大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所松江支部 昭和28年(ラ)4号 決定 1953年6月05日

抗告人 実重俊夫

相手方 前川茂男

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は「原決定を取消す。原決定末尾目録記載の不動産に対し、競売手続を開始する」との裁判を求め、右申立の理由の要旨は、抗告人は、相手方所有の右不動産に対し、根抵当権に基き競売の申立をなしたところ、原審は、右不動産については、既に松江市のため、昭和二七年九月四日、市税滞納処分による差押の登記ありとの理由を以て、抗告人の本件競売の申立を却下したけれども、公共団体の徴税事務担当者の職務執行は、動もすれば怠慢に陥り勝ちであつて、貸借関係で利害関係を有する民間人としては、右職務執行の成果につき多大の関心を有せざるを得ない。法の解釈、運用は須らく変転極まりない社会事情に即してなさるべく、滞納市税の整理を促進するためにも、抗告人の本件競売の申立は、当然これを許容すべきものであるのに拘らず、これを却下せる原決定は不当である、というに帰着する。

併しながら、本件不動産に対し、既に、松江市において、市税滞納処分として、差押をなした事実がある以上、抗告人が主張するような理由を以てしても、更に、競売手続を開始することができないことは論を俟たない。されば、これと同趣旨に出で、抗告人の本件競売の申立を却下せる原決定はまことに相当であるから、本件抗告はその棄却を免れない。

よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八四条第一項、第八九条により、主文のとおり決定をする。

(裁判長判事 平井林 判事 藤間忠顕 判事 組原政男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例