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広島高等裁判所 昭和30(ナ)3 高裁判例

主 文

原告両名の各請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し各その一を原告両名の負担とする。

事 実

各原告訴訟代理人は、いずれも『昭和二九年一二月二〇日施行の柳井市議会議員

一般選挙における当選の効力につき、昭和三〇年七月二五日被告かした「昭和二十

九年十二月二十日執行の柳井市議会議員一般選挙における第二選挙区《柳井地区》

の選挙に関し訴願人が提起した当選無効の異議申立に対し昭和三十年一月十一日柳

井市選挙管理委員会のなした決定はこれを取消す。当選人Aの当選は無効と下

る。」との訴願裁決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。』旨の判決を求め、

その請求の原因として、

第一、 各原告訴訟代理人は、

原告両名はいずれも昭和二九年一二月二〇日施行の柳井市議会議員一般選挙第二

選挙区(柳井地区)の候補者なるところ、開票の結果その選挙会は

最下位当選者 A 得票五一三票

次 点 B 得票五一三票

次 点 C 得票五一一票

と決定した。原告Cは昭和二九年一二月二八日柳井市選挙管理委員会に対し右当選

の効力に関し異議を申立たが、同市選挙管理委員会は昭和三〇年一月一一日右選挙

会の決定とB及びCの各得票数において異なるところあるも、

最下位当選者 A 得票五一三票

次 点 B 得票五一二票

次 点 C 得票五一二票

と認めるから、右の選挙会の決定したAが最下位当選者であることには影響がな

いとして異議申立を棄却する旨決定した。しかし、原告Cは更にこれを不服として

昭和三〇年一月一四日被告に対し訴願したところ、被告は同年七月二五日、Cの有

効得票は右の市選挙管理委員会の認める得票のほかなお一票があるから、これを加

算すると五一三票となり、同市選挙管理委員会が最下位当選者と認めるAと各その

得票が同数となるから、右異議申立棄却決定を失当として本件裁決をした。

しかし、

第二、 原告Aの訴訟代理人は、

一、 (一)被告が本件市議会議員選挙の無効投票とする

(い) 「<記載内容は末尾1-(1)添付>」と記載した投票(検証調書別添

写真―以下単に写真と称する―7」

(ろ) 「<記載内容は末尾1-(2)添付>」と記載した投票(写真8)

(は) 「<記載内容は末尾1-(3)添付>」と記載した投票

は、いずれも原告Aに対する有効投票と認むべきである。殊に、本件市議会議員

選挙と同時に行われた柳井市教育委員会委員定例選挙の候補者中にDなる者がある

が、本件市議会議員選挙の候補者の中Dの名の者は存しないから、右(は)は原告

Aに対する有効な投票となすべきである。

(二) 本件市議会議員選挙と右市教育委員会委員選挙は同時に行なわれたもの

であるから、後者の選挙の投票用紙に「<記載内容は末尾1-(4)添付>」と記

載された三票(甲第二号証の一、三、五)及び「<記載内容は末尾1-(5)添付

>」と記載された二票(甲

第二号証の二、四)の各投票も原告Aに対する有効投票と認むべきである。

二、 しかして、被告が原告Cの有効投票と認める

(い) 「<記載内容は末尾1-(6)添付>」と記載された投票(写真9)

(ろ) 投票用紙の表右側に「<記載内容は末尾1-(7)添付>」内側候補者

氏名欄に「<記載内容は末尾1-(8)添付>」と記載した投票(写真17の1、

2)

(は) 「<記載内容は末尾1-(9)添付>」と記載した投票(写真18)

(に) 「<記載内容は末尾1-(10)添付>」と記載した投票(写真19)

(ほ) 「<記載内容は末尾1-(11)添付>」と記載した投票(写真20)

は候補者の何人を記載したか確認し難いものか、又は候補者の氏名の外他事を記

載したものであるからいずれも本件市議会議員選挙の無効投票と認むべきである。

従つて、原告Aの得票数は五二一票、原告Cの得票数は五〇八票となるから、原

告Aを本件市議会議員選挙の最下位当選者となすべきである旨主張した。

第三 、原告Cの訴訟代理人は、

一、 (一)被告が本件市議会議員選挙の無効投票とする

(い) 「<記載内容は末尾1-(12)添付>」と記載した投票(写真3)

(ろ) 「<記載内容は末尾1-(13)添付>」と記載した投票(写真4)

(は) 「<記載内容は末尾1-(14)添付>」と記載した投票(写真5)

