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広島高等裁判所岡山支部 平成17年(う)141号 判決 2006年1月25日

主文

原判決を破棄する。

被告人Aを懲役15年及び罰金100万円に,同Bを懲役13年に各処する。

被告人Aにつき,原審における未決勾留日数中430日を上記懲役刑に,同Bにつき,原審における未決勾留日数中430日を上記刑にそれぞれ算入する。

被告人Aにつき,上記罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

原審における訴訟費用中3分の2は被告人両名の連帯負担とする。

理由

1  被告人Aの本件控訴の趣意は,弁護人古賀康紀作成の控訴趣意書に,被告人Bの本件控訴の趣意は,弁護人船木誠一郎作成の控訴趣意書にそれぞれ記載されたとおりである(なお,被告人Aの弁護人は,事実誤認は量刑不当の一事情として主張する趣旨であり,独立の控訴理由ではないと釈明した。)から,これらを引用する。

そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討し,次のとおり判断する。

2  被告人Bの控訴趣意中,殺人に関する事実誤認について

論旨は,要するに,原判決は,原判示第3のとおり,被告人Bが同A外1名と共謀して,岡山市内の駐車場において,殺意をもって,Cを木製バットで数回殴打し,日本刀で十数回突き刺すなどして殺害したとの事実を認定したが,被告人Bは,Cに対し,暴行を加える意思はあったものの,殺害する意思はなかったので,上記殺人の事実を認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。

しかし,原判決が(事実認定の補足説明)の「第2 被告人両名の判示第3の殺人の事実について」(なお,原判決26頁1行目「第2」は「第3」の,同34頁16行目「第3」は「第4」の誤記と認める。)中の「2 被告人両名の殺意の有無について」(原判決27頁19行目から同32頁9行目まで)で説示する諸事情,すなわち,被告人両名は,後記5で説示するとおりの経緯により,木製バット及び日本刀を準備して福岡市から岡山市まで来て被害者を待ち伏せし,本件殺人に及んだのであり,偶発的な犯行ではない上,まず,被告人Bがいきなり木製バットを振り上げ,無防備状態のCの頭部付近を2回殴打し,同人の頭部に4箇所,左顔面部に2箇所の鈍器損傷を負わせたが,頭部の損傷のうち1箇所は長さ8センチメートルの挫裂傷で,頭蓋骨に線状骨折を伴い,直下の右大脳前頭葉外側部に前後1.4センチメートル,上下1.3センチメートルの脳挫傷を生じさせるというものであって,頭部を強打したと認められること,更に,被告人Aは,Cが被告人Bの振りかざした木製バットを両手で掴んでいたとき,日本刀で同人の顔面,胸腹部及び左側腹部に14箇所もの鋭器損傷を負わせる激しい追撃を加えたが,被告人Bは,同Aの上記行為を認識しながら制止しないばかりか,倒れた被害者に向けて更に木製バットを振り下ろしていることなどを勘案すると,被告人BがCを木製バットで殴打した時点で確定的な殺意を有していたことが優に認められ,原判決が上記殺人の事実を認定したことは相当であるから,原判決に事実誤認があるということはできない。

論旨は理由がない。

3  被告人Bの控訴趣意中,恐喝未遂に関する事実誤認について

論旨は,要するに,原判決は,原判示第2のとおり,被告人BがD外1名と共謀して,E及びFに対し,平成15年12月11日に佐賀県内のファミリーレストランで「娘の借金は親だから責任があるだろうが。」など,同月13日に福岡市内のC方で「Cは絶対に許せない。おやじの顔に泥を塗った。Gさんの借金はどうするんですか。」など,平成16年1月6日に佐賀県内のリサイクルセンター南側駐車場で「270万払わんか。払わんと,これから何でもやるぞ。」などと脅迫的言辞を申し向けたとの事実を認定したが,被告人Bらが原判示のような脅迫的言辞に及んだことはないので,上記事実を認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。

