広島高等裁判所岡山支部 昭和26年(う)497号 判決
原判決は被告人は現金十万円、預金通帳等在中の鞄を拾得しながら届出でないでその頃之を費消横領したと認定しているが、費消の事実は原判決挙示の証拠によつて判定できないこと洵に所論の如くである。しかし被告人が判示物件を拾得しながら届出でないで之を隠匿し、被害者から返還の請求があつたに拘らずこれを拒否したことは前記証拠によつて明白であるから着服横領の事実が認められる(其後費消の事実ありとしても、それは事後処分と解せられる)のである。されば本件を費消横領と認定した原判決は事実の誤認であるけれども費消横領か着服横領かは犯罪の時と態様を異にするだけであつて横領罪の成否に関しないことは勿論事件の同一性を害するものでもないから右の誤認は判決に影響を及ぼすものではなく、従つて原判決破棄の理由とはならない。