(に) 「<記載内容は末尾1-(15)添付>」と記載した投票

はいずれも原告Cに対する有効投票と認むべきである。すなわち、右(い)ない

し(は)の各投票は、本件市議会議員選挙の候補者中その氏及び名に岡又は本のつ

く者は原告C一人で他にこれに類似する者もないから、Cの誤記として有効と認む

べく、又右(に)の投票については、原告Aの訴訟代理人が第二の一の(一)

(は)につき述べるところと同旨を以て原告Cに対する有効投票と認むべきであ

る。

(二) 本件市議会議員選挙と同時に行われた右市教育委員会委員選挙の投票用

紙に「<記載内容は末尾1-(16)添付>」と記載された二票(甲第三号証の

一、二)、「<記載内容は末尾1-(17)添付>」と記載された二票(甲第三号

証の三、五)及び「<記載内容は末尾1-(18)添付>」と記載された一票(甲

第三号証の四)の各投票は、原告Aの訴訟代理人が第二の一の(二)につき陳述す

るところと同旨の理由を以てこれを原告Cに対する各有効投票と認むべきである。

二、 しかして、被告が原告Aの有効投票と認める

(い) 「<記載内容は末尾1-(19)添付>」と記載した投票(写真12)

(ろ) 「<記載内容は末尾1-(20)添付>」と記載した投票(写真13)

(は) 「<記載内容は末尾1-(21)添付>」と記載した投票(写真14)

(に) 「<記載内容は末尾1-(22)添付>」と記載した投票(写真15)

(ほ) 「A」と記載した投票(写真16)

につき、(い)(は)は候補者の氏名の外他事を記載したもの、(ろ)(に)は

候補者の何人を記載したかを確認し難いもの、(ほ)については、公職選挙法は候

補者の氏名を日本文字を以て記載することを当然の前提としておるものと解するか

ら、ローマ字を以て氏名を記載した投票は結局被選挙権のない候補者の氏名を記載

したものというべきで、以上はいずれも本件市議会議員選挙の無効投票となすべき

である。

従つて、原告Cの得票数は五二二票、原告Aの得票数は五〇八票となり、原告C

を本件市議会議員選挙の最下位当選者となすべき旨主張した。

よつて、原告両名の訴訟代理人はいずれも本件裁決の取消を求めるため、各本訴

請求に及ぶと陳述した。

立証として、原告Aの訴訟代理人は、甲第二号証の一ないし五を提出し、証人

E、同F、同G、同Hの尋問を求め、検証の結果を援用し、乙第一号証の一ないし

三の成立を認め、原告Cの訟代理人は、甲第一号証、同第三号証の一ないし五を提

出し、証人I、同Jの尋問を求め、検証の結果を援用し、乙第一号証の一ないし三

の成立を認めた。

被告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、答弁として、原告等主張の第一事

実のとおり原告両名が本件市議会議員選挙第二区(柳井地区)の候補者であつて、

その当選の効力に関しその選挙会の決定、柳井市選挙管理委員会の異議申立に対す

る決定及び被告の本件訴願裁決があつたこと、被告が本件市議会議員選挙の無効投

票と認めるもののうちに原告A主張の第二の一の(一)(い)ないし(は)及び原

告C主張の第三の一の(一)(い)ないし(に)の各投票が存在すること、被告が

原告Cの有効投票と認めるもののうちに原告A主張の第二の二の(い)ないし

(ほ)及び被告が原告Aの有効投票と認めるもののうち原告C主張の第三の二の

(い)ないし(ほ)の各投票が存在すること、本件市議会議員選挙と同時に柳井市

教育委員会委員定例選挙が行なはれたこと、右同時選挙の投票のうちに教育委員会

委員選挙の投票用紙を用いた原告A主張の第二の一の(二)及び原告C主張の第三

の一の(二)の各投票が存在することは認めるも、原告等主張の各投票の効力に関

する原告等の主張を争う。殊に、第二の一の(一)(は)及び第三の一の(一)

(に)については、同時選挙においては公職選挙法第一二三条の規定により一人一

票、開票立会人に関する規定を除きその他はすべて全く一つの選挙として取扱われ

るものであるから、原告等主張の「<記載内容は末尾1-(23)添付>」「<記

載内容は末尾1-(24)添付>」と記載された投票は、本件市議会議員選拳の候

補者A又は同Cの各氏と右市教育委員会委員選挙の候補者Dの名とを混記した候補

者の何人を記載したか確認し難い無効のものというできであり、第二の一の(二)