しかし,原判決が,その挙示する証拠に基づき,上記のとおり被告人Bらが脅迫的言辞に及んだと認定したことは相当であり,原判決に事実の誤認があるとは認められない。

所論は,Eが平成16年1月6日から同月12日までの間繰り返し警察に通報したり相談したりしたにもかかわらず,被告人Bについて恐喝未遂による逮捕状が発付されたのは原判示第3の殺人が発生した後の同年3月4日であるから,上記認定に沿うEらの供述は,被告人Bらとのやり取りや同被告人の文言につき,あたかも金員要求に向けて発せられたように歪曲して解釈したり,記憶が変容したりした疑いがある旨主張するが,E及びFの各供述は,原判決が説示するとおり,詳細かつ具体的で,その内容が自然である上,相互に符合し,Cの父Hら関係者の供述とも矛盾せず,Eの職場の部下でリサイクルセンター南側駐車場での犯行状況(原判示第2の3)の目撃者であるI及びJの各供述によっても裏付けられており,また,記録を精査しても,被告人Bらとのやり取りや同被告人の文言を歪曲して解釈したことを窺わせる事情はなく,記憶の正確性に疑いを差し挟むべき事情もないので,信用性が高いというべきであり,上記主張は採用できない。

また,所論は,・※被告人Bらは,CやGに対する貸金につき,同人らの所在を突き止めて直接取り立てようと考えていたもので,Gの両親であるE及びFから恐喝手段を用いてまで回収する意思はなかった,・※佐賀県内のファミリーレストラン(原判示第2の1)では,Fが来店後ほとんど泣いており,これを店員や他の客が注視していたので,脅迫的言辞を申し向けるような状況ではなかった旨主張するが,上記・※については,被告人Bらは,平成15年12月11日に佐賀県内のファミリーレストランでEと会った当初から,Gが270万円の借金をして逃げていると言いながら2通の借用書を示し,「親として,娘の借金をどうされますか。」などと申し向け,その後も「どうなってもいいんですか。」などと凄みを効かせながら「親としての責任」「どうするんですか」という言い方を繰り返して暗に借金の返済を要求したのであるから,当初から,Cらの所在を突き止めるだけでなく,Eらから恐喝手段を用いてでもGの借金の肩代わりをさせる意思を有していたというべきであり,また,上記・※については,Fは,被告人Bは凄みを効かせていたが,大声などは出していないと供述し,互いの発言内容などについても記憶しており,同人が来店後ほとんど泣いていたとは認められず,所論は前提を欠いており,上記主張はいずれも採用できない。

論旨は理由がない。

4  被告人Bの控訴趣意中,法令適用の誤りについて

論旨は,要するに,原判示第2の各恐喝未遂につき,単純一罪又は包括一罪と評価されるべきものであるのに,これを3件の併合罪の関係にあると判断した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。

しかし,原判決が上記各恐喝未遂の罪数について上記のとおり恐喝未遂3件の併合罪の関係にあると判断したのは相当であり,原判決に法令適用の誤りは存しない。

所論は,上記各恐喝未遂は,被告人Bらが,KからC及びGに対する貸付金の回収を依頼されたことに起因し,1か月足らずの間に,その借金返済名下に金員を脅し取ろうとしたという,同一の犯意に基づく一連の行為で,同一法益を侵害するものである旨主張するが,上記各恐喝未遂は,それぞれ,平成15年12月11日に佐賀県内のファミリーレストランで,同月13日に福岡市内のC方で,平成16年1月6日に佐賀県内のリサイクルセンター南側駐車場で敢行されたものであり,同一の犯意に基づく同種の行為によって同一の法益を侵害したとしても,短時間のうちに同一場所,同一機会で行われたとはいえないので,単純一罪とはいえないし,犯行の日時場所が近接するとはいえず,その全体を一個の行為として評価するのが相当であるとも解されないので,包括一罪にも該当しないというべきである。

