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広島高等裁判所岡山支部 平成16年(行コ)8号 判決 2004年11月18日

控訴人 株式会社A

同代表者代表取締役 甲

同訴訟代理人弁護士 大土弘

被控訴人 玉島税務署長 佐々木育男

同指定代理人 村上泰彦

同 森脇秀仁

同 安部公一

同 近藤英幸

同 船田慎二

同 田村泰崇

同 伊東孝雄

同 向原良二

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、控訴人に対し、平成9年7月11日付けでした次の各処分は、いずれもこれを取り消す。

(1)  控訴人の平成3年5月1日から平成4年4月30日までの事業年度(以下「平成4年4月期」といい、他の事業年度もこれに準じる。また、平成4年4月期ないし平成8年4月期を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税についての更正処分(ただし、平成13年5月25日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち、欠損金額221万6569円、納付すべき税額0円を超える部分

(2)  平成5年4月期の法人税についての更正処分のうち、欠損金額1万1974円、納付すべき税額0円を超える部分

(3)  平成6年4月期の法人税についての更正処分のうち、欠損金額242万8216円、納付すべき税額0円を超える部分

(4)  平成7年4月期の法人税についての更正処分のうち、欠損金額52万4041円、納付すべき税額0円を超える部分

(5)  平成8年4月期の法人税についての更正処分(以下、本件各事業年度の法人税更正処分を併せて「本件法人税更正処分」という。)のうち、所得金額140万4237円、納付すべき税額39万3100円を超える部分

(6)  控訴人の平成7年5月1日から平成8年4月30日までの課税期間(以下「平成8年4月課税期間」という。)の消費税の決定処分(以下「本件消費税決定処分」という。)のうち、納付税額5万4100円を超える部分

(7)  平成6年1月から同年12月までの源泉所得税の納税告知処分(ただし、平成10年2月23日付け異議決定により一部取り消された後のもの。以下「本件源泉所得税納税告知処分」という。)

第2  事案の概要

1  当審における控訴人の主張として2のとおり付加するするほかは、原判決の「第2事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決添付別表1イの13行目の「審査裁決」を「審査請求」に、14行目の「平成13年3月24日」を「平成10年3月24日」に、各改め、原判決添付別紙主張対比表を以下のとおり改める。

(1)  4の4行目及び5ないし6行目の「本件d建物」を「本件d土地」に、5行目の「本件d土地」を「本件d建物」に、各改める。

(2)  6の2行目の「平成6年4月期」の次に「及び平成7年4月期の2事業年度」を加える。

2  当審における控訴人の主張

(1)  家賃地代収入(D分)について

原判決は、本件D建物設備使用料月額10万円を賃料収入として認定している。しかし、契約書(乙115の(1))の11条によれば、設備使用料は「維持管理費」として位置付けられており、5条の賃料とは明確に区別されているのであるから、維持管理費としての設備使用料を賃料収入として認定するのは事実誤認である。

(2)  土地等の無償貸付けに係る収益について

原判決は、本件d土地建物の本件各事業年度における適正賃料は、年額599万8000円を下らないと認められると判示している。しかし、Eが使用している部分は、本件d建物のみであり、本件d建物の敷地以外の土地は使用していないし、Eは本件d建物を倉庫として利用しているのみであるし、平成6年度の本件d建物の固定資産税及び都市計画税の合計額は18万6968円であり、新築軽減課税標準額は1099万8147円である(甲6)ことから考えれば、年間賃料が200万円を超えることはない。

(3)  家賃地代計上漏れについて

原判決は、控訴人は平成6年4月期において家賃地代40万6850円の収入(本件駐車場収入)があったのに、これを収益として計上していないと認められると判示している。しかし、本件駐車場収入はEの収入であって、控訴人の収入ではない。そして、Eは、平成7年7月以降は、同社の収入として計上している(甲7)。

