広島高等裁判所岡山支部 平成18年(ラ)12号 決定 2006年7月20日
抗告人
A
被相続人
B
主文
1 原審判を取り消す。
2 被相続人Bの相続財産である別紙財産目録記載の財産を総て抗告人に分与する。
理由
第1抗告の趣旨及び理由
別紙記載のとおり
第2当裁判所の判断
1 本件記録によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被相続人Bは,平成13年10月14日死亡し,その相続が開始したが,同人の法定相続人が総て相続を放棄したので,相続人が不存在となった。
(2) Cは,被相続人に対する債権者として,平成15年2月6日,岡山家庭裁判所に対し,相続財産管理人選任の申立てをし,同年7月9日付けで相続財産管理人が選任された。その後,同管理人の請求により相続人捜索の広告がなされ,平成16年10月29日,その期間が満了したが,その期間内にその権利を主張する者はいなかった。
(3) 抗告人は,平成16年12月1日,相続財産分与の申立てをした。
(4) 抗告人は,被相続人の長男であり,唯一の子供である。抗告人は,出生以来平成4年12月に被相続人の妻である自己の母が亡くなるまで,被相続人と同居生活をしており,その後平成5年に婚姻して,現住所で生活するようになったが,被相続人宅は自己の職場の近所であったこともあって,3日に一度は被相続人宅を訪ね,被相続人の生活に気遣っていた。被相続人は,平成12年ころから肺ガンで入院生活を送るようになったが,約1年間の入院期間中毎月5ないし6万円の入院費用を支払い,週に1度は見舞いに行っていた。被相続人の葬儀は,抗告人が執り行った。
(5) 抗告人は,被相続人の死亡後,間もないころから,同人と生前に交際していたと主張するCから被相続人の負債について,執拗に弁済を求められたため,Cないしその関係者から際限のない請求がされることを危惧し,平成13年10月22日相続放棄の申述をしたが,相続財産についての清算が終了したので,相続財産分与の申立てをしたものである。
(6) 被相続人の相続財産を清算した結果,別紙財産目録記載の財産を被相続人の相続財産管理人が管理している。
2 以上によれば,抗告人は民法958条の3第1項所定の特別縁故者にあたると認められ,その財産総てを抗告人に分与するのが相当である。
第3結論
以上によれば,抗告人からの相続財産分与の申立てを却下した原審判は,相当ではないので,家事審判規則19条2項に基づき,原審判を取り消し,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 前坂光雄 裁判官 渡邊雅道 横溝邦彦)
<以下省略>