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徳島地方裁判所 平成13年(行ウ)23号 判決 2003年12月26日

主文

1  第1,第2事件

第1,第2事件原告らの請求をいずれも棄却する。

2  第3事件

第3事件原告らの訴えを却下する。

3  訴訟費用は,第1ないし第3事件原告らの負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  第1事件

(1)  第1事件原告らが,別紙一覧表1の各原告に対応する「正規職員として扱われべき時期」欄記載の時期以降,第1事件被告において,地方公務員法22条1項に基づいて採用された職員たる地位にあることを確認する。

(2)  第1事件被告は,第1事件原告ら各自に対し,それぞれ別紙一覧表1の各原告対応する「差額合計」欄記載の各金員及びこれに対する平成14年1月5日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。

2  第2事件

(1)  第2事件原告らが,別紙一覧表2の各原告に対応する「正規職員として扱われるべき時期」欄記載の時期以降,第2事件被告において,地方公務員法22条1項に 基づいて採用された職員たる地位にあることを確認する。

(2)  第2事件被告は,第2事件原告A,同B,同C,同D,同E及び同Fに対し,それぞれ別紙一覧表2の各原告に対応する「差額合計」欄記載の各金員及びこれに対する平成15年7月5日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。

3  第3事件

第3事件被告は,第3事件原告らに対し,別紙一覧表1,2の各原告に対応する「正規職員として扱われるべき時期」欄記載の各日付をもって,地方公務員法22条1項に基づく職員として採用しなければならない。

第2事案の概要

本件は,地方公共団体である第1,第2事件被告鳴門市(以下「被告市」という。)において臨時職員として勤務していた第1ないし第3事件原告ら(以下「原告ら」という。)が,被告市による原告らの臨時的任用は地方公務員法に反する違法な任用であるところ,これまでの被告市における臨時的任用の運用に照らし,各任用の日から一定期間経過した時点で正規職員として正式任用されたものと扱うのが相当であるとして,被告市に対し,正規職員たる地位の確認及び正規職員と臨時職員の給与差額相当額の支払を求めるとともに,第3事件被告鳴門市長G(以下「被告市長」という。)に対し,正規職員としての採用を求める事案である。

1  争いのない事実

原告らは,いずれも,別紙一覧表1,2記載のとおり,平成7年から平成11年までの間に,被告市から地方公務員法22条5項に基づく臨時的任用により採用され(なお,被告市は人事委員会を置いていない。),その後も任期の1年ごとに臨時的任用が繰り返され,現在に至るまで,被告市の運営する福祉施設,衛生センター等の施設において,労務員,庁務員等として現業業務に従事しているものである(現在原告らの従事している職場・職種は,同表1,2の各「職欄」記載のとおりである)。

2  争点

本件の争点は,①原告らは被告市の正規職員としての地位を有するか否か(正規職員たる地位の存否),②被告市長は原告らを正規職員として任用すべき義務を負うか否か(正規職員として任用すべき義務の存否)である。

(原告らの主張)

(1) 争点①(正規職員たる地位の存否)について

被告市においては,かねてから,衛生センターにおける清掃業務や福祉施設における給食理業務等,継続的かつ恒常的な現業業務に従事する職員を採用するに当たり,本来であれば正規職員として任用すべきところ,職員の欠員状態を解消するとともに人件費を抑制するために,臨時職員として任用した上で,その後一定期間勤務した臨時職員を例外なく正規職員として任用するという取り扱いがなされており,いわば,臨時的任用は正規職員として任用するための一過程として位置づけられてきた。そして,このような取り扱いは,臨時的任用の要件を定める地方公務員法22条5項に違反する脱法行為であるところ,その違法状態を解消する方策として,被告市と鳴門市の職員団体(組合)との間で,臨時職員を一定期間内に正規職員化する旨の合意が成立し,それに従った運用がなされ,上記取り扱いは慣行化していた。

