広島高等裁判所岡山支部 昭和53年(行コ)3号 判決 1979年10月30日
岡山市岩田町六番一一号
控訴人
吉原乳業有限会社
右代表者代表取締役
吉原三郎
右訴訟代理人弁護士
田淵浩介
同
藤本徹
同市天神町三番二三号
岡山東税務署長
被控訴人
重本隆三
右指定代理人
一志泰滋
同
滝本嶺男
同
長安正司
同
宇都宮猛
同
益池勝
同
土井祥一
同
藤井晟男
同
高田資生
右当事者間の法人税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 申立
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和五〇年一〇月三一日付で、控訴人の昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
二 主張及び証拠関係
当事者双方の主張及び証拠の関係は、控訴人において当審証人岡辺賢二の尋問を求めたほかは、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求は失当であり棄却すべきものと判断する。その理由は次に付加するほか原判決の理由説示と同一であるからこれを引用する。
控訴人指摘の通達は、租税特別措置法六三条三項四号、五号及び七号イの特別税率適用除外の規定が自己の造成した土地等の譲渡について適用されるところから、自己が造成したかどうかについては、右通達に規定する証明書類の被証明者の名義によつて判断することを示したものであり(本件でいえば、本件土地は甲第九、第一〇号証等により大弘建設株式会社が造成したものと認定することになる。)、本件において右通達によらず造成の事実により、大弘建設株式会社から本件土地の所有権の譲渡を受けた控訴人においてこれをなしたものと認定するとしても、控訴人において地位の承継につき都市計画法四五条に定める県知事の承認を受けていない以上、控訴人は開発許可に基づく地位を承継した法人に該当しないものといわざるを得ず、前記除外規定の適用を受け得ないことは明らかである。
控訴人の主張は、いわゆる実質課税の原則の立場から優良業者が、優良宅地を造成したときは県知事の開発許可を得ていなくても、その実質をみて、前記除外記定を適用すべきであるというに帰するものと解されるが、前掲法律をもつて明確に手続上の規制がなされている以上、単に優良業者であるからといつて(優良業者ならばたやすく右手続をとりうる筈である)、この手続を省略無視することができるとすると、かえつて行政手続を軽視することによる恣意的課税を生ぜしめる恐れがあり、控訴人の右主張は行政手続の安定確保という問題を実質課税の原則の問題にすりかえようとする独自の見解であつて、採用し難い。
そうすると原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民訴法九五条本文、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長判事 加藤宏 判事 喜多村治雄 判事 下江一成)