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広島高等裁判所松江支部 平成14年(ネ)85号 判決 2002年10月30日

控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)

甲野花子

同訴訟代理人弁護士

妻波俊一郎

被控訴人

株式会社○○製作所

同代表者代表取締役

丙山二郎

被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)

乙川太郎

上記両名訴訟代理人弁護士

中村寿夫

主文

1  本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人乙川太郎の各負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、四三一八万八七一九円及びこれに対する平成一二年五月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(当審において請求を減縮した。)。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4  仮執行宣言

第2  附帯控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人乙川太郎は、控訴人に対し、一〇〇〇万円及びこれに対する平成一二年五月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  控訴人の被控訴人乙川太郎に対するその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

第3  当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり補正するほか、原判決「事実」中の「第2 当事者の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三頁一八行目<編注 本号一八二頁二段二五行目>の「怠って」を「怠り、上記交差点を漫然と時速約一六キロメートルで進行した重大な過失により」と改める。

2  原判決四頁一七行目<同一八二頁三段三四行目>の「使用しており、」の次に「本件事故は、被控訴人乙川の通常の帰宅途中時間における、通常の帰宅コースでの出来事であった。」を加える。

3  原判決五頁一三行目<同一八三頁一段二〜三行目>の「とめさせていた。」の次に次のとおり加える。

「また、被控訴人会社は、自転車通勤者に対し届け出をさせており、通勤距離が四キロメートルを超える自転車通勤の従業員には、平成一三年三月までは一定の手当を支給していたし、従業員に対し、自転車利用者のルールの遵守とマナーの向上をはかり、KY運転(危険予知・予測運転)の実施で、加害事故のゼロ化を目標としていた。」

4  原判決六頁五行目<同一八三頁一段三二行目>及び八頁二二行目<同一八四頁一段一行目>の「五四二六万一一四九円」を「いずれも「四三一八万八七一九円」と改める。

5  原判決六頁八行目<同一八三頁二段一行目>及び同一〇行目<同一八三頁二段三行目>の「四二万円」をいずれも「三九万円」と、同行目<同一八三頁二段三行目>の「一四〇〇円」を「一三〇〇円」とそれぞれ改める。

6  原判決六頁一九行目<同一八三頁二段一七行目>及び同二一行目<同一八三頁二段二〇行目>の「三五〇万円」をいずれも「三三〇万円」と改める。

7  原判決七頁二〇行目<同一八三頁三段二五行目>及び八頁四行目<同一八三頁四段八〜九行目>の「二一三七万八七八〇円」をいずれも「一六〇三万四〇八五円」と、八頁二行目<同一八三頁四段五行目>及び同四行目<同一八三頁四段八行目>の「四〇〇〇円」をいずれも「三〇〇〇円」とそれぞれ改める。

8  原判決八頁九行目<同一八三頁四段一七行目>及び同一四行目<同一八三頁四段二四行目>の「六一七〇万一四三七円」をいずれも「五六一二万六七四二円」と改める。

9  原判決八頁一〇行目<同一八三頁四段一九行目>及び同一四行目<同一八三頁四段二四行目>の「四九三六万一一四九円」をいずれも「三九二八万八七一九円」と改める。

10  原判決八頁一一行目<同一八三頁四段二一行目>の「二割」を「三割」と、同一四行目<同一八三頁四段二四行目>の「0.8」を「0.7」とそれぞれ改める。

11  原判決八頁一五行目<同一八三頁四段二五行目>及び同一八行目<同一八三頁四段三一行目>の「四九〇万円」をいずれも「三九〇万円」と改める。

12  原判決一〇頁一一行目<同一八四頁三段六〜七行目>の「②点」の次に「(別紙交通事故現場見取図(以下「本件見取図」という。)記載のとおり。以下地点を指示する場合は同図面による。)」を加える。

13  原判決一〇頁一三行目<同一八四頁三段一〇行目>の「自転車事故」を「自動車事故」と改める。

14  原判決一二頁六行目<同一八五頁一段二三行目>の「争う。」の次に改行して次のとおり加える。

「特に、控訴人の後遺障害の程度等を考慮すれば、将来の介護費用を損害として認めるのは不当であり、また傷害慰謝料及び後遺障害慰謝料の金額も過大である。

以上を考慮し、被控訴人乙川の過失割合が二割を超えないことを前提にすれば、弁護士費用を加算しても、被控訴人乙川が控訴人に賠償すべき金額は一〇〇〇万円を超えない。」

第4  当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の被控訴人乙川に対する本訴請求は、原判決が認容した限度において正当としてこれを認容し、その余は理由がなく失当として棄却すべきであり、控訴人の被控訴人会社に対する請求はこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり補正するほか、原判決中の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一三頁二〇行目<同一八五頁三段二六行目>の「被告乙川」から同二四行目<同一八五頁三段三四行目>の「進行していた。」までを次のとおり改める。