第3  当裁判所の判断

1  当裁判所も、控訴人の本件各請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、以下のとおり訂正し、当審における控訴人の主張につき2のとおり付加するほかは、原判決の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決7頁8行目の「同人に立替払」を「同人が立替払」に改める。

(2)  同10頁について

ア 17行目の「未払外注費」の次に「(G)」を加える。

イ 18行目の「平成5年」を削る。

ウ 20行目の「平成3年2月期」の前に「提出した各確定申告書における」を加える。

(3)  同18頁2行目の「当該賃料収入」の次に「のうち平成6年4月期の40万6850円」を加える。

2  当審における控訴人の主張について

(1)  家賃地代収入(D分)について

控訴人は、原判決が本件D建物設備使用料月額10万円を賃料収入として認定した点につき、建物賃貸借契約書(乙115の(1))の11条によれば、設備使用料は「維持管理費」として位置付けられており、5条の賃料とは明確に区別されているのであるから、維持管理費としての設備使用料を賃料収入として認定するのは事実誤認であると主張する。

しかし、①本件D建物設備使用料は、建物賃貸借契約書(乙115の(1))の11条において、Dが負担し、控訴人に支払うものと定められていること、②D中四国開発部長に対する質問てん末書(乙116)の問答10、11によれば、本件D建物に係る実際の月額賃料は、本件D建物賃料と本件D建物設備使用料を併せた28万円であると認められること、③本件D建物設備使用料は、Dにおいて同社が控訴人に融資した1200万円の建設協力金と相殺する方法で支払っていること(乙115の(1)〔9条、11条3項〕、乙116の問答12)からすると、本件D建物設備使用料の実質は賃料収入であって、控訴人の本件各事業年度の益金の額に算入すべきものである。控訴人の主張は採用できない。

(2)  土地等の無償貸付けに係る収益について

控訴人は、本件d土地建物につき、Eが使用している部分は、本件d建物のみであり、本件d建物の敷地以外の土地は使用していないし、Eは本件d建物を倉庫として利用しているのみであるし、平成6年度の本件d建物の固定資産税及び都市計画税の合計額は18万6968円であり、新築軽減課税標準額は1099万8147円である(甲6)ことから考えれば、年間賃料が200万円を超えることはないと主張する。しかし、調査報告書(乙131)においては、本件d建物がその敷地(本件d土地)と適応していることを指摘しつつ、敷地内における建物配置状況等から建付減価の発生も考慮して建付地価格を求めた上で、昭和59年9月18日当時の本件d建物の新規賃料を算定しているのであるから、当該新規賃料を基礎として得られた適正賃料の額に、本件d建物の敷地以外の土地に係る賃料の額は含まれていないということができる。また、控訴人が当審において提出した土地・家屋名寄帳(甲6)によれば、平成6年度の本件d建物の固定資産税及び都市計画税の合計額は18万6968円であり、新築軽減課税標準額は1099万8147円であることが認められるが、前記認定を左右するものではない。よって、控訴人の主張は採用できない。

(3)  家賃地代計上漏れについて

控訴人は、平成6年4月期において家賃地代40万6850円の収入(本件駐車場収入)は、Eの収入であって、控訴人の収入ではないと主張し、当審においてEの総勘定元帳(甲7)を提出した。

しかし、平成8年6月20日から平成9年5月31日までの上記総勘定元帳(甲7)には、本件駐車場収入と同じ相手方(ただし、一部)からの当該期間における駐車場収入が計上されていることはうかがえるが、控訴人がEの収入であると主張する本件駐車場収入40万6850円が計上されているわけではなく、同証拠によっても原判決の認定は覆らない。よって、この点に関する控訴人の主張も採用できない。

(4)  その他の控訴人の当審における主張に鑑み検討してみても、原判決の認定、判断は覆らない。

第4  結論

よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前坂光雄 裁判官 岩坪朗彦 裁判官 横溝邦彦)

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