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徳島地方裁判所 平成17年(モ)10147号 決定 2006年8月10日

徳島県●●●

申立人(原告)

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訴訟代理人弁護士

島尾大次

東京都千代田区麹町5丁目2番地1

相手方(被告)

株式会社オリエントコーポレーション

代表者代表取締役

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訴訟代理人弁護士

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主文

1  相手方は,本決定送達の日から14日以内に,別紙文書目録記載の文書のうち,平成5年3月13日より前の金銭消費貸借についての文書を提出せよ。

2  申立人のその余の申立てを却下する。

事実及び理由

1  申立ての趣旨

相手方は,別紙文書目録記載の文書を提出せよ。

2  当事者の主張の要旨

(申立人)

(1)  申立人と相手方は,平成元年ころ,継続的金銭消費貸借契約を締結し,その後,借入と返済を繰り返していた。

申立人代理人は,平成14年12月19日,相手方に対し,取引経過全部の開示を求めた。これに対し,相手方は,平成5年3月13日以後の取引経過についてのみ開示した。

(2)  別紙文書目録記載の文書は,民事訴訟法220条2号又は3号の文書に該当し,仮に該当しないとしても,同条4号イないしホに規定する例外事由のいずれにも該当しないから,相手方には同文書の提出義務がある。

(相手方)

(1)  相手方は,大量の顧客を取引対象にするため,顧客の出入金の履歴のデータをすべてコンピュータで処理しており,同コンピュータの処理の量的限界のため,10年を経過したデータは,自動的にコンピュータから消去されるシステムを採用している。

本件においては,平成5年3月13日より前の取引履歴のデータは,コンピュータから抹消されているために提出することができない。

(2)  文書提出命令の対象となる文書が存在しない以上,本件申立ては失当である。

3  判断

(1)  一件記録によれば,申立人と相手方との間には,平成元年ころから金銭消費貸借取引があり,申立人は金銭の借入と返済を繰り返していたこと,相手方は,上記金銭消費貸借取引について別紙文書目録記載の文書を所持していたことが認められる。

そうすると,上記の文書は民事訴訟法220条3号が規定するいわゆる法律関係文書に当たるということができ,相手方において,これを喪失したことを立証しない限り,同文書の提出を拒むことはできないと解するのが相当である。

相手方は,顧客の出入金の履歴のデータをコンピュータで処理しており,10年を経過したデータは自動的にコンピュータから抹消されることになっており,平成5年3月13日より前の取引履歴のデータは,コンピュータから抹消されて存在しない,と主張し,相手方がその主張を裏付けるものとして提出する疎明資料(陳述書)中には,相手方が,顧客のカード契約による買物及び借入の情報を,コンピュータ及びカード計算書コムと呼ばれる他の記録媒体(マイクロフィルム,CD-ROM,光ディスク)上で管理・保管していること,コンピュータで管理,保管されている貸付内容に係る情報は完済後2か月程度で自動的に削除されること,カード計算書コムには貸付日,貸付金額,貸付利率,返済方法,当月請求額,残存元本等の情報が管理・保管されており,カード計算書コムは作成から10年の経過により廃棄される旨の記載がある。しかしながら,同資料中の記載については,これを裏付けるに足る疎明資料がないため,相手方において10年を経過したデータを抹消するシステムを採用していることや,平成5年3月13日より前の取引履歴のデータが抹消されたことを認めることはできない。

(2)  一件記録によれば,相手方は,既に平成5年3月13日以降の取引経過を開示していることが認められるから,同日以降の分についての文書提出命令の申立てはその必要性を欠くものというべきである。

(3)  よって,主文のとおり決定する。

(裁判官 阿部正幸)

文書目録

相手方が所持する,その業務に関する商業帳簿(賃金業の規制等に関する法律19条で作成・備置が義務付けられている債務者ごとの帳簿)又はこれに代わる貸金業の規制等に関する法律施行規則16条3項に定める書面のうち,相手方と申立人との間の継続的金銭消費貸借の取引開始時から平成14年12月31日までの期間内における金銭消費貸借取引に関する事項(貸付年月日・貸付金額及び返済年月日・返済金額)が記載された部分の全部(電磁的記録を含む。)

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