論旨は理由がない。

5  被告人両名の控訴趣意中,量刑不当について

論旨は,要するに,被告人Aを懲役17年及び罰金100万円に,同Bを懲役16年に各処した原判決の量刑は,被告人らが,共犯者1名と共謀して岡山市内でCを殺害するに当たり,福岡市内を出発する時点で既に同人の殺害について共謀を遂げ,日本刀及び木製バットを準備して岡山市内に赴いて同人を殺害したという,事前共謀に基づく計画的な殺人であることを前提とするものであるが,上記殺人は,事前の計画に基づくものではなく,現場の成り行きから偶発的に敢行されたものであるから,原判決の量刑は,懲役刑の刑期の点で重過ぎて不当である,というのである。

しかしながら,本件殺人は,被告人らが,共犯者1名と共謀し,平成16年2月18日午後11時ころ,岡山市内の駐車場において,C(当時31歳)の頭部を木製バットで数回殴打し,その腹部,胸部,頸部等を日本刀で十数回突き刺すなどして胸部刺創により失血死させて殺害したという事案であるところ,被告人両名は,被害者がその所属する暴力団L組組長に対して迷惑を掛けたうえ逃亡したとして憤激し,被害者の所在を突き止め,その殺害を計画し,あらかじめ福岡市内で日本刀及び木製バットを準備した上,岡山市まで赴き,被害者を待ち伏せ,いきなり被告人Bが木製バットで被害者の頭部を2回殴打し,同Aが日本刀で被害者の左脇腹等を多数回にわたり刺すなどし,素手の被害者に対して一方的に熾烈な攻撃を加えたと認められる。

所論は,もし被告人両名がCの殺害を計画して福岡を出発したのであれば,・※被告人両名が暴力団L組に所属しており,暴力団にはけん銃が広く行き渡っている以上,けん銃と比べて殺傷能力の低い日本刀や木製バットではなく,相手を確実に殺害するため当然にけん銃を用意したはずであり,・※暴力団組織に属さないMに車両の手配(レンタル)や運転を依頼して岡山市内に赴いたというのは不自然である旨主張するが,上記・※については,被告人両名が暴力団員であるからといって当然にけん銃を簡単に入手できるとは限らない上,前記犯行態様から明らかなように1人の被害者の不意を襲う場合に,2人の被告人が木製バット及び日本刀を準備することは,人を殺害する道具を準備したと評価するに十分であるし,上記・※についてみても,Mは,L組には所属していないとはいえ,同組組長のNとは旧知の間柄であり,同組に所属する被告人両名とも知り合いであったため,Cの殺害を計画した被告人両名がMに車両の手配や運転を依頼したとしても,格別不自然であるとはいえないので,結局,上記所論は採用できない。

その他,所論がるる主張する諸点を検討しても,いずれも周到な計画性まではなかったと主張するに過ぎず,被告人両名の凶器の準備状況,犯行現場における過剰ともいえる攻撃態様に照らし,一定の計画性があったと認定した原判決の判断を左右することはできない。所論は採用できない。なお,原判決は,Cに第一撃を加える直前の状況に関する被告人両名の各供述は,食い違いが多く,あいまいであり,Oの供述とも整合しないので,到底信用することができないとして,被告人両名の同時並行的攻撃の可能性を示唆するが,被告人両名の各供述は,大筋において相互に合致しており,攻撃の回数,部位,態様等に不一致やあいまいな点があるとしても,Cの被害状況に照らして攻撃態様が激しく,被告人らが犯行当時は興奮状態にあったことが窺われるので,所論指摘のとおり供述が一致する方がむしろ不自然とみる余地がある上,Oの供述と矛盾するということもできないので,原判決の上記説示は相当でないが,第一撃が木製バットであり,第二撃が日本刀であっても,前述の連続的かつ執ような攻撃態様に照らして十分計画性を推認することができ,この点は上記判断に影響を及ぼさないというべきである。

