広島高等裁判所岡山支部 昭和26年(う)693号 判決
刑法第二百三十六条第一項の強盜の犯意というのには暴行脅迫に依つて他人の反抗を抑制し因て財物を奪取するの決意があれば足りその財物の数量種類等について一一之を認識することを必要としないから之等のことがらについての認識の有無程度如何に拘らず苟も前記決意の実行によつて財物を奪取した以上はその財物の全部について強盜の罪責を負うべきで強取の目的とした財物の種類数量等は強盜罪の成否に影響しない事実である。原審判決の認定した事実によれば被告人宗勝彦及び原審相被告人尾崎克己は通行人に暴行を加えて金品を強取しようと共謀し昭和二十六年五月三日午前零時半頃岡山市青江八幡西北路上で被告人宗勝彦が折柄自転車に乗り同所を通り掛つた岡山市青江七百五番地川月喜三郎に対し煙草の火を借りて居る隙に原審相被告人尾崎克己が所携の松丸太棒をもつて川月の頭部を殴打し加療二カ月を要する右頭頂部割創並に頭蓋骨骨折を負はしめ因て同人をその場に昏倒さした上同人所持の自転車一台鞄等六点及び現金二千円余を強取したと謂うのであつて被告人等は当初から川月の所持する金品を強取する企図があつて同人を昏倒さしてその所持の金品を被告人等の支配内に収めたものでその所持品全部について奪取は成立するものと解すべきである。
仮りにその現金については所論のようにその認識がなかつたとしても叙上に説明したように強盜罪の成立することは明らかであるから論旨は理由がない。