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徳島地方裁判所 事件番号不詳〔1〕 判決

右の者に対する法人税法違反被告事件につき当裁判所は檢事志保田実関與の上審理を遂げ左の通り判決する。

主文

被告人加茂染色合名会社を罰金百万円に処す。

被告人長尾義光を懲役二月に処す。

但し被告人長尾義光に対し本判決確定の日より一年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告会社及被告人長尾義光の連帶負担とする。

理由

被告人加茂染色合名会社は被告人長尾義光等一族の出資により德島市矢三町字東張三百九十番地に営業所を置き各種纖維及び纖維製品の染色加工等を営む同族会社であり

被告人長尾義光は昭和十九年六月二十七日右会社の社員並びに共同代表社員の一員となり昭和二十二年十月十六日右代表社員のみを罷め昭和二十三年十一月四日再び共同代表社員の一員に加わつたが実際においては右社員となつて以来今日まで引続き同社の実質的な最高責任者として経営の実権を掌握してきたものであるところ

被告人長尾義光は被告会社の業務に関し昭和二十二年六月頃池田三郞という者の紹介により被告会社傍系会社である德島市佐古町五丁目一番地所在長尾産業株式会社事務所において兵庫県西脇町染色織物機械器具部品商朝井機料店主朝井伊之助との間に被告会社所有の織機六十四台外七点(記帳価格一万六百五十四円)時価評価格三百五十三万四千五百四十五円のものと右朝井所有の(但し同人が将来入手すべき物をも含む)綿糸精練用ギヤー外四点評価額八十二万四千五百円の染色機械とを交換し右各評価金額を互に相手方に支拂うべき旨の契約を締結し同年八、九月頃数回に亘り右朝井より右織機等の評価額三百五十三万四千五百四十五円の送金支拂を受けたる後右染色機械の評価額八十二万四千五百円を右朝井に支拂い且つ前記紹介者池田三郞に対する謝礼として七万円を支出した結果收支差引二百六十四万四十五円の利益を得たのに拘らず右金額に対する法人税を免れようとの意思の下に故意に右利益金額を被告会社の正規帳簿に記帳せず且つ右收受金額を被告会社の名義でなく同社員長尾伝蔵、同社使用人稻垣一雄名義を以て四国銀行德島支店に預金させて右利益を秘匿した上昭和二十三年九月一日德島税務署において被告会社の昭和二十二年七月一日より昭和二十三年六月三十日に至る間の事業年度分の確定申告を為すに当り却て当期損失金九万四千六百二十八円である旨虚僞の記載をした決算報告書を右税務署長に提出して以て詐僞その他不正の行為により右利益金二百六十四万四十五円から損金九万四千六百二十八円を差引いた所得額二百五十四万五千四百十七円に対する法人税百三十九万四千二百五十四円を免れたものである。

証拠

(一)  判示冒頭記載の被告会社の内容及び被告人義光の同会社における地位については

一、被告会社の商業登記簿謄本

一、当公廷における被告人義光の供述

(二)  被告人義光が被告会社の業務に関し判示の如く朝井伊之助と機械類に関する取引をなし、判示の如く経理したことは

一、檢察事務官作成の朝井伊之助の第一回供述調書

一、四国銀行德島支店長の回答書

一、被告会社の計算報告書

一、被告会社の原簿(刑第一号証)

一、当公廷における被告人義光の供述

(三)  被告会社が判示の如く申告したことは

一、法人税決定等処理決議書写中確定申告書写(刑第六号証)

一、被告会社の決算報告書(記録添附分)

一、当公廷における被告人義光の供述

(四)  被告会社逋脱税額が判示金額であることは

一、登記簿謄本により認めうる被告会社の出資金が六万円であること

一、中間決算報告書(刑第五号証)被告会社原簿(刑第三号証)により認めうる被告会社の法定積立金が二千六百円であること

一、法人税決定処理決議書写中確定申告書写(刑第六号証)により認められる税金引当金が七千三百九十一円であること

一、法人税決定等処理決議書(刑第六号証)により認められる未納税金が九千七百六十一円であること

以上により認められる資本金額が六万二百三十一円であること、前顯認定に係る朝井伊之助との間の取引による收入金員及び前顯被告会社の決算書中の欠損金を基礎として法人税法の規定により税額の算出せられる算数上の結果

(五)  被告人義光に判示の如く不正行為による逋脱の犯意のあつたことについては

一、前掲(二)の各証拠により認定できる朝井との契約が單純な交換でなくして一応金銭を以つて差額を決算している点、他人名義を以て銀行預金をなし、更に他の目的に流用したこと並に前認定の如く経理したこと

適條及び量刑について

被告会社は昭和二十二年七月より昭和二十三年六月迄の事業年度に於ては何等事業経営を為さなかつたのであつて、本件秘匿所得も畢竟資産の評価益にすぎないものである、殊に資産の評価益については会社経理の巧拙により、課税非課税の不合理な現象が生ずるものであり、従つてシヤウプ税制報告書によるも資産の再評価益に対する課税につき精しく檢討しその税率については低率に課税すべきことを勧告している点より考えても被告人等の所為につき深くその非を追及すべきでなく更に其の後被告会社において前敍法人税は固より加算税追徴税の納入をも完了していることを考慮するときは税源を枯渇せしむるが如き量刑を以つて臨むの要はないと考える。仍て被告会社に対しては法人税法第五十一條第四十八條第一項、罰金等臨時措置法第二條、刑法第六條第十條を適用して罰金百万円に処し

被告人義光に対しては法人税法第四十八條を適用して懲役二月に処し、尚刑法第二十五條を適用して一年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については刑事訴訟法第百八十一條を適用して被告人両名をして連帶して負担せしむべきものとする。

檢察官は被告会社の普通所得金額及び超過所得の基準となる普通所得金額が何れも三百三十四万一千五百二十九円でありこの内被告人等の犯意のない所謂過誤による脱漏金七十九万六千百十二円より被告会社の当期損金九万四千六百二十八円を差引いた七十万一千四百八十四円の所得の上積みとして被告の秘匿利益二百六十四万四十五円に対して算出した法人税額百四十五万二千二十四円を逋脱したと云うけれども被告人等においては右秘匿利益を除外すれば被告人等の過誤により当期損金九万四千六百二十八円であると経理したものであるから被告人等の不正行為による逋脱の責任は右秘匿金より損失金を差引いた金額二百五十四万五千四百十七円について存するものであり且その税額算出も脱漏所得の下積みとして計算すべきものであるから本件公訴に係る被告人等の責任は判示の限度にとどまると解するを相当とする。

(裁判官 村崎満)

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