大判例

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広島高等裁判所岡山支部 昭和29年(う)23号 判決

次に医師法違反(判示第八)の点について考察するに、原判決は被告人は医師でないのに拘らず別表二(別表三とあるは誤記と認める)記載の日時場所において病気中の同記載の被診察者に対し自己の右示指をその眼前に突出して之を凝視させながら上下左右に動かし病状の診断をし以て医業をしたものと認定し医師法第一七条第三一条を適用処断しているのであるが、同法第一七条に所謂医業とは反覆継続して医行為をなすことであり、ここに医行為とは人の疾病治療を目的とし現時医学の是認する方法により診察、治療(手術、投薬等)をなすこと、換言すれば主観的には疾病治療を目的とし客観的にはその方法が現代医学に基くもので診断治療可能のものたることを要するものと解せられる。そこで被告人の判示所為が右に所謂医行為と認められるか否かについて検討するに、原判決が判示第七及第八関係事実について挙示する証拠を綜合すると、被告人は病気に悩む人より金銭を詐取しようと企てその欺罔手段として判示の如き診断類似の行為をなしこの病気にはこの薬が特効薬であるからこれを飲めば必ず治ると申向け何等薬剤的効果のない焼骨粉を「この薬はうなぎの生胆、蝮、赤蛙、朝鮮人参、猿の脳味噌、鹿の角等をむし焼にした高貴薬である」と詐つて相手方をその旨誤信させ薬代名下に金銭を騙取し又は騙取しようとしたものであつて結局判示の所為は判示第七認定の事実と相俟つて詐欺の手段であり疾病治療を目的とするものでないことが明かである。なお診察の方法たるや単に自己の右示指を患者の眼前に突出しこれを凝視させながら上下左右に動かして病状を判断するというのであつて、何等医学的根拠のないものであることは勿論、かような単純にして且つ非科学的方法によつて診断することの不可能なことは現時医家の行う診断方法(問診、視診、聴診、打診、触診其他各種の科学的方法を用いその検出した結果を綜合して診定する)に比して極めて明白である。之を要するに被告人の判示所為は判示第七の詐欺、同未遂罪に包括される欺罔手段に過ぎないものであつて医行為とは認められない。されば右被告人の所為を医行為と認定し医師法違反罪に問擬した原判決は事実を誤認し法例の適用を誤つた違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすこと明かであるから原判決中有罪の部分はこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

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