広島高等裁判所岡山支部 昭和45年(ラ)15号 決定 1971年2月05日
抗告人 矢野文子(仮名) 外二名
主文
本件各抗告を棄却する
抗告費用は抗告人らの負担とする。
理由
一 抗告人らの求めた裁判
「原審判を取消す。死亡直前の本籍倉敷市○町○○○番地、右以前の本籍浅口郡○○○大字○○△△△番地、右以前の本籍香川県仲多度郡○○○大字○○○○△△△番地、右以前の本籍浅口郡○○町○○△△△番地、最後の住所倉敷市○町○○○番地、旧姓名矢野志真、植竹志真、本人亡笹山志真の父矢野一男、母矢野春江又は母不詳とあるのを父矢野竹二母植竹愛子と訂正する。」
二 抗告の理由
亡笹山志真は矢野一男と矢野春江との間の子でなく、その父は矢野竹二母は植竹愛子であり、原審判は失当である。
三 当裁判所の判断
抗告人らは戸籍法一一三条に基づいて戸籍訂正申請に関する裁判所の許可を求めるものであるが、同法条の許可は、訂正の対象事項が戸籍の記載自体で一見明白である場合または戸籍の記載自体で明白でなくてもその事項が軽微で訂正が重大な身分法上の影響をもたない場合に限つて認められるべきものであり、訂正事項が戸籍の記載自体で明らかでなくしかも訂正の結果身分法上重大な影響を生ずる場合の訂正は、すべて身分関係に関する確定判決または審判に基づき同法一一六条所定の訂正手続によるべきであるところ、親子関係の存否に関する戸籍訂正が身分上重大な影響を生ずることは明らかである。
これを本件についてみるに、訂正の対象事項は、亡笹山志真の父矢野一男母矢野春江または母不詳とある尸籍の記載を父矢野竹二母植竹愛子と訂正するにあるが、右訂正事項が戸籍の記載自体で明らかであると認めるに足る資料はなく、しかも右訂正事項は親子関係の存否に関するものであり訂正の結果身分法上重大な影響を生ずることは前述のとおりである。
したがつて本件戸籍訂正の許可は爾余の点について判断するまでもなくこれを認容しえないことは明らかである。以上の次第で本件申立を却下した原審判は結論において正当であるから本件抗告を棄却することとする。
なお抗告人らは本件身分関係の確認に関する確定判決ないしは審判を得たうえ戸籍法一一六条に基づいて戸籍訂正の申請をなすべきである。
(裁判長判事 胡田勲 判事 中原恒雄 永岡正毅)