広島高等裁判所松江支部 昭和28年(う)36号 判決
公職選挙法第二五二条第三項にいわゆる情状が必ずしも犯罪そのものゝ情状に限らないことは、所論のとおりである。併しながら、選挙犯罪による処刑者に対しては、一定期間選挙権及び被選挙権を停止するのが原則であり、唯例外として、選挙権及び被選挙権を停止せず、或いは、右停止期間を短縮する場合は、専ら裁判所の自由裁量に委されていることは、右法条の体裁によつても窺うことができる。所論に鑑み、訴訟記録及び原裁判所が取り調べた証拠を精査し、本件犯罪の動機、態様、被告人と原審相被告人大串応輔との関係等諸般の事情を考量するとき、原審の刑はまことに相当であつて、又特に公職選挙法第二五二条第一項を適用しない旨を宣告しなかつたのは、その措置亦相当であるというべく、所論各点を参酌するも、右量刑及び措置を目し決して酷に失するものということはできない。論旨は採用し難い。
第二点について。
凡そ、公職の選挙が公明且適正に行われてのみ、初めて民主政治の健全な発達を期待し得ることは、更に贅言を要しない。公職選挙法の各規定を忠実に守ることは、すべての国民共通の義務であるというべく、選挙犯罪の如きは民主政治の健全な発達を阻害するまことに忌むべき害毒であるといわねばならない。さればこそ、公職選挙法第二五二条によれば、選挙犯罪による処刑者に対しては、一定期間選挙権及び被選挙権を停止するのが原則である旨規定し、唯例外として、諸般の情状を参酌し、選拳権及び被選挙権を停止せず、或いは、右停止期間を短縮する場合は、専ら裁判所の自由裁量に委したものであることは、前段において説示せるとおりである。然らば、原審において、特に公職選挙法第二五二条第一項を適用しない旨を宣告しなかつたことを以て、憲法違反であると主張する所論は、当らざるも甚しい。論旨は採用の限りでない。