「本件事故現場の状況は本件見取図記載のとおりである。被控訴人乙川は、平成一二年五月八日午後四時五〇分ころ、仕事を終え、帰宅のため、本件自転車に乗って、国道九号線方面から安来港方面に東西に伸びる直線道路(以下「本件道路」という。)を西進中、島根県安来市新十神町<番地略>先の交通整理の行われていない変形十字路交差点(以下「本件交差点」という。その形状は本件見取図記載のとおりである。)にさしかかった。本件道路の幅員は5.5メートルないし5.7メートル、被控訴人乙川の進行方向に向かって左方の道路(以下「左方道路」という。)の幅員は5.2メートル、被控訴人乙川の進行方向に向かって右方の道路の幅員は3.6メートルであり、民家のブロック塀があったため、左方道路の見通しは困難であった。」

2  原判決一三頁二四行目<同一八五頁三段三四〜三五行目>の「司法警察員」から同二六行目<同一八五頁四段二〜三行目>の「見取図」という。)」までを「本件見取図」と改める。

3  原判決一四頁二五行目<同一八六頁一段一七行目>の「本件自転車を運転して」を「本件事故当日、あえて本件自転車に乗って本件道路を走行し、交通整理が行われておらず」と改め、同二六行目<同一八六頁一段一八行目>の「本件交差点を」の次に「時速約一六キロメートルで」を加える。

4 原判決一六頁一八行目<同一八六頁四段一〜二行目>の「自転車通勤していたこと」の次に「、本件事故は、被控訴人乙川のいつもの通勤コース途上で起きた出来事であること、被控訴人会社は、交通安全週間などに従業員にチラシを配布したり、毎年一回全従業員を集めて交通安全大会を実施するなどして交通安全意識の涵養を図っていたこと」を、「できる」の次に「。」をそれぞれ加える。

5 原判決一七頁六行目<同一八六頁四段二八〜二九行目>の「本件事故につき、」を「被控訴人乙川の本件事故当時の本件自転車の運転行為が被用者である被控訴人会社の職務執行行為そのものに属するものでないのはもちろん、その行為の外形からみても被控訴人会社の職務の範囲内の行為と認めることもできず、」と改め、同七行目<同一八六頁四段三〇行目>の「いうべきである。」の次に「本件事故が、被控訴人乙川のいつもの通勤コース途上で起きた出来事であること、被控訴人会社が、本件事故当時、自転車通勤者のために駐輪場を確保し、自転車通勤であっても、自宅から会社までの距離が四キロメートルを超える場合はバス代相当の手当を支給していたこと、被控訴人会社が、定期的にチラシを配布するなどして従業員の交通安全意識の涵養を図っていたこと等の事実を考慮しても同判断を左右するものとはいえない。」を加える。

6  原判決一八頁八行目<同一八七頁二段一四行目>の「認め」から同一四行目<同一八七頁二段二二行目>までを次のとおり改める。

「認められ、同事実によると、控訴人は、五九歳女子の平均賃金(月額二五万二三〇〇円)を基礎として、次のとおり少なくとも二五二万三〇〇〇円の休業損害を被ったものというべきである。

(計算式)

(25万2300円÷30日)×300日=252万3000円」

7  原判決一九頁二二行目<同一八七頁四段一〇行目>の「生存中、」の次に「入浴等の介助等」を、同二三行目<同一八七頁四段一二行目>の「後遺障害の」の次に「内容、」を、同二五行目<同一八七頁四段一六行目>の「となる。」の次に「この点に関する被控訴人らの主張は採用できない。」をそれぞれ加える。

8  原判決二〇頁一〇行目<同一八八頁一段一行目>の「運転していた」を「運転し、交通整理の行われていない左方道路の見通しの困難な本件交差点を漫然と時速約一六キロメートルの速度で進行して本件事故を招いた」と改める。

9  原判決二〇頁一二行目<同一八八頁一段五行目>の「しかも、」の次に「民家のブロック塀により前方交差道路(本件道路)右方の見通しが困難であるのに、」を、同一五行目<同一八八頁一段一〇行目>の「その他、」の次に「本件交差点の形状等」をそれぞれ加える。

第5  結論

よって、原判決は相当であり、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、仮執行免脱宣言の申立ては、相当でないものと認めこれを却下することとして(なお、原判決も同様の判断をしているものと解される。)、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・宮本定雄、裁判官・吉波佳希、裁判官・植屋伸一)

別紙交通事故現場見取図<省略>

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