原告らも,上記労使間の合意及び慣行に基づき,被告市において,一定期間(約3ないし4年)経過後に正規職員として採用されることを前提として,形式上は臨時職員として採用されたが,採用後は,正規職員と同じ恒常的な職務に従事してきたものであるから,被告市との間で,おそくとも臨時的任用から4年経過した時点で原告らを正規職員として取り扱うことによって臨時的任用による違法状態を解消する旨の合意が成立していたということができる。

したがって,被告市における原告らの任用は,地方公務員法22条5項に基づく臨時的任用としては,違法,無効となるが,同条1項に基づく正規職員としての任用とみれば,適法なものとみなすことができる(違法行為の転換)。

また,原告らは,臨時的任用から3ないし4年以内には正規職員となるべき地位にあるから,遅くとも4年を経過した時点で,臨時的任用による瑕疵は治癒されたことになり,その時点において正規職員たる地位を取得することになる(瑕疵の治癒)。

よって,原告らは,被告市に対し,それぞれ①臨時的任用から4年を経過した日(別紙一覧表記載1,2の「正規職員として扱われるべき時期」欄記載の日)以降,地方公務員法22条1項に基づいて採用された正規職員たる地位にあることの確認を求めるとともに,②同日以降の正規職員と臨時職員の給与の差額(同表1,2の「差額合計」欄記載の各金員)の支払を求める。

(2) 争点②(正規職員として任用すべき義務の存否)について

被告市長は,上記のとおり,地方公務員法の脱法行為により,原告らを臨時職員として採用しながら現実には正規職員と同じ業務に従事させていたのであるから,労使間の合意又は慣行に基づき,原告らを臨時職員として任用してから4年を経過した時点で正規職員として任用し,もって上記脱法状態を改める義務がある。他方,原告らは,被告市長の上記脱法的措置により,臨時職員として極めて不安定な地位にあり,正規職員としての地位が認められなければ,他に適切な救済手段はないことも明らかである。

よって,原告らは,被告市長に対し,原告らをそれぞれ別紙一覧表1,2の「正規職員として扱われるべき時期」欄記載の各日付をもって,地方公務員法22条1項に基づく正規職員として採用することを求める。

(被告らの主張)

(1) 争点①(正規職員たる地位の存否)について

原告らの従事する現業業務は,いずれも,行政需要の増減に対して直ちに正規職員を増減員することが困難な状況の中で,在任期間を限定している職務であって,民間委託,民間移管等行政組織の改革に柔軟に対応するための臨時的な職務であるから,このような職務について臨時的任用を用いたとしても,原告らが主張するような脱法行為には当たらない。

地方公務員法22条1項による正規職員の任用は,競争試験又は選考を経た上で行政行為として任命権者による正式任用への任命行為があってはじめて効力が発生するものである。これに対し,同条5項の臨時的任用は,正規職員の任用と比較して厳格な手続を必要としているものではなく,両者は全く別個の任命行為である。したがって,原告らは,いずれも臨時職員として任用されたにすぎず,正規職員として任用されたわけではないから,上記臨時的任用を正規職員としての任用とみることはできない。また,その後,原告らが臨時的職員として職務を遂行したことをもって正規職員としての能力の実証がなされたとはいえない上,正規職員の任用行為もない以上,一定期間経過後に当然に正規職員として任用されたものとみることはできない。

(2) 争点②(正規職員として任用すべき義務の存否)について

正規職員としての任用を求める訴訟は,いわゆる無名抗告訴訟としての義務付け訴訟に当たるところ,かような訴訟は,三権分立に反するとともに,行政庁の第一次的判断権を侵害することになり許されない。たとえ,このような訴訟が許されるとしても,本件では,被告市において,原告らを正規職員として任用すべきか否かは,任命権者である被告市長の裁量に属する事項であって任用すべき義務はない上,原告らの救済は慰謝料その他金銭賠償により図ることも可能である以上,被告市長に対して原告らの正式任用を求めることはできない。

