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広島高等裁判所松江支部 平成16年(ネ)30号 判決 2004年6月18日

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

第2  当事者の主張

次のとおり訂正するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決2頁19行目の「上記同日、」の次に「控訴人Y1が」を加える。

(2)  原判決2頁21行目の「に対し、」の次に「契約番号入りの」を加える。

(3)  原判決3頁1行目の「上弁済」を「各弁済」と改める。

(4)  原判決3頁7行目、同12行目の各「Y2」をいずれも「控訴人Y2」と改める。

(5)  原判決3頁13行目の「上各分割弁済に同意し」を「上記の各分割弁済に同意したものであるから」と改める。

(6)  原判決4頁25行目の「されていない。」の後に改行して、次を加える。

「ⅲ 控訴人らは、利息制限法所定の制限利息(年15パーセント)を支払えば、期限の利益を喪失することはないにもかかわらず、本件における貸金業法17条所定の書面(以下「本件17条書面」という。甲3ないし5)には、約定利息を年29.0パーセント、利息の支払を遅滞したときは期限の利益を失う旨記載されており、これは利息制限法所定の制限利息を超過した利息を期日に支払わなければ期限の利益が失われるとの誤解を生じせしめる虚偽の内容の記載であり、したがって、本件17条書面は貸金業法17条及び同法施行規則13条の要件を満たしていない。」

(7)  原判決5頁16行目の「されている。」の後に改行して、次を加える。

「ⅳ 甲7ないし30にはいずれも「契約年月日」の記載がなく、貸金業法施行規則15条2項の規定によっても、契約年月日の記載を契約番号等の記載で代えることができるのは、「契約番号」の記載があっても受取証書に契約年月日等を記載することが不可能又は著しく困難である等の特段の事情を要するところ、本件においてはそのような事情はない。」

(8)  原判決5頁20行目の「これを争う。」の後に改行して、次を加える。

「 控訴人らの主張

本件においては、控訴人Y2は、利息制限法所定の制限利息を超える本件約定利息(年29.0パーセント)を支払わなければ、期限の利益を喪失し、一括払いをしなければならないという不利益を避けるために約定利息を支払ったものであり、このような期限の利益喪失条項は、当事者間の合意に基づくものではあるが、そのような条項に服さなければ借入れすることができない以上、利息制限法の趣旨に照らして、この約定に基づく支払は任意の支払ということはできない。」

(9)  原判決5頁23行目の「計算書」の次に「(原判決11頁として添付のもの)」を加える。

第3  当裁判所の判断

1  当裁判所も、被控訴人の請求はいずれも理由があり、これを認容すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり訂正するほかは原判決「事実及び理由」中の「第4 争点に対する判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)  原判決7頁7行目の「理由がある。」の後に改行して、次を加える。

「 また、本件のように約定の元利金の支払を怠ったときには期限の利益を喪失する旨の特約が存在する場合においても、債務者は債権者に対し、返済期日において、利息制限法所定の制限利息及び約定返済元金に充当する旨表明して、同法所定の利息及び約定返済元金を支払えば、期限の利益を喪失することはないというべきである。しかし、貸金業法17条が契約書面の記載事項を法定した趣旨は、債務者に契約内容を正確に知らしめることにより、後日の紛争発生を防止しようとしたものであるから、同条及び同法施行規則13条に定める記載内容については、当事者間の合意内容をそのまま記載することを要求しているにすぎず、貸金業法43条のみなし弁済の規定の適用がなく、利息制限法所定の制限利息を超過する部分の合意が無効とされる場合を前提とした記載までもを要求するものではないと解される。そして、本件の期限の利益喪失条項は、控訴人らと被控訴人との間の合意内容をそのまま記載しているのであるから、本件17条書面に記載の不備は存しない。」

(2)  原判決7頁16行目の「理由がある。」の後に改行して、次を加える。

「 なお、本件受取証書(甲7ないし30)には、契約番号は記載されているが、契約年月日の記載はなされていない。しかしながら、貸金業法施行規則15条2項は、当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって、同法18条1項2号(契約年月日)の記載に代えることができる旨規定しているのであり、契約番号の記載により契約年月日の記載がなくとも、弁済に係る貸金を特定するのに不足することはなく、本件受取証書に契約年月日の記載がないことは何ら受取証書(18条書面)記載の不備となるものではない。」

(3)  原判決7頁22行目の「理由がある。」の後に改行して、次を加える。

「 また、任意の支払というためには、債務者においてその支払った金額が利息制限法所定の制限利息を超過したものであることあるいは当該超過分の契約が無効であることまでを認識していることを要しないものであり、貸金業法により取得を容認されうる約定利息の支払を怠った場合に期限の利益を喪失する旨合意しても何ら不合理なものとはいえず、また、この合意により支払が強制されるということはできない。」

2  よって、原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

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