被告人Aの弁護人は,原判決が,本件殺人を事前の計画に基づくものと判断した根拠の一つとして,被告人Bが本件殺人前の平成15年12月13日に敢行した恐喝未遂事件において「Cだけは許さん。こいつだけはおやじの顔に泥を塗ったので,ただではおかん。」「誰にも分からないように始末を付ける。」などと脅迫文言を述べたことを掲げている点につき,上記恐喝未遂は本件殺人と無関係であり,かえって,被告人Bが本件殺人の実行前に上記脅迫文言を述べたことは,警察への通報の可能性を考慮すると,その内容を実行する意思がなかったことを証明するものである旨主張するところ,確かに,被告人Bが述べた上記脅迫文言は,恐喝の手段として通常用いられるものであり,その内容につき実行の意思を抱いていると即断することはできず,上記恐喝未遂を本件殺人と結びつけて解釈するのは相当ではないから,原判決の上記説示は適切でないというべきであるが,被告人Bが上記恐喝未遂事件で上記脅迫文言を述べた後,被告人Aらとの共謀を遂げた時点で実際にCの殺害を決意したと推認するのが合理的であり,両者が矛盾するものとはいえないので,上記主張は採用できない。

また,被告人Bの弁護人は,同被告人は,貸金回収の目的でCを探していたのであり,同人を殺害すると貸金回収ができなくなるので,同人の殺害を企図していたというのは不自然である旨主張しており,確かに,被告人Bは,平成15年11月後半ころから平成16年1月15日までの間,Cに対する貸金回収の目的で同人の所在を探し,Eを追尾するなどしていたのであるが,その後,被告人両名が木製バットや日本刀を携えて福岡市から岡山市に向けて出発した同年2月17日までには約1か月の隔たりがあるので,その間に被告人Aらとの共謀を遂げ,貸金を回収する目的からCを殺害する目的に転じたとしても,何ら不自然ではないということができるから,上記主張は採用できない。

以上の判断を前提として本件殺人の犯情を考慮すると,その態様は残虐かつ非道であり,その結果も,木製バットで被害者の頭部及び左顔面部に6箇所の損傷を与えたほか,日本刀で被害者の顔面及び胸腹部に14箇所に及ぶ損傷を与え,内2箇所は心臓を貫通し,被害者を失血死させたという重大かつ悲惨なものであり,妻と幼子を残して突然生命を奪われた被害者の心情は察するに余りあり,その妻の被害感情には今なお厳しいものがあるといわなければならない。

また,本件殺人のほか,被告人Aは,・※共犯者1名と共謀し,平成15年5月18日午前零時05分ころ,福岡県a郡b町内のカラオケ店前駐車場において,・※当時20歳の男性の顔面及び腹部等を手拳で数回殴打して加療約9日間を要する打撲の傷害を負わせ,・※当時21歳の男性の頭部を膝で蹴り付ける暴行を加え,・※単独又は共犯者と共謀し,平成13年6月13日ころから平成14年6月3日ころまでの間,佐賀市内の神社境内,路上又は駐車場において,合計23回にわたり,貸金業の登録を受けないで業として客に金銭を貸し付け,・※単独又は共犯者と共謀し,前同様の期間,場所において,合計265回にわたり,1日当たり0.08パーセントの法定の貸付金利を超える1日当たり約2.99ないし6.76パーセントの割合による利息を受領したという,傷害,暴行,いわゆる闇金融の各犯行にも及んでおり,上記傷害及び暴行は,被害者らの態度に一方的に腹を立てて因縁を付け,何らの落ち度もない被害者らに暴行を加え,内1人に傷害を負わせたもので,暴力団特有の理不尽な犯行であり,被害者らの処罰感情が厳しく,また,上記闇金融は,暴力団Pの活動資金を得る目的で,貸金業の登録を受けず,貸付金額の決定や振込口座の管理等の一切を取り仕切り,自ら又は配下の組員に指示し,1週間で2割の金利で天引して貸付を行い,法定の金利を大幅に超過する利息を受領していたもので,携帯電話等の必要な物品を整え,宣伝用看板を発注するなど,周到な準備をして敢行された組織的犯行であり,しかも,被告人Aは,平成13年3月26日に妻の連れ子に対する傷害罪で懲役2年,3年間執行猶予,付保護観察の判決を受けたにもかかわらず,その猶予期間中に本件殺人等の各犯行に及んだもので,法規範軽視の態度が明らかであるといわざるを得ない。

