広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(ラ)8号 決定
抗告代理人は、「原決定を取消す。本案判決確定に至るまで、相手方が昭和二五年一月二四日抗告人に対してした解雇の効力を、仮に停止する。」旨の裁判を求めた。
第二、当裁判所の判断
当事者提出の疏明方法により当裁判所の一応認定した事実及びこれに対する判断は、次のとおりである。
一、抗告人両名は、相手方岡山工場(岡山市巖井二、〇九一番地所在)の従業員で、同工場従業員の一部を以て結成する備前護謨労働組合の組合員であり、相手方は、大阪市に本店を置き、前記場所に岡山工場を有する護謨製品の製造販売を目的とする株式会社である。
二、右組合と相手方との間には昭和二四年六月二六日相手方が組合員を解雇するときは予め組合と協議しなければならない旨の労働協約が締結せられたのであるが、右協約には有効期間の定めがない。
三、相手方は、昭和二五年一月二七日、その就業規則第五六条の規定に従い生産協力会の意見を徴し、抗告人両名を就業規則第三五条第一、二号に該当する者として解雇した。
四、各抗告人は、抗告人両名に対する本件各解雇は次の理由により無効なる旨主張する。すなわち、
(イ) 本件各解雇は、いずれも前記労働協約の解雇についての協議約款に違反し、予め組合と協議することなくしてなされた無効のものであり、
(ロ) 又、本件各解雇の表面の理由は、抗告人両名がいずれも就業規則第三五条第一、二号該当者であるというにあるが、真実の理由は、右組合が昭和二五年一月二三日岡山地方裁判所に相手方を債務者として賃金協定遵守の仮処分申請をした報復手段としてなされた点にある。従つて、本件各解雇は、明らかに相手方の不当労働行為というべきであるから、無効である。
と主張する。
よつて、審案するに、本件労働協約は、その有効期間の定めがないから、労働法(昭和二四年法律第一七四号)第一五条第一項前段により労働協約としての効力がないものとしなければならない。
さすれば、抗告人等の本件労働協約の有効を前提とする右(イ)の主張は、到底採用できない。そして又、仮に本件労働協約が有効であるとしても、昭和二五年一月下旬相手方取締役植田清武から抗告人坪井(当時組合長に対し同抗告人はその前年九月一七日以降乾性肋膜炎等、抗告人石井は同月八日以降肺結核による各長期欠勤者であるから、生産協力会にはかつて他の組合員一名とともに抗告人両名を解雇したいから、二、三日中に意見を聞かしてほしい旨申入れたのに対し、抗告人坪井は即日抗告人石井等に相手方の右申入れを伝えて同人等の意向をただし、同一月一七日右植田に対し抗告人等の解雇反対の旨を表明してきたので、相手方は同日抗告人等に対し解雇通知をし、その頃該通旨が同人等に到達したものであつて、当時右組合は相手方岡山工場従業員九十余名位中組合長抗告人坪井外数名に過ぎなかつた。しからば、同組合の当時の実態と如上本件各解雇の折衡経過に徴すれば、抗告人等の謂うように相手方が予め組合と協議をすることなく本件各解雇をしたものであるとは認め難い。従つて、(イ)の主張は、この観点からするも失当である。次に、右(ロ)の主張については、組合が昭和二五年一月二四日岡山地方裁判所に主張の如き仮処分申請をしたことは、当裁判所に顕著な事実であり、且つ従来相手方に同組合の結成存続を嫌厭するかのような言動があつたことを推測し得ないではないが、だからといつて、主張の如く本件各解雇が右仮処分申請に対する報復手段としてなされたことの疏明はない。
以上のとおりであるから、本件各解雇の無効を前提とする本件仮処分申請はその理由がなく、結局これと同旨に出て本件仮処分申請を却下した原決定は相当であるから、本件抗告はその理由がない。よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第八九条を適用して、主文のとおりに決定する。
(裁判官 植山日二 池田章 谷口武)