広島高等裁判所岡山支部 昭和52年(ラ)19号 決定 1978年7月06日
抗告人 山村純一
相手方 山村俊彦 外三名
主文
原審判を取消す。
本件を岡山家庭裁判所に差戻す。
理由
一 本件抗告の趣旨は主文同旨であり、理由は末尾添付の抗告理由書記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
原審判は、昭和四六年一二月二七日被相続人山村重吉が、同五一年八月一一日同山村小枝がそれぞれ死亡し相続が開始したものであるから、まず右重吉の遺産を分割し、ついで右小枝の遺産(重吉の遺産相続分を含む)を分割することとなるが、その方法をとつても各人の窮極の取得割合は不変であるから一括判断することとし、抗告人山村純一が昭和四六年九月頃右重吉より贈与された玉野市○○字○○○××××番×宅地四七六・〇三平方米及び同所家屋番号一〇八番木造瓦葺平家建居宅床面積一〇〇・八二平方米ほか付属建物は同人の特別受益であり、これと相手方山村俊彦の右小枝よりの特別受益を右重吉、小枝の遺産と合算したうえ、抗告人の相続分(五分の一)を算出し、前記の同人の特別受益はこれを超過しているから同人の具体的相続分は零である、と認定判断している。
たしかに、父母があいついで死亡し、その遺産をまとめて分割しようとする場合、法定相続分についてみれば、原審判が述べるように窮極の取得割合は不変であり、特別受益者が存在しないときは一括して判断することも首肯できるけれども、特別受益者が存在するときは各被相続人ごとに遺産の分割をなしその具体的相続分を算定すべきであつて、これを一括判断するときは、一方の被相続人からの特別受益を他方の被相続人からの特別受益とも評価控除することとなり違法であることを免れない。
本件においては抗告人は右重吉より特別受益を得ているのであるから右重吉の遺産の分割にあたつて、特別受益者として、まずその具体的相続分を算定すべきであつて、右小枝の遺産の分割にあたつては特別受益を算定控除すべきでないのに、原審判は一括判断の名の下にこれを算定控除していることに帰着するから原審判はこの点において失当であり本件抗告は理由がある。
しかして本件記録によれば、相手方らには原審判認定のほかにも特別受益の存することが窺われるから家事審判規則一九条一項により原審判を取消し、本件を原裁判所に差戻すこととする。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判長判事 加藤宏 判事 喜多村治雄 下江一成)
抗告理由書<省略>