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広島高等裁判所松江支部 昭和39年(行コ)1号 判決 1965年11月26日

松江市北田町一〇四番地九

控訴人

大野賢一

右訴訟代理人弁護士

篠田嘉一郎

同市中原町二一番地

被控訴人

松江税務署長

中村竜登

右指定代理人

川本権祐

中本兼三

岡本常雄

常本一三

吉富正輝

右当事者間の昭和三九年(行コ)第一号更正決定取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二八年八月一五日、控訴人の昭和二七年度分所得税の総所得金額を六一万〇一八〇円、同税額を一八万九七五〇円、過少申告加算税額を九四五〇円、控除すべき源泉徴収額四二一円、税額合計一九万八七七〇円とした更正処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴指定代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否は、左のとおり補足する外原判決事実摘示のとおり(但し原判決二枚目表一二行目「源泉徴収額」の下に「(控除すべき分)」を挿入、九枚目裏四行目「林宗思」とあるを「林宗恩」と訂正)であるから、ここにこれを引用する。

控訴代理人は当審において、

事実上の陳述として、

原判決添付別表1ないし6の取引が、昭和二七年度中の所得として課税されるべき期間内の取引であることは認める、

と述べ、

立証として、甲第二号証を提出し、証人張春海及び控訴本人の各尋問を求めた。

被控訴指定代理人は当審において、

甲第二号証の成立は不知、と述べた。

理由

控訴人の本訴請求が理由のないことは、左のとおり訂正補足する外、原判決が理由として説示するとおりであるから、ここにこれを引用する。

一、原判決一五枚目裏二行目及び添付別表3に「林宗思」とあるを「林宗恩」に、一六枚目表一行目に「林シユンカイ」とあるを「張春海」に、二〇枚目表一二行目、同裏九行目、同一一行目に「昭和三七年」とあるを「昭和二七年」に各訂正。

二、原判決一三枚目表二行目「(A)売買差益」に属する<1>ないし<6>の項中に、それぞれ「右取引が昭和二七年度の所得として課税さるべき期間内の取引であることについては原告において明らかに争わない。」とあるを「右取引が昭和二七年度の所得として課税さるべき期間内の取引であることは当事者間に争いがない。」に訂正。

三、原判決一六枚目表八行目末尾に次の点を附加する。

控訴人は当審における本人尋問結果においても、右取引(原判決添付別表でいえば3の取引)において張春海等に一〇万円の世話料を支払つているといい、当審証人張春海は右取引において旅費等として一〇万円を受取つているという。

原判決説示の次第によつて真正に成立したと認め得る乙第二、三号証、第一一号証、第一二号証の四、原審証人中野誠一、同増田郁雄、同長安巌道の証言を総合すると、前田美都枝は本件不動産を一八〇万円で売却したこと、もつとも同人は本件不動産を担保として訴外有限会社実重商事より七〇万円を借受けていた関係から、七〇万円及びその利息分約二万円が、最終的買主である林宗恩、張清聯より直接右訴外会社に支払われたこと、要するに、残余一〇八万円が控訴人の手から前田美都枝に支払われた関係にあること(但し前田美都枝は他の債務も差引かれ、現実には少額の金員しか入手しなかつた)、一方控訴人は広島国税局員が昭和二八年六月調査した当時、本件において一三八万円の現金と一〇万円の売掛金を現実に得たことを認めていることが明らかである。即ち、控訴人は一四八万円を手中にし、一〇八万円を支払つたのであるから、四〇万円が右取引における売買差益であるということになる。張春海は右取引に関し一〇万円受領したと証言するが、同時にそれは買主である林宗恩より受領したというのであるし、控訴人が一四八万円を手中にしたという事実が動かない以上、右一〇万円受領事実の真否にかかわらず四〇万円の売買差益は動かないことになる。あるいは控訴人において、未収売掛金一〇万円の回収をあきらめ、その該当分を林宗恩をして張春海に与えしめたと想定し得ないでもないが、控訴人は原審当審本人尋問結果において、張春海に与えた一〇万円と右未収分一〇万円とは全然関係のないことを自から供述しているのであつて、この想定もなりたち得ない(張春海は昭和二七年中に一〇万円を受領したというのであるから、控訴人が売掛金未収分をこれに当てたのなら、昭和二八年六月の国税局調査に際し、一〇万円の売掛金未収分が現存するとはいわない筈でもある。)。

なお、前顕張春海の証言中には、売買代価を二〇〇万円と聞いている旨の部分があるが、それは林宗恩等が交渉の当初において切り出した希望価格であると推認できるので、右証言を以て控訴人の売却代価が二二〇万円である旨の認定は左右できない。その他当審における右証言及び控訴本人尋問結果中、さきに認定した点に反する部分は措信できないし、当審提出にかかる甲第二号証も右認定を左右できないということができる。

四、当審における控訴本人尋問結果中、前項関連事実を除くその余の原審認定事実に反する部分も措信できないし、他に右認定事実を左右するに足る証拠はない。

五、原判決二七枚目表一一行目「その結果」より同裏二行目末尾までを次のとおり訂正する。

その結果、税額合計を、右所得税額一八万九七五〇円と右過少申告加算税額九四五〇円(控訴人の確定申告には右のとおり誤りがあり、而して右申告を誤つたことにつき正当の事由がないことは、さきに認定した事実(援用する原判決認定事実を含む)にかんがみ明瞭である。)を加算し、被控訴人において認める源泉徴収額四二一円を差引し、一九万八七七〇円(一〇円未満切捨)となしたもので、もとより正当である。

よつて原判決は相当というべく、本件控訴は理由がないので、民事訴訟法第三八四条第八九条第九五条に則り主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 幸田輝治 裁判官 竹村寿 裁判官 干場義秋)

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