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延岡簡易裁判所 昭和38年(ハ)286号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定要旨〕鑑定の結果が信用できないということは、再鑑定その他の方法で攻撃してその信用性を減殺すべき事項であつて、鑑定人忌避の事由とはならない。

〔決定理由〕当事者が鑑定人を忌避することができる事情とは、(鑑定の結果の忌避の場合も同様)鑑定人と当事者との関係、鑑定人と事件との関係からみて鑑定人が不誠実な鑑定をするであろうとの疑惑(民事訴訟法第三百五条後段の忌避申立の場合は鑑定人が不誠実な鑑定をしたであろうとの疑惑)を、当事者に起させるに足り、且つそれが合理的な判断によつて相当と認められる客観的事情をいうのであつて当事者が単に主観的に不誠実な鑑定がなされるであろう(民事訴訟法第三百五条後段の場合は前同旨)と推測するような事情ではないと解する。

原告から提出された、鑑定人忌避申立書および福島禔作成名義の事実申述書の各記載によると、(一)原告は鑑定人大原茂三から提出された鑑定書を閲覧してその内容に承服しかねる点があつて福島禔と共に大原茂三を訪問して鑑定方法などについて色々とただしたこと(二)大原茂三の答えに満足できなかつた原告は更にこと細かく質問を繰り返したが、そのうち両名の間に感情のゆきちがいなどができて大原茂三から「たつた間口二〇センチメートル云々」の発言がなされたこと(三)右大原茂三の発言はいわゆる「売り言葉に買い言葉」であつてこれを冷静に考えるとむきになつて裁判所にまで持ち出す程の重大なことではないこと、などの事実を看取することができる。以上の事実と当裁判所が「本件忌避申立までの経過の要旨」として説明した鑑定人から忌避申立に至るまでの経過、鑑定人大原茂三の職業社会的地位(冒頭説明引用)などから合理的に判断すると、原告主張の事情は大原茂三の鑑定が誠実になされたことに疑惑を起すに足る相当な客観的事情と認めることはできずただ単に原告が主観的に大原茂三の鑑定が不誠実に行われたであろうと推測するに過ぎない事情と認める。

また原告の忌避申立事由が、鑑定人大原茂三の人格を信用できないから鑑定の結果も信用できないとする趣旨をもふくんでいるとしても、鑑定の結果を信用することができないとして鑑定人の忌避(鑑定の結果の忌避)が許されないことは当裁判所が忌避制度に関する見解において説明したとおりである。

鑑定の結果を信用できないことと、誠実に鑑定を為すことを妨ぐる事情とはその本質を異にする。

鑑定の結果が信用できないというのは、鑑定の方法に誤りがあるとか、鑑定の学識経験技術が足りないためその鑑定の結果が客観的事実に合致せぬなどのことを意味しこのような場合には当事者は再鑑定その他の方法でこれを攻撃して鑑定の結果の信用性を減殺すべき事項であつて鑑定人忌避の事由とはならない事情である。(守田次人)

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