徳島地方裁判所 平成元年(わ)87号 判決 1989年6月28日
本店の所在地
徳島県阿南市津乃峰町長浜二六四番地二
岩浅建設株式会社
右代表者代表取締役 岩浅英生
本籍及び住居
徳島県阿南市津乃峰町長浜二六四番地二
会社役員
岩浅昌
昭和五年四月九日生
右被告会社及び被告人に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官竹内司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社岩浅建設株式会社を罰金一五〇〇万円に、
被告人岩浅昌を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人岩浅昌に対し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社岩浅建設株式会社は、徳島県阿南市津乃峰町長浜二六四番地二に本店を置き、土木建築工事の請負及び設計監督等の業務を営むもの、被告人岩浅昌は、同会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していたものであるが、同被告人は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注費を計上して簿外預金を蓄積するなどの方法で所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年七月一日から昭和六一年六月三〇日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が二八〇一万八八〇〇円であり、これに対する法人税額が一〇六八万一六〇〇円であるにもかかわらず、同年九月一日、同県同市富岡町滝の下四番地の四所在の所轄阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇〇七万一四九九円であり、これに対する法人税額が二九一万〇六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって右不正行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額七七七万一〇〇〇円を免れ、
第二 昭和六一年七月一日から昭和六二年六月三〇日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が七七四二万一五七二円であり、これに対する法人税額が三一一六万一四〇〇円であるにもかかわらず、同年八月三一日、前記阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇四〇万三八三七円であり、これに対する法人税額が三〇一万三八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって右不正行為により、正規の法人税額と右申告税額との差額二八一四万七六〇〇円を免れ、
第三 昭和六二年七月一日から昭和六三年六月三〇日までの事業年度における右会社の実際の所得金額が五〇三八万四三三四円であり、これに対する法人税額が一九九〇万一八〇〇円であるにもかかわらず、同年八月三一日、前記阿南税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一四四万五五九七円であり、これに対する法人税額が三五四万七四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって右不正行為により正規の法人税額と右申告税額との差額一六三五万四四〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人岩浅昌の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書八通
一 被告人岩浅昌作成の申述書
一 金田信子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書一五通
一 山本博叔、中野礼香(二通)、井利元敏夫、鈴木茂夫、日下丈義、佐坂和寛、楠本昭、岩浅英子及び金田信子(二通)の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 岸野信之、尾崎仁美(二通)、幸田美恵子、山本茂樹、野村直実、岩浅卯市、青木廣三郎、吉田功及び谷中勝信作成の各申述書
一 大蔵事務官作成の告発書、簿外利益調査書、完成工事高調査書、材料費調査書、労務費調査書、外注費調査書、法定福利費調査書、福利厚生費調査書、消耗品費調査書、修繕費調査書、賃借料調査書、水道光熱費調査書、燃料費調査書、補償費調査書、事務用品費調査書、通信費調査書、雑費調査書、役員報酬調査書、役員賞与調査書、給料手当調査書、租税公課調査書、交際接待費調査書、受取利息調査書、有価証券売却益調査書、固定資産売却益調査書、雑収入調査書、固定資産売却損調査書、役員賞与の損金不算入額調査書、交際費損金不算入額調査書、損金の額に算入した県民税利子割額調査書、受取利息(その他所得)調査書及び役員報酬(その他所得)調査書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書三通(自昭和六〇年七月一日至昭和六一年六月三〇日のものは判示第一の事実、自昭和六一年七月一日至昭和六二年六月三〇日のものは判示第二の事実、自昭和六二年七月一日至昭和六三年六月三〇日のものは判示第三の事実)
一 押収してある岩浅建設株式会社の法人税確定申告書三綴(平成元年押第二九号の一ないし三、自昭和六〇年七月一日至昭和六一年六月三〇日のものは判示第一の事実、自昭和六一年七月一日至昭和六二年六月三〇日のものは判示第二の事実、自昭和六二年七月一日至昭和六三年六月三〇日のものは判示第三の事実)、同メモ書等二綴(同号の四、六)、同阿波(阿南支店)と題記されたメモ書(同号の五)、同振替伝票及びメモ書一綴(同号の七)及び同経費明細帳(同号の八)
(法令の適用)
被告人岩浅昌の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるので、同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとし、被告会社岩浅建設株式会社に対しては、法人税法一六四条一項、一五九条により、それぞれその罰金刑を科すべきところ、刑法四五条前段、四八条二項により、その合算額の範囲内で同被告会社を罰金一五〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 山本恵三)