第3当裁判所の判断

1  前記争いのない事実に加え,証拠(甲1ないし9,甲10の1ないし6,甲11ないし14,甲 20の1ないし8,乙1ないし3,証人H,証人I,証人J,証人K,証人L)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。

(1)  被告市は,かねてから,競艇事業の収益からの繰入金に大きく依存し,福祉,教育,環境等多様な事業を直営で実施してきた結果,行政組織が肥大化し,他の地方自治体と比較して多くの職員を擁していたため,昭和30年代ころから,人件費抑制のため,被告市の運営している学校,福祉施設,衛生センター等の施設において,現業業務(単純労務)に従事する職員に欠員が生じたときに正規職員の代わりに臨時的任用により臨時職員を補充していた。そして,被告市は,上記臨時的任用に当たり,臨時職員を適性検査などにより採用し,かかる臨時職員を上記施設において本来正規職員が行うべき恒常的な現業業務(単純労務)に従事させた上,任期の1年毎に臨時的任用を繰り返しながら,定数条例の定める定数枠や予算状況を勘案して立てた正規職員の採用計画に基づき,一定期間勤務した臨時職員のうち勤続期間の長い者から順次,選考手続を経て正規職員として任用していたものである。このような取り扱いのため,上記施設において,臨時的任用を受けることなく,直ちに正規職員として任用された職員はほとんどおらず,いわば,臨時的任用は,正規職員として任用するための一過程として運用されていた。

(2)  被告市は,昭和60年代ころまでは,上記のとおり,臨時的任用により採用した臨時職員を2ないし3年以内に正規職員として任用していたが,その後,競艇事業からの繰入金及び税収の減少による財政状況の悪化により,臨時職員の正規職員への任用が次第に遅れるようになり,臨時 的任用から3年経過しても正規職員として任用されない職員が増加した。

(3)  そのため,被告市の職員団体である鳴門市従業員労働組合(なお,原告らはいずれも同組合に加入している。)は,平成7年から平成9年にかけて,被告市に対し,臨時職員の期間を3年とし,正規職員への任用が遅れている臨時職員を早急に正規職員に任用するよう要求した。この要求に対し,当時の市長のMは,当初,適性検査により任用された平成7年4月現在の臨時職員については定数枠内の範囲内で随時正規職員に任用するよう努める旨表明していたが,その後,被告市の人件費比率が全国で最も高く,職員数を増加させられない状況となったため,臨時職員の正規職員への任用は確約できず,その採用者数は退職者数が確定してから決定する旨回答し,上記見解を改めた。

(4)  また,被告市は,平成10年6月に策定した「鳴門市行政改革大綱」において,今後,肥大化した人件費の抑制を最重要課題として取り組むこととし,職員数の減員に努める旨を示した。

(5)  その後,平成11年4月に上記Mの後任として被告市長に就任したGは,就任後まもなくして,被告市の全ての現業職場において正規職員を一般公募により競争試験に基づいて採用する旨表明した。これに対し,原告らの所属する鳴門市従業員労働組合は,今後任用する臨時職員について競争試験を実施するのは反対しないが,原告らをはじめ既に任用されている臨時職員については,それまでの労使慣行に従って正規職員として任用すべきである旨異議を述べた。そこで,被告市長は,上記要求を考慮した上で,競争試験実施に当たり,臨時職員として勤務していた者については,その勤続年数及び勤務成績に応じて加点することとし,その配点基準を示した。鳴門市従業員労働組合も上記提案を了承し,被告市長に対し,原告らをはじめ未だ正規職員に任用されていない臨時職員について早急に上記試験を実施して正規職員に任用するよう要請した。

(6)  ところが,被告市は,平成11年度から競艇事業の繰入金の激減等により財政状況が急激に悪化した結果,人件費削減のため,平成12年度以降,一部の職種を除き,正規職員の採用を控えるようになった。そのため,原告らは,現在に至るまで,正規職員として任用されることなく,任期の1年毎に臨時的任用が繰り返されている。なお,被告市は,現在も財政状況が改善せず,近い将来財政再建準用団体に転落する可能性がある。

