彦根簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金二万五千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は建築用金具の製造販売を営む者であるが、その製品を買入れて貰つている得意先の細居忠一の依頼により、同人または同人の得意先の者において、夫々不特定多数人に観覧せしめることの情を知りながら、右細居を介して、昭和四十二年三月二十九日頃細居の得意先なる中邑源三郎に対し、自己所有の男女性交の情景並に男女性器を露骨に撮影した八ミリ映画フィルム一〇巻(カラー三巻、白黒七巻)を貸与し、同人をして、翌三十日頃の午後九時頃より同十一時半頃までの間、滋賀県愛知郡愛東村大字上岸本七三五番地、広瀬友治郎方二階において八ミリ映写機を使用して、前記フイルム全部を部屋の襖または白布に映写し、これを小倉幸一外十数名に対し観覧させ、もつて猥せつ図画を公然陳列するに至らしめ、よつて右中邑の犯行を幇助したものである。
(証拠の標目)(省略)
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は、被告人の警察や検察官に対する供述及び細居忠一の検察官に対する供述は、いずれも細居忠一の警察における当初の供述(昭和四二年七月二一日付供述調書)が基礎となり、これに符節を合せたものと推察されるところ、細居は、同供述において撮影機まで被告人より借受けたと、その詳細に亘り事実に反する供述をしており、このことから見ても同人の当初警察における供述はすべて信を措くことができない、従つて、これに符節を合せたと考えられる検察官の被告人及び細居に対する供述調書は信用できない。当公判廷における細居並に被告人の各供述が本件の真相なりと信ずる、そうだとすると被告人には正犯行為の認識がなく、これを幇助する意思がなかつたのであるから幇助罪は成立しない。
被告人において右認識があつたとしても本件は細居が被告人より借りた判示フイルムを正犯者中邑源三郎に転貸したものであつて、被告人は幇助犯を幇助したものであり、従犯の処罰を規定する、刑法第六二条は幇助犯を幇助した、いわゆる間接従犯の処罰を規定していない、よつて被告人は無罪であると主張する。
ところで、検察官に対する細居忠一及び被告人の各供述調書につき検討するに、その供述内容はいずれも不自然乃至不合理の点なく更に証人細居忠一の当公判廷における供述を照し合せるとそれぞれ任意に当時の情況を述べたものと認められ、事実性並に任意性を疑うべき点はない。たとえ細居が当初警察の取調べに対し、撮影機も被告人から借りたと事実に反する供述をしたとしても、この一事により同人のその後における供述は総べて信用できない訳のものではない、そして検察官に対する細居忠一及び被告人の各供述調書によると本件フイルムが細居またはその得意先の者において、不特定多数人に観覧せしめるであらうことを、当時被告人は知つて貸与したことが認められる、そうすると被告人において右得意先の氏名を知らなかつたとしても、その正犯が犯行をなすことを知つてその実行を容易ならしめたものというべきであり、従犯としての責を負うべきである。
なお、弁護人は本件は細居が被告人より借りた前記フイルムを正犯者中邑源三郎に転貸したもので、被告人は幇助犯の幇助であり、処罰されないというのであるけれども、前示説明の如く被告人は細居または同人の得意先の者においてこれが正犯行為の実行されることの情を知つて貸与したのであるから、正犯行為を直接幇助したものというべきであり、弁護人主張の成否を論ずるまでもなく、この主張は採用しない。
(法令の適用)
刑法第一七五条 第六二条第一項 第六三条 第六八条 第四号
罰金等臨時措置法第二条第三条
刑法第一八条
刑事訴訟法第一八一条第一項本文