徳島地方裁判所 平成3年(ワ)158号 判決
原告
森キヨ子(X)
右訴訟代理人弁護士
松原健士郎
被告
徳島県(Y1)
右代表者知事
圓藤寿穂
右訴訟代理人弁護士
中田祐児
被告
小松島市農業協同組合(Y2)
右代表者理事
樫原計夫
右訴訟代理人弁護士
小川秀一
事実及び理由
第三 裁判所の判断
一 〔証拠略〕によれば、請求原因1の事実(被告組合との間では争いがない。)及び原告が転倒した原因が、原告が大型車との接触を避けるために車道から路側帯内に入り、更に側溝の蓋の上を走行した結果、その溝蓋の凹凸による振動でハンドルを的確に操作することができなくなり、そのまま更に被告スタンド敷地内に進入した際に、バイクの車輪が被告スタンド内に設置された鉄製の溝(事故現場付近の深さは約二cm程度)に落ちたことにあることが認められ、右認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
二 側溝蓋が欠損していたか否かについて
〔証拠略〕によれば、本件事故当時、事故現場付近の県道端に設置された有蓋側溝のコンクリート製の蓋は、比較的長いもの(長さ約一m強)一枚と短いもの(長さ約数十cm)二枚とが交互に置かれており、長いものは地面に固定され、短いものが取り外し可能になっていたこと、溝蓋の上面の高さは道路面とほぼ同じであったが、蓋と蓋との境は、蓋の縁が欠けていたり又は短い蓋の面が道路面よりやや低くなっているために一~三cm程度の段差あるいは隙間があり、溝蓋の上を自転車やバイク等の二輪車で走行するときは、かなり振動したであろうことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。(ただし、原告が供述するような溝蓋が溝の方向に二つに割れてV字形になっていた箇所があったとまでは認められない。)
三 側溝蓋上をバイクが走行することが予想されるか否かについて
〔証拠略〕によれば、本件事故現場付近の県道(片側一車線・合計二車線)の幅は、現在、両側の側溝を含めないで約七mであり、幅二〇cmのセンターライン南縁から問題となっている南側側溝の北側の縁までの幅は約三・二二m、白線及び黄線で区切られた車道部分の幅は約二・七m程度であり、大型車(例えば全幅二・四九mのトラック)が走行した場合は、ほとんど車道の幅全部を塞ぎ、更に路側帯内にまで車輪がはみ出すことがあり、歩行者や自転車は溝蓋上を通行する以外にはない状態となり、この状態は側溝が造り直される以前の本件事故当時も大差なく、また事故当時において大型車の通行がかなり頻繁であったことが認められる。
右認定の事実によれば、大型車が通行する場合に、その運転方法によっては、バイクが溝蓋上を走行する事態が生じうることは容易に予想できるところであり、路側帯の内側だからといって、バイクの走行を全く予想することができない又は予想する必要がないとは到底いえないところである。
四 被告県の責任について
前記二、三で認定したところによれば、道路管理者である県としては、本件事故現場付近においては、バイクが、溝蓋上を走行することを予想し、その場合にバイクの走行に危険が生じないような道路管理をする義務があるというべきであり、本件事故当時の溝蓋は、バイクの走行に危険を生じさせることがありうる状態にあったと認められるから、右道路を管理する義務を十分には尽くしていなかったものといわざるをえない。
もちろん、本件事故のもともとの原因は、本来車道上を走行すべきところを路側帯内側に入り、更に溝蓋の上を走行した原告の運転ミスにあるけれども、大型車との接近・接触の危険を感じながら凹凸のある不安定な溝蓋の上を振動しながら走行しているバイクに対し、直ちに停止することを求めるのも、転倒の危険を考えると無理を強いる感があり、被告スタンドの敷地内に避難するまでの間、溝蓋上を一定の距離走行するのもやむをえなかったものと認められ、これらの事情を考慮すると、原告の運転ミスゆえに被告県の責任を一切否定するのは相当ではないというべきである。
五 被告組合の責任
前記一、三で認定した事実によれば、被告スタンド前の県道を走行する、自転車やバイク等が被告スタンド敷地内を通過して走行する可能性を否定することができず、したがって被告組合としては、そのような場合に車両の車輪が溝に落ち込んで転倒事故が起きることのないように、溝に蓋を設置するなどして溝に車輪が落ち込まないような措置をとる義務があるというべきである。そして、原告の運転ミスとともに、被告組合がこの義務を怠ったことが、本件事故を発生させた原因の一つになっていることは否定しがたい。
六 しかし、これまで検討してきたところからは、本件事故から生じたすべての損害を被告らが賠償すべきである(なお、被告ら間における本件事故発生に対する帰責の割合は、一対一と見るのが相当である。)とも到底いえない。
被告らの賠償責任を否定する主張には、過失相殺の主張も含まれていると解されるので、本件事故の発生についての、原告の過失の割合を考えると、前記認定の事実からは、その過失の割合は大きく、九割とするのが相当である。
七 原告の損害について
1 〔証拠略〕によれば、原告は、本件事故による右脛骨上端部骨折等の治療のため、本件事故の日(昭和62年12月12日)から昭和63年3月30日まで一一〇日間及び昭和63年12月5日から同月16日まで一二日間の合計一二二日間、小松島赤十字病院に入院した事実が認められる。
2 損害額について
(一) 治療費 三一万三八五三円
右1で認定した事実及び弁論の全趣旨により、右金額を認める。
(二) 看護料 二七万四五〇〇円
前記認定の入院期間のうち、六一日間につき、原告の夫森光が付添看護が必要であったと認めるのが相当であり、付添看護料として、左の金額を損害と認める。
一日四五〇〇円×六一日=二七万四五〇〇円
(三) 入院雑費 一五万八六〇〇円
一日一三〇〇円×一二二日=一五万八六〇〇円
右金額を損害として認める。
(四) 休業損害 八二万八〇二九円
原告は、家事従事者であり、入院にともなう休業損害は左のとおり認めるのが相当である。
二四七万七三〇〇円(昭和62年度賃金センサス・産業計・企業規模計・学歴計・全年齢女子労働者の平均年収)÷三六五日×一二二日=八二万八〇二九円
(五) 入院慰謝料 一二五万円
右金額をもって相当とする。
3 右2(一)~(五)の金額を合計すると、二八二万四九八二円となるが、前記認定の原告の過失割合である九割を右金額から減じると、二八万二四九八円〔=二八二万四九八二円×(一―〇・九)〕となる。
弁護士費用は、五万円の限度で、本件事故と相当因果関係にある損害と認める。
八 以上によれば、原告の本訴請求は、三三万二四九八円(=二八万二四九八円+五万円)とこれに対する本件事故の日である昭和六二年一二月一二日から支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 加藤謙一)