及び第三の一の(二)の投票はいずれも本件市議会議員選挙の投票用紙でない不正

規の投票用紙を用いた無効の投票であり、又第二の二の(い)の投票は、その運筆

が極めて拙劣でよおやく文字を解する程度の選拳人が記載したものとしか考えられ

ず、Cと書かうとしたが、字形が敏の字に類似する「<記載内容は末尾1-(2

5)添付>」まで書きそのあとが思い出せず「<記載内容は末尾1-(26)添付

>」を「<記載内容は末尾1-(27)添付>」と読み誤り、「<記載内容は末尾

1-(28)添付>」と仮名を書いたものと判断するのが相当であつて、右Cの氏

と本件市議会議員選拳の候補者Kの名とを混記した投票と見るのは失当である旨陳

述した。

立証として、被告訴訟代理人は、乙第一号証の一ないし三を提出し、甲第一号

証、同第二、第三号証の各一ないし五の成立を認め、証人E、同I、同Jの各証言

及び検証の結果を利益に援用した。

理 由

原告等主張第一事実のとおり原告両名が本件市議会議員選挙第二区(柳井地区)

の候補考であつて、その当選の効力に関しその選挙会の決定、柳井市選挙管理委員

会の異議申立に対する決定及び被告の本件訴願裁決があつたこと、被告が本件市議

会議員選挙の無効投票と認めるもののうち原告A主張の第二の一の(一)(い)な

いし(は)及び原告C主張の第三の一の(一)(い)ないし(に)の各投票が存在

すること、被告が原告Cの有効投票と認めるもののうちに原告A主張の第二の二の

(い)ないし(ほ)及び被告が原告Aの有効投票と認めるもののうちに原告C主張

の第三の二の(い)ないし(ほ)の各投票が存在すること、本件市議会議員選挙と

同時に柳井市教育委員会委員定例選挙が行われたこと、右同時選挙の投票のうちに

右教育委員会委員選挙の投票用紙を用いた原告A主張の第二の一の(二)及び原告

C主張の第三の一の(二)の各投票が存在することは、当事者間に争いがない。成

立に争いのない甲第一号証及び乙第一号証の一ないし三に弁論の全趣旨を綜合する

と、本件市議会議員選挙の候補者は

L M N

O P Q

R S K

A B C

T U V

W X Y

右教育委員会委員選挙の候補者は

D Z A1

B1 C1

で、本件市議会議員最下位当選確定者の得票数が六〇四票であることが認め得ら

れる。

よつて、原告等主張の各投票の効力につき判断する。

第二の一の(一)(い)の投票について

この投票の第二行目以下の記載はその文意が明確ではないが、公職選挙法の許容

しない投票記載者の他意ある記載であることはその記載自体から十分推認し得られ

るから、該投票はこれを候補者の氏名の外他事を記載した無効のものとなすべきで

ある。

第二の一の(一)(ろ)の投票について

この投票は、その記載が本件市議会議員選挙の候補者Aの氏と同Uの名を混記し

た二人以上の候補者の氏名を記載したものか、又は候補者の何人を記載したか確認

し難いものと認むべきであるから、これを無効とすべきである。

第二の一の(一)(は)及び第三の一の(一)(に)の各投票について

二つの公職選挙が同時に行われた場合特段の事由のない限り、その一つの選挙の

投票用紙に他の選挙の候補者の氏、名又は氏名を明確に記載した投票があるとき

は、たとい前者の選挙の候補者にこれと類似の氏、名又<要旨>は氏名の者があつて

も、これを前者の選挙の候補者に対する有効投票とは認められないが、現時の一般

選挙人</要旨>の知識の程度では、その一の選挙の投票用紙にその選挙の候補者の氏

と他の選挙の候補者の名とを記載した投票は、前者の選挙の投票用紙が用いられて

いる事実に基き投票記載者の心理を推測尊重し、前者の選挙の候補者の氏に該当す

る候補者に対する有効投票と認めるを相当とする。従つて、本件市議会議員選挙と

同時に行われた右市教育委員会委員選挙の候補者にDなる者があつても、特段の事

由の認められない本件においては第二の一の(一)(は)の投票は原告Aの、第三

の一の(一)(に)の投票は原告Cの各有効投票と認むべきである。なお、被告は

同時選挙においては公職選挙法第一二三条の規定により一人一票、開票立会人に関

する規定を除きすべて全く一つの選挙として取扱われるとして、右各投票はAある

いはCの各氏とDの名を混記した候補者の何人を記載したか確認し難い無効のもの

とすべき旨主張する。しかし、本件当時の公職選挙法第一一九条以下のいわゆる同

時選挙は二つ以上の選挙かその施行期日を同じくする場合各投票及び開票の手続が

原則として合一して行われるものをいうのであつて、合併選挙(同法第一一五条)