2  争点①(正規職員たる地位の存否)について

(1)  地方公務員法22条2項以下において定められている臨時的任用制度は,同法17条の正式任用の特例であり,被告市のように人事委員会を置かない地方公共団体では,同法22条5項により,緊急に職員を採用する必要がある場合又は臨時の職(存続期間が暫定的な職)に関する場合に限られ,その任用期間も引き続いて1年をこえて任用することはできないとされている。しかるに,前記のとおり,被告市は,これまで肥大化した人件費を抑制する目的で,その運営する学校,福祉施設,衛生センター等の施設において,本来正規職員が行うべき恒常的な労務に臨時職員を従事させていた上,臨時的任用を繰り返すことにより同一の臨時職員を1年を超える長期間にわたり任用し,その後,一定期間勤務した臨時職員を順次正規職員に任用していたものであって,被告市において臨時的任用は正式任用のための一過程として運用されていた。このような被告市の人事行政は,前述の地方公務員法の規定する臨時的任用制度の趣旨に反するものであって極めて不適当な運用というべきである。

(2)  そして,原告らは,このような運用の下で,臨時職員として任用されながら,正規職員と同様の労務に従事してきたものであるから,いずれは正式任用されると期待したことが無理からぬものとしても,被告市から正式任用の手続を経てその任用を受けない限り,正規職員たる地位を得ることはないと解する。その理由は,次のとおりである。

ア 地方公共団体における職員の任用行為のうち採用行為は,公法的規律に服する公法上の勤務関係を新たに設定する行為であるから,その法的性質は,行政庁が公益目的のためになす行政行為(ただし,相手方の同意を要する。)と解するのが相当であり,それゆえ,採用行為の内容は,法律によって明確に定められ,当事者間の合理的意思解釈によってその内容を変容させることはできないというべきである。そして,正規職員の採用(正式任用)は,欠員の存在を前提として定数条例で定められた枠内でなされるものであり,地方公務員法17条ないし21条に従って競争試験又は選考による厳格な手続を経た上で,任命権者による正式任用の任命行為があってはじめて効力が発生するものであって,採用後はその身分は原則として保障される(同法27条2項)。これに対し,臨時職員の採用(臨時的任用)は,定数とは関係なくなされる短期間の任用であり,任用について高度の能力の実証を必要としないため,競争試験や選考による厳格な手続によらずになされるものであり,採用後もその身分は原則として保障されていない(同法29条の2第1項)。このように,地方公務員法の定める正式任用と臨時的任用は,性質を異にする別個の任用行為である。

この点,原告らは,前記のとおり,いずれも正式任用としての競争試験又は選考による手続を経ることなく,臨時的任用により採用された職員であり,採用後も賃金等の勤務条件は臨時職員として取り扱われていたのであるから,たとえ,従事していた職務の内容が恒常的な業務であったとしても,かかる臨時的任用について,別個の任用形式である正式任用の性質を有するものとみることは,前述の行政行為たる職員任用制度に反し,許されないというべきである。

イ また,地方公務員法22条6項によれば,臨時的任用は,正式任用に際していかなる優先権をも与えるものではないと規定されているところ,その趣旨は,臨時的任用は厳格な能力の実証を経たものではないから,正式任用されるためには改めて所定の能力の実証を競争試験又は選考によって行わなければならないことにある。そして,前記のとおり正式任用とは別個の任用行為である臨時的任用について,あえてこのような規定が設けられたのは,臨時的任用がとかく安易に用いられ,常勤的臨時職員が厳格な能力の実証も経ることなく正式任用されることがあるため,このように正式任用が不適正,不公平に行われるようになることを防止しようすることにあるものと解される。