一方,被告人Bは,本件殺人のほか,共犯者2名と共謀し,平成15年12月11日,同月13日及び平成16年1月6日の3回にわたり,佐賀県内のファミリーレストランほか2箇所において,Cの妻の父親又は両親に対し,借金を肩代わりしなければ同人らやその親族の身体等に危害を加えかねない気勢を示して脅迫して畏怖させ,娘夫婦の借金返済名下に金銭を交付させようとして未遂に終わったという恐喝未遂3件の犯行をも敢行しており,同犯行は,被告人BがCの所在を探す中で,何らの落ち度もない被害者らに対し,「親としてどう責任を取るのか。」「払わんと,これから何でもやるぞ。」などと申し向けて暗に娘夫婦の借金の返済を迫ったもので,暴力団特有の理不尽で粗暴かつ執ような犯行であり,被害者らが受けた恐怖感は大きく,その処罰感情が厳しいのももっともであり,しかも,被告人Bは,平成10年2月シンナーの販売で懲役1年,3年間執行猶予(平成12年1月猶予取消し)に,平成11年11月傷害2件で懲役10月に各処せられた累犯前科があるにもかかわらず,更に本件各犯行に及んだもので,その法規範軽視の態度は看過できないというべきである。

以上によると,被告人両名につき,いずれも犯情は芳しくなく,刑事責任は重大であるといわなければならない。

しかしながら,被告人両名は,その所属する暴力団L組組長の指示を受けて本件殺人を敢行したと推認できること,被害者は,L組の幹部であったところ,組長の知人から多額の借金をした上,所在不明となったもので,犯行を誘発した点がなかったとはいえないこと,殺傷力の最も高いけん銃を用いた犯行ではなかったこと,被告人両名の母親がそれぞれ被害者の妻に慰謝料として各100万円(合計200万円)を支払ったことのほか,被告人Aにつき,本件殺人につき,自首した上,被害者や遺族に申し訳ないと述べるなど,本件各犯行を反省していること,上記傷害の程度は比較的軽かったこと,いわゆる闇金融によって得た利益は,その期間の割には高額であったとはいい難いこと,所属のL組から破門され,Pの解散届を提出したことなど,また,被告人Bにつき,上記のとおり恐喝に関しては幸い未遂に止まったこと,同被告人は,本件殺人について,終始被告人Aの指示のままに行動していたこと,本件殺人に関して被害者や遺族に申し訳ないと述べ,反省の態度を示していること,所属のL組から破門されたことなど,被告人両名のため斟酌すべき諸事情に徴すると,本件殺人が事前共謀に基づく計画的なものであり,あらかじめ準備した日本刀等の凶器を用いて被害者に熾烈な攻撃を加えるという残虐かつ非道な態様で,重大かつ悲惨な結果を生じさせたこと,本件各犯行はいずれも暴力団特有の論理に基づくもので,被告人両名には法規範軽視の態度が顕著であることを考慮してもなお,被告人Aを懲役17年及び罰金100万円(求刑懲役18年及び罰金100万円)に,被告人Bを懲役16年(求刑懲役18年)に各処した原判決の量刑(被告人Aについては懲役刑の量刑)は,同種事犯の量刑傾向に照らして重過ぎて失当というべきである。

論旨は理由がある。

6  よって,刑訴法397条1項,381条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。

罪となるべき事実は原判決が適法に認定したとおりであり,被告人Bの累犯前科は原判決記載のとおりであるところ,上記罪となるべき事実に原判決が掲げる法令(被告人Aにつき刑種の選択,併合罪の処理を,被告人Bにつき刑種の選択,累犯加重,併合罪の処理をそれぞれ含む。)を適用し,上記諸事情を勘案して被告人Aを懲役15年及び罰金100万円に,同Bを懲役13年に各処し,刑法21条を適用して,被告人Aにつき原審における未決勾留日数中430日を上記懲役刑に,同Bにつき原審における未決勾留日数中430日を上記刑にそれぞれ算入し,被告人Aにつき,上記罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置し,原審における訴訟費用中3分の2は,刑訴法181条1項本文,182条により被告人両名に連帯負担させることとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安原浩 裁判官 河田充規 裁判官 吉井広幸)

<編注:『※』部分は原文のとおり。>

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