるなどしたため、亡修郎は、昭和四三年四月、右土地を金四八〇万円余りで、訴外高井寿ほか二名に売却し、結局、亡修郎及びその実母が右土地建物に居住することは一度としてなかった。

以上によれば、仁保土地は、亡修郎の実母が居住するため購入したものと認めることは困難というほかなく、被控訴人主張のとおり、亡修郎が営んでいた金融業の業務上取得した財産であり、右売却益に対しては事業所得を徴収するのが相当である。そして、亡修郎は、仁保土地を昭和四三年四月には四八〇万円余で他に売却しているのであるから、同四〇年当時右土地の価額は二九〇万円を下らない額であったと推認することができる。そうだとすると、仁保土地の資産額について、別表2「資産負債調」の科目番号22記載のとおり認定した被控訴人の算定は相当であるというべきであり、これに反する当審及び原審における控訴人金子郁子の供述部分は前掲各証拠に照らし措信することができず、他に右判断を左右するに足りる証拠は存在しない。」

7  同六三枚目裏九行目の「第八号証、」の次に「第一五号証の三ないし五、」を、同行目から同一〇行目にかけての「乙第八号証の一ないし五、七、」の次に「第七二号証、」を、同末行の「右証言」の次に「並びに弁論の全趣旨」をそれぞれ加える。

同六四枚目表一行目の「亡修郎は、」から同裏六行目末尾までの記載を次のとおり改める。

「亡修郎は、右代物弁済契約の趣旨に従って西村土地を自己の取得とした。そして、右土地の名義は長年の友人である友貞唯一の使用人である渡部徳一及び友貞唯一の娘婿である阿慈谷孝名義を借用した。即ち、亡修郎は、昭和四〇年六月一〇日、渡部徳一名義で西村土地の所有権移転登記を受け、右渡部が病気で死期が近いのを知るや、今度は、同年九月二九日付けで右土地の登記名義を阿慈谷孝名義に移転していることが認められる(以上のように認定した根拠は、先に「貸付金みどり農園分」の項で述べたとおりである。)

以上によれば、亡修郎は昭和四〇年六月一〇日に、前示停止条件付代物弁済の趣旨に従って、西村土地を自己の所有としたことが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。」

8  同六六枚目裏二行目、同五行目の各「九月」をそれぞれ「六月」に改める。

同八行目の「前掲甲第二号証」から同一〇行目の「(三七二七坪)」までを「当審における控訴人金子郁子本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一三号証及び同人の供述によれば、西村土地の実測面積は、合計約一万一一四一平方メートル(約三三七六坪)」に改める。

同六七枚目表一行目の「一一一八万一〇〇〇円」を「一〇一二万八〇〇〇円(3000円×3376=1012万8000円)」に改める。

9  同六八行目表七行目冒頭から一〇行目末尾までの記載を削除する。

同末行の「(15)」を「(14)」に改める。

同六九枚目表四行目から五行目にかけての「加算の対象となるものというべきである。」の次に行を改め、次の記載を加える。

「控訴人らは、亡修郎は、昭和四二年中に、中島土地建物の賃料収入として四九〇〇円を得ているが、少なくとも右金額は同年度の支払利息から控除すべきである旨主張する。しかし、後記2(一)認定事実に原審における証人金子郁子の証言及び弁論の全趣旨を併せ考えると、昭和四五年に訴外山田芳典に対し中島土地建物の一部を賃貸するまで、右土地建物を第三者に賃貸したと認めるに足りる証拠は存在しない。そうだとすると、昭和四二年の中島土地建物の賃料を前提とする控訴人らの前記主張はその余の点を判断するまでもなく理由がない。」

10  同六九枚目表六行目の「(16)」を「(15)」に、同六九枚目裏末行の「一一一八万一〇〇〇円」を「一〇一二万八〇〇〇円」に、同七〇枚目表八行目から九行目にかけての「九三一万五一八五円」を「八二六万二一八五円」に、同裏一行目の「一一一八万一〇〇〇円」を「一〇一二万八〇〇〇円」に、同二行目の「六八一万九〇〇〇円」を「七八七万二〇〇〇円」に、同行目の「一一八一万九〇〇〇円」を、「一二八七万二〇〇〇円」にそれぞれ改める。同七一枚目表三行目の「第一三、」を削除する。

11  原判決別表3「預金残高明細表二」の広島信用金庫銀山支店の宮本正名義の定期積金(番号四〇-九三八)の預入年月日の「四〇、一二、三〇」を「四〇、一二、三一」に改め、同表の広島相互銀行本店営業部の亡修郎名義の普通預金(番号二八三八)の書証番号欄に「乙第一号証の一七一」を加える。

同別表3「預金残高明細表三」の広島相互銀行本店営業部の亡修郎名義の普通預金(番号二八三八)の書証番号欄に「乙第一号証の一七〇」を加える。

同別表3「預金残高明細表四」の広島信用金庫銀山支店の宮本正名義の定期積金(番号四二-九一五)の書証番号欄に「乙第一号証の一五九」を、同表の同支店の亡修郎名義の普通預金(番号五〇八五)の書証番号欄に「乙第一号証の一九〇」をそれぞれ加える。

同別表3「預金残高明細表五」の広島信用金庫銀山支店の亡修郎名義の普通預金(番号五〇八五)の書証番号欄に「乙第一号証の一九〇」を、同表の広島銀行銀山支店の加藤巌名義の定期預金(番号四六-三〇九四)、同河野一三名義の定期預金(番号四六-二七六九)、同吉森博明名義の定期預金(番号四六-一五三、四六-一五六、四六-二七四)の各書証番号欄に各「乙第一号証の一九五の一」をそれぞれ加える。

同別表3「預金残高明細表六」の広島信用金庫銀山支店の三浦正敏名義の定期預金(番号四三-一九七〇)の書証番号欄に「乙第二一三号証の一」を、同表の同支店の亡修郎名義の普通預金(番号五〇八五)の書証番号欄に「乙第一号証の一八九」をそれぞれ加える。

同表の同信用金庫薬研堀支店の金子郁子名義の定期預金(番号一八-一八七)の預入年月日の「四四、六、一九」を「四四、一二、一九」に改める。

同別表9「原告ら主張の資産負債調」を削除する。

二  結論

以上のとおり、被控訴人の亡修郎に対する本件各更正処分及び本件各賦課決定処分には違法事由がないから、控訴人らの本訴請求は失当として棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田忠治 裁判官 佐藤武彦 裁判官 難波孝一)

別表10

控訴人ら主張の資産負債調

<省略>

<省略>

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