かかる規定の趣旨に照らせば,前記のとおり,被告市による不公正な人事行政の下で,原告らがこれまで繰り返し臨時的任用を受け,長期にわたり,被告市の恒常的な業務に従事していたとしても,これをもって,正式任用のための能力の実証を経た選考手続があったものとはいえない上,臨時職員が一定期間経過後に何らの手続も経ずに正規職員の地位を取得することは,臨時的任用に正式任用の優先権を与えないとした前記規定に反する結果となる。したがって,原告らは,被告市より,別途正式任用の手続を経てその任命行為がなされない限り,その臨時職員たる身分の性質が,正規職員の身分に転化することはないというべきである。

(3)  これに対し,原告らは,被告市とその職員団体との間で,臨時職員を一定期間経過後,正式任用するとの合意が成立し,その労使合意が慣行化していたところ,その合意及び慣行を前提として臨時職員として任用されたから,被告市との間で一定期間経過した時点で正規職員として取り扱われる旨の合意が成立していたと主張する。

しかし,被告市と職員団体との間でたとえ上記のような合意が存在していたとしても,そもそも地方公共団体の職員団体は,法的拘束力のある団体協約を締結する権利を有していない(地方公務員法55条2項)上,正規職員の任用は,地方公共団体の管理及び運営に関する事項であって交渉の対象とすることはできない(同条3項)から,上記合意は,何ら法的効力を有するものではない。

また,前記のとおり,臨時職員を恒常的業務に従事させた上,一定期間経過後,競争試験や選 考による厳格な能力の実証によることなく正規職員に任用するという運用は,地方公務員法の定める臨時的任用制度に反するものであるから,かかる違法な運用を前提とする原告らの期待を法的に保護することは困難である。そして,原告らに対し,長期間にわたり,そのような期待を抱かせた被告市の行政上の責任は厳しく批判されるとしても,前記のとおり,行政行為たる任用行 為の内容を当事者の意思により変容させることはできないから,原告らの臨時職員たる地位が,地方公務員法22条6項に反して一定期間経過後当然に正規職員の地位に転化すると解することはできないのであって,原告らの主張する「違法行為の転換」の理論や「瑕疵の治癒」の理論を採用することはできない。

(4)  以上によれば,原告らは,正式任用を受けていない以上,正規職員たる地位を有するものではない。

3  争点②(正規職員として任用すべき義務の存否)について

(1)  原告らの請求のうち,被告市長に対し,原告らを正規職員として任用すべきことを求める請求は,行政庁に一定の行政行為を求める,いわゆる義務付け訴訟に当たるところ,このような訴訟は,行政事件訴訟法の定める抗告訴訟の類型に含まれないものであり,行政庁の第一次的判断権 を侵害するおそれのあるものであるから,行政庁が処分をなすべきことについて法律上羈束されており,行政庁に自由裁量の余地が全く残されていないためにその第一次的判断権を重視する必 要がないと認められ,かつ,事前の審査を認めなければ回復しがたい損害が発生するおそれが大きく,事前救済をなすべき緊急の必要性がある場合に限り,許されると解する。

(2)  これを本件についてみると,地方公共団体において,職員の正式任用をすべきか否かは,地方公務員法の規定に従う限り,任命権者の自由な裁量に属する事項である上,被告市におけるこれまでの臨時的任用の運用を考慮したとしても,原告らにおいて正式任用を要求する権利又はそれを期待する法的利益を有するものでないことは前述のとおりであり,他方,被告市においても,厳しい財政状況のもと,肥大化した人件費を削減するために職員の任用を控えることに合理性があるといえるから,任命権者である被告市長において原告らを正式任用すべき義務がないことは明らかである。

(3)  以上によれば,原告らの上記請求は,義務付け訴訟の適法要件を満たしていないから,不適法な訴えというべきである。

第4結論

よって,原告らの本件請求のうち,被告市に対して正規職員の地位確認及び給与差額相当額の支払を求める請求(第1,第2事件請求)はいずれも理由がないから棄却することとし,被告市長に対して正規職員としての採用を求める請求(第3事件請求)に係る訴えは不適法であるから却下することとする。

(裁判長裁判官 村岡泰行 裁判官 古田孝夫 裁判官 井出弘隆)

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