広島高等裁判所岡山支部 平成18年(ラ)6号 決定 2006年2月17日
抗告人
甲野花子
同代理人弁護士
清水善朗
本人
甲野太郎
主文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
1 本件抗告の趣旨は,「原審判を取り消し,岡山家庭裁判所倉敷支部に差し戻す」との裁判を求める,というものであり,その理由は別紙のとおりである。
2 当裁判所の判断
(1) 当裁判所も,本人は精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり,本人について後見の開始をするのが相当と判断する。抗告人も,原審判中の後見開始申立てを認容した部分について異論はないとしている。
(2) 抗告人は,原審判が,本人の成年後見人として,本人の先妻の子である甲野一郎を選任したのは不当であると主張する。
しかし,審判に対しては最高裁判所の定めるところにより即時抗告のみをすることができるところ(家事審判法14条),成年後見人選任の審判に対し即時抗告をすることができる旨の規定はない。家事審判規則27条1項は,民法7条に掲げる者は後見開始の審判に対し即時抗告をすることができる旨を規定しているが,その趣旨は,民法7条に掲げる者で後見開始の審判に不服のある者に即時抗告の権利を認めたものであり,これと同時にされた成年後見人選任の審判に対し即時抗告を認めたものではない。
したがって,後見開始審判に対する即時抗告において,後見人選任の不当を抗告理由とすることはできず,抗告裁判所も原審判中の成年後見人選任部分の当否を審査することはできない。法は,後見人にその任務に適しない事由があるときには,家庭裁判所は,被後見人の親族等の請求又は職権により,これを解任することができる(民法846条)などと定めるにとどめているものである。
(3) よって,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・前坂光雄,裁判官・岩坪朗彦,裁判官・横溝邦彦)
別紙抗告の理由<省略>