と異り各選挙そのものは全然別個のものと解すべく、且つ所論の公職選挙法第一二

三条の規定が同時選挙の場合の投票、開票、選挙会についての選挙の管理ないし手

続に関する適用規定についての定めであることはその律文自体明白である。右主張

は独自の見解であつて採用できない。

第二の一の(二) 及び第三の一の(二)の各投票について

右各投票は、いずれもその記載自体第二の一の(二)が本件市議会議員候補者

A、第三の一の(二)が同候補者Cの氏又は氏名を記載したものであることは看取

し得られるが、前項前段説示の理由により特段の事由の認められない本件において

は以上の各投票が本件市議会議員選挙と同時に行われた右市教育委員会委員選挙の

投票用紙が用いられている事実に照らし本件市議会議員選挙の投票として無効のも

のと認めるを相当とする。

第二の二(い) の投票について

この投票の記載は、その文字の稚拙な点や記載の字劃、態様などからみて、投票

記載者が本件市議会議員選挙候本者Cの氏名を漢字を以て記載しようとし、「<記

載内容は末尾1-(29)添付>」に続き次の字を「<記載内容は末尾1-(3

0)添付>」まで書いたが、その字体がわからないので、これを抹消する趣旨で

「<記載内容は末尾1-(31)添付>」とし、且つ右C候補の名を「<記載内容

は末尾1-(28)添付>」と誤解してその旨仮名書きしたか、又は軽卒にも「<

記載内容は末尾1-(28)添付>」と誤記したものと認めるを相当とする。勿

論、本件市議会議員選挙侯補者の中に右と名の読み方を同じくするKなろ者がある

が、該投票の文字の拙劣さや記載の字劃、態様などから投票記載者の知識程度を推

測すると、その脳裡に候補者Cの名の漢字の字劃が極めておぼろげにしかなく、こ

れを投票用紙に書きかけてはみたものの遂に字体を思いだし得ないので漢字で書く

ことを断念し、そのかわり名の部分を仮名書きしたものであることが推測されるか

ら、原告A主張のように右投票を以てCの氏とKの名とを混記したものとみること

は、該投票記載者の意思に副うものとはいい難い。従つて、右投票はこれを原告C

に対する有効投票と認むべきである。

第二の二(ろ) ないし(に)の投票について

右各投票はいずれもその各記載自体原告Cに対す有効投票と認むべく、殊に、右投

票中(ろ)は投票用紙の表裏に各「<記載内容は末尾1-(32)添付>」と二重

に記載されてはあるが、右二重記載は他意ある記載とは認め難く、又(に)の「<

記載内容は末尾1-(33)添付>」の名の部分は氏の部分と切り離すと判読に困

離ではあるが、その記載全体からみると、候補者Cの名の部分を正確に記載し得ず

当て字を以て記載したものと認めるのを相当とする。

第三の一の(一) (い)ないし(は)の投票について

本件市議会議員選挙候補者中その氏及び名に「岡」又は「本」のついている者は

C以外にないが、右投票の「<記載内容は末尾1-(34)添付>」「<記載内容

は末尾1-(35)添付>」「<記載内容は末尾1-(36)添付>」の記載を以

て直ちに同候補者の氏の誤記とは認め得られず、又その氏と類似性ある同候補者に

対する有効投票とも認め難いから、右はこれを本件市議会議員選挙の無効投票とす

るを相当とする。

第三の二(い) ないし(は)の投票について

右各投票はいずれもその各記載自体原告Aに対する有効投票と認めるを相当とす

る。殊に、(い)の「<記載内容は末尾1-(37)添付>」の二重記載はこれを

投票記載者の他意ある候補者の氏名の外他事を記載したものとは認め難く、(は)

の「<記載内容は末尾1-(38)添付>」の部分は単なる書損又は誤記の抹消と

認むべく、又(ほ)は、ローマ字を以て候補者の氏、名又は氏名を記載した投票を

無効とする法令の定めなく、且つ現今わが国民の間で自他の氏名をローマ字を以て

記載する者の少くない顕著な事実に照らすと、ローマ宇を以て候補者の氏、名又は

氏名を記載した投票は、日本文字を以て候補者の氏、名又は氏名を記載した投票と

同様にこれを有効投票と認めるを相当とする。

以上のとおりであるとすれば、原告両名の得票は本件裁決が認める票数に各一票

(第二の一の(一)(ほ)及び第三の一の(一)(に))を加算したそれぞれ五一

四票となるが、原告両名の本件市議会議員選挙当落の関係においては、本件裁決と

結論を同じくし、原告両名はその選挙会において選挙長がくじによつて定めるその

最下位当選者となるべき者というべぎであるから、本件裁決は結局これを適法とな

すべく、従つて、その取消を求める原告等本訴各請求は理由なきに帰するので、こ

れを棄却すべきものとする。よつて、民事訴訟法第八九条第九三条第一項本文を適

用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柴原八一 裁判官 池田章 裁判官 牛尾守三)

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