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広島高等裁判所岡山支部 平成元年(行コ)3号 判決 1992年3月31日

岡山県浅口郡里庄町大字浜中一一六〇番地

控訴人

安田工業株式会社

右代表者代表取締役

安田之彦

右訴訟代理人弁護士

立石定夫

杉本邦子

藤木賞之

岡山県倉敷市玉島阿賀崎二丁目一番五〇号

被控訴人

笹岡税務署長事務承継者

玉島税務署長

平井進

右指定代理人

稲葉一人

岡田克彦

園部修治

工藤真義

武田大資

井上繁正

米田満

景山高資

右当事者間の法人税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人らは、「1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人に対し昭和五八年一一月三〇日付けでした昭和五五年四月一日から同五六年三月三一日までの事業年度の法人税にかかる更正処分中、所得金額四億一二二七万二九六四円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決四枚目表二行目の冒頭に「5」を加える。)。

1  控訴人の主張

本件更正処分の推計課税には合理性がない。

即ち、被控訴人が右推計の素因とした業種目、事業規模の把握、これに基づく類似法人の調査、選定等と控訴会社の実体との乗離、信次郎の控訴会社に対する献身度及び功績並びに控訴会社が信次郎の個人企業の法人化したものであること等を十分斟酌していないことなどから、右推計は極めて不当であって合理性がない。

2  被控訴人の主張

控訴人の右1の主張は争う。

本件更正処分の推計課税は、法人税法三六条、同法施行令七二条に則った合法的なものであり、類似法人の調査、選定、信次郎の最終報酬月額の認定等も相当であって、その合理性に欠けるところはない。

なお、控訴会社の本店移転に伴い、被控訴人玉島税務署長が笹岡税務署長の事務を継承した。

三  証拠は、原審及び当審における各書証目録及び各証人等目録の記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の請求は理由がないから、失当としてこれを棄却すべきものと判断する。

その理由は、次のとおり、訂正、付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一九枚目裏九行目「一頼基準額」を「一般基準額」と、二五枚目表四、五行目「得こところ」を「得たところ」と、同三三枚目裏五行目「(4)、(b)」を「(4)イ」と各改める。

2  控訴人は、被控訴人の本件類似法人の調査、選定等が不合理であり、また、信次郎の控訴会社に対する貢献度と控訴会社が信次郎の個人企業を法人化したものであること等を被控訴人が十分に斟酌していないと主張するが、被控訴人のした本件類似法人の調査、選定等が合理的であると認められることは原判決説示のとおりであり、また、控訴会社が信次郎の個人企業を法人化したものであることは弁論の全趣旨からも明らかであるけれども、右法人化の時より、信次郎が控訴会社の取締役会長を退任するまでの間に四一・九年という長い期間が経過しているのであるから、信次郎の右法人化当初における貢献は、その後における控訴会社発展に関する諸要因の貢献と対比するとき、その貢献度が相対的に低下しているものと推認されることや、本件類似法人の役員退職給与の支給状況や、大森嶺之助の役員退職給与金額が一五〇〇万円であったという控訴会社自体の社内事情等の原判決説示の事情を総合すると、信次郎の控訴会社に対する貢献を原判決認定の範囲を超えて評価するのは相当でないものと判断される。

したがって、控訴人の右主張を採用することはできない。

3  当審証拠をもってしても、右認定を左右するに足りない。なお、控訴会社の本店移転に伴い、被控訴人玉島税務署長が笹岡税務署長の事務を継承したことは、記録上明らかである。

三  そうすると原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高山健三 裁判官 相良甲子彦 裁判官 渡邊雅文)

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