広島高等裁判所松江支部 昭和56年(行コ)1号 判決 1982年9月30日
島根県安来市黒井田町七〇〇番地一
控訴人
高林商事株式会社
右代表者代表取締役
高林健治
右訴訟代理人弁護士
多田紀
松江市内中原町二一番地
被控訴人
松江税務署長 難波澄雄
右指定代理人
原伸太郎
同
山根光春
同
石金三佳
同
伊藤和義
同
角満美
同
藤井哲男
同
吉岡健
同
高田資生
右当事者間の昭和五六年(行コ)第一号法人税額等更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し、昭和五二年二月二五日付でした控訴人の昭和四八年六月一日から昭和四九年五月三一日まで、同年六月一日から昭和五〇年五月三一日まで及び同年六月一日から昭和五一年五月三一日までの各事業年度並びに昭和五四年三月二九日付でした控訴人の昭和五一年六月一日から昭和五二年五月三一日まで及び同年六月一日から昭和五三年五月三一日までの各事業年度の法人税更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
との判決
二 被控訴人
主文同旨の判決
第二 当事者の主張
次に訂正・付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。
原判決五丁表三行目の「本件負担金等」の次に「のうち、親会社及び旧高林産業に支出した負担金」を加える。
同五丁表六行目の「負担金」の次に「の主要部分」を加える。
同五丁裏三行目末尾の「鳥」から四行目の「増加と」までを削除する。
同六丁裏七行目から八行目にかけての「親会社代表取締役」の次に「兼社長」を加える。
同一一丁表五行目の「負担金」の次に「の主要部分」を加える。
第三 証拠関係
当審において、控訴人が甲第四二号証を提出し、控訴人代表者尋問の結果を援用し、被控訴人が右甲第四二号証の成立は不知と述ベたことを付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求は棄却を免れないものと判断するが、その理由は次に訂正・付加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
原判決二〇丁裏二行目の「結果」の次に「(第一回)」を加え、同一一行目の「五月末頃」を「五月半ば頃」に改める。
同二一丁裏一行目の「そして」から一二行目の「られる。」までを「すなわち、右負担金は、親会社の欠損金の額に応じてその総額が増減するのみならず、各子会社の負担割合も右五項目の基準に応じて変動することになる。もっとも、右五項目の基準のうち、経営資本なるものはその具体的内容ないし算出根拠が必ずしも明らかでない。また、子会社には親会社からの出向社員はいないから、右基準にいう人件費は専ら子会社がその従業員に支払う給与等を指すことになる。また、子会社はそれぞれ親会社から固定資産(社屋等)を借り受けているが、これに対しては負担金とは別に賃借料を支払っている。」に改める。同二二丁表三行目の「消却」を「消滅」に改める。
同二二丁表一一行目冒頭から同丁裏八行目末尾までを次のとおり改める。
「原審証人井田清光の証言、原審(第一回)及び当審における控訴人代表者尋問の結果中、以上の認定に反する趣旨に解される部分は前掲その余の証拠に照らしてにわかに措信し難く、ほかに右認定に反する証拠はない。
ところで、法人税法三七条にいう寄付金とは、名義のいかんや業務との関連性の有無を問わず、法人が贈与又は無償で供与した資産又は経済的利益、換言すれば、法人が直接的な対価を伴わないでした支出を広く指称するものと解すベきことは、右法条の規定の趣旨に照らして明らかであり、本件についてこれをみれば、控訴人を含む子会社が親会社に対して支出した負担金は、親会社に生じた欠損の補填を目的として、各係争事業年度の欠損金に相当する額を前記五項目の基準によって各子会社に振り分けたものであること先に認定したとおりであるから、控訴人が親会社からこれと対価的意義を有する経済的利益の供与を受けていると認めるベき特段の事情のない限り、控訴人の親会社に対する負担金は前記法条にいう寄付金に該当するものとみるのが相当である。
そこで進んで、右特段の事情の有無につき、控訴人の主張に即して順次検討する。」
同二二丁裏九行目の「原告は」から二三丁表八行目末尾までを次のとおり改める。
「控訴人は、まず、控訴人が親会社に支出した負担金の主要部分は控訴人が親会社から五年間の約定で賃借した営業権の賃貸料である旨主張し、原審証人井田清光の証言、原審(第一回)及び当審における控訴人代表者尋問の結果中には右主張に沿う部分がある。しかしながら、前掲甲第四号証の一ないし六は、単に、控訴人が親会社との間で、各係争事業年度における具体的な負担金の額を決定し、かつ、その支払を約したことを証する趣旨の書面に過ぎず、到底右証言及び供述の裏付け資料として十分なものとはいい難いし、ほかに控訴人を含む子会社がその負担金の支払に先立って親会社との間で、親会社の営業権の賃貸借に関する契約を締結したり、営業権の価額を客観的に評価してその賃貸料を取り決めたりしたことを窺わせる客観的資料は全く見当たらず、かえって、右甲第四号証の一、二、五、六では「(親会社の)必要経費の負担金につき」なる文言が使用されていることや先に認定した負担金の支出に至る経緯、特に、子会社の一つであって、控訴人を含む他の子会社より約一年前に設立された高林工業株式会社が当初の事業年度において全く負担金を支払うことなく営業したこと及び負担金の総額が親会社の当該事業年度における欠損金の額に応じて決定され,しかも、これが事業年度毎に変動する前記五項目の基準によって各子会社に割り当てられること等の事情に鑑みると、前記証言及び供述は到底信用することができず、その他前記主張を肯認するに足りる証拠はない。」
同二三丁裏四行目の「原告代表者尋問の結果」の次に「(第一、第三回)」を、同七行目の「認められる」の次に「ところ、右の金利が金融機関からの借入れ金利等と比較して低率であったことを窺わせる証拠はない」をそれぞれ加える。
同三四丁裏七行目の「原告代表者尋問の結果」の次に「(第一回)」を加える。
同二五丁表九行目の「親会社から営業指導料」を「親会社代表者からの営業指導に対する対価」に改める。
同二五丁表一一行目の「原告代表者尋問の結果」の次に「(第一回)」を加え、同一二行目の「現常役員」を「現業役員」に改める。
同二六丁表九行目末尾から一〇行目冒頭にかけての「寄付金」の次に「損金」を加える。
よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤原吉備彦 裁判官 萩原昌三郎 裁判官 安倉孝弘)