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広島高等裁判所岡山支部 平成14年(行コ)14号 判決 2003年4月10日

控訴人

同訴訟代理人弁護士

水谷賢

被控訴人

岡山西税務署長 山本一成

同指定代理人

大西達夫

阿井賢二

鈴木雅彦

木元伸次

正兼敏美

渡さゆり

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、控訴人の平成4年1月5日相続開始にかかる相続税の更正の請求に対して平成6年3月4日付けでした更正処分のうち、課税価格につき7977万円、納付すべき税額につき2214万9300円をそれぞれ超える部分を取消す。

3  訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2事案の概要

当事者の当審における補充的主張を次のとおり付加するほか、原判決の「第2事案の概要」のうち控訴人関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。

1  控訴人の補充的主張

(1)  本件甲土地の時価について

本件甲土地については平成4年度に初めて路線価が評価されているところ、評価の根拠、経緯を考慮しない丁鑑定、A意見に対し、これらの点、とりわけ基準地又は公示地の相当性を慎重に判断した戊鑑定は信頼に値する。

したがって、戊鑑定を排斥した原判決は相当でない。

(2)  本件甲土地について借地権割合を控除しないことについて

控訴人は、控訴人の母に対し、本件甲土地の固定資産税など相当額を支払っており、同土地について賃貸借契約が成立しているというべきである。

したがって、同土地の評価について借地権割合を控除しなかった原判決は相当でない。

2  控訴人の上記主張に対する被控訴人の反論

(1)  本件甲土地の価額評価に当たっての基準地の相当性の選択において、戊鑑定が丁鑑定、A意見よりも優れているとする根拠はない。

(2)  本件甲土地について控訴人の主張するような賃貸借契約が成立していたことは争う。

相続開始時点での本件甲土地の所有者は被相続人である丙であるから、控訴人と控訴人の母との間で同土地の賃貸借契約が成立していたとしても、借地権価格の控除が認められるような借地権に当たらないことが明らかである。

第3当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は原判決の「第3 争点に対する判断」のうち控訴人関係部分記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決14頁22行目から23行目にかけての「影響を与えるものと認めることはできない」を「影響を与える程度はわずかにすぎないと認められる」と改める。

2  控訴人は、戊鑑定を排斥した原判決は相当でないと主張するが、戊鑑定の価格評価が相当といえないことは引用した原判決の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであり、控訴人の主張は採用できない。

控訴人は、本件甲土地について賃貸借契約が成立していることを前提に、同土地の評価にあたって借地権割合を控除しないことが不当であると主張する。しかし、本件相続開始時において、本件両土地及び本件両土地に挟まれた岡山市新保所在の土地(本件土地)の利用関係及び地代関係は原判決20頁の表に記載のとおりであり、上記事実に照らすと、上記敷地利用権についてその使用収益に応じた対価が支払われていたと認められないことは、引用した原判決の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりである。甲8号証(控訴人作成の陳述書)には、控訴人が建物<2>ないし<5>(原判決20頁参照)の敷地部分を賃借し、同土地の固定資産税以上を地代として支払っているとの記載があるが、それ以上の具体的な記載はなく、固定資産税程度の支払をしていたとしても、これをもって同土地の使用収益の対価とみることはできないから、その使用関係は使用貸借というべきである。したがって、本件更正処分に際して本件甲土地について借地権相当額を控除しなかったことは適法である。

3  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前川鉄郎 裁判官 岩坪朗彦 裁判官辻川昭は、転補につき、署名押印することができない。裁判長裁判官 前川鉄郎)

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