大判例

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広島高等裁判所岡山支部 昭和29年(う)294号 判決

職権を以つて取調べると、被告人飯塚、同村岡に対する昭和二十七年四月二十八日付起訴状記載の公訴事実中第一の(イ)(ロ)について、罪名及び罰条として掲げているところは、第一の(イ)(ロ)を暴行、脅迫、刑法第二〇八条第二二二条同(ロ)は更に暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項としていることは右起訴状に明らかである。然して原判決は右公訴に係る訴因をそのまゝ認定しているのであるが、その適用法条を見ると判示第一の(イ)(起訴状第一の(イ)に相当)は被告人飯塚の関係に於て刑法第二〇八条第二二二条、同(ロ)(起訴状第一の(ロ)に相当)は被告人村岡(同小寺)の関係に於て暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項のみを掲げ、刑法第二〇八条第二二二条は掲げていないことはこれ又原判決書に明かである。

そこで之について考察すると、原判決が判示する如く、被告人村岡、同小寺、藤田松男外数名の者が共に被告人飯塚の原判示第一の(イ)の犯行に加勢し、同被告人と共同して同第一の(ロ)の犯行を敢行したというのである。

すると、被告人飯塚は原判示第一の(イ)及び(ロ)の両事実に跨つて関与したものであるから、同第一の(イ)の犯行は同(ロ)の犯行に至つたその過程に於ける行為と観察することが出来るから、被告人飯塚の犯行は右の(イ)及び(ロ)とに区分して評価すべきではなくして、両者を包括して評価せられるべきものといわなければならない。

従つて被告人飯塚を含めた多数人による原判示第一の(ロ)の一連の共同行為は同被告人の当初の犯行に拘らず、之に関係したすべての者にとつて暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項(但刑法第二〇八条第二二二条)の犯罪の構成要件を充足し、ただ其の罪のみが成立し、此の罪の外に暴行、脅迫の罪が成立し、両者が並立するということはあり得ないと解すべきではあるまいか。

もつとも検察官に於て暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪に当る場合に於ても之を単に暴行、脅迫の罪として公訴を提起することは可能である。然し此の結果は本件の場合に於ては被告人飯塚と之に加担した被告人村岡、同小寺等との間の均衡を著しく失することとなるであらう。

此の意味に於ては原判決が原判示第一の(ロ)の罪について検察官が両者の罪(即ち暴行、脅迫の罪と暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪)について公訴を提起してをるのに拘らず、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪のみの認定をしていることは正当である。

然しながら原審は被告人飯塚の関係に於て、原判示第一の(ロ)の暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪の一過程である原判示第一の(イ)の所為について、何故検察官が暴行、脅迫の起訴をしたのであるか、更に又被告人村岡の関係に於て原判示第一の(ロ)の所為について、前記の如く何故検察官が暴行、脅迫の罪と暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪との両者を起訴したのであるか、釈明権を行使して訴因を明確ならしめた上審判すべきであるのに此の挙に出でないで、前者について暴行脅迫罪の認定をなし、後者については暴行脅迫の起訴を不問に付し、何等の判断をも加えていないのは諒解し難いところである。

要するに原判決は被告人飯塚、同村岡の関係に於ては訴訟指揮の行使を怠り訴因について釈明すべきところを釈明せずして審理した訴訟手続に関する法令違背の違法を犯し、且又被告人村岡の関係に於ては審判の請求を受けた事件に対して審判をしなかつた違法を犯したもので此の結果はいずれも判決に影響を及ぼすことが明かであるから、原判決中右被告人両名に関する部分は此の点に於て破棄すべきものである。

(裁判長判事 宮本誉志男 判事 浅野猛人 判事 三好昇)

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