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徳島地方裁判所 平成3年(行ウ)14号 判決

原告

圃山靖助

右訴訟代理人弁護士

井上善雄

小田耕平

山本勝敏

被告

(前徳島市長) 三木俊治

三木玲子

桜木公夫

川原嘉輝

凩晴巳

坂井積

隅倉純爾

中野泰司

野々瀬利雄

広瀬武

桑原正司

高島豊

伊勢豊

鎌田祐輔

上山光章

岩崎啓二

被告ら訴訟代理人弁護士

松尾敬次

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1について

1  証拠によれば以下の事実が認められる。

(一)  地方公共団体による国際交流について

社会全般の国際化が見られる現代においては、地域の経済、文化、教育等の各分野の発展のためにも国際的な視点が必要であり、したがって、地域住民の福祉を増進する上で、地方公共団体が外国諸都市との国際交流・親善を深め、地域の国際化を先導する役割を担うことが期待されている。

そして、そのための典型的手法の一つとして、外国諸都市との姉妹都市又は友好都市関係の締結が重要視されている。(〔証拠略〕)

(二)  本件訪問に至る経緯

徳島市は、昭和六一年八月、地方自治法二条五項に基づき、地域における総合的・計画的な行政の運営を図るための基本構想として「徳島市総合計画[基本計画]」を策定し、そこにおいて、前記のような観点から、「市民の国際理解を深め、国際化時代にふさわしい国際感覚豊かな市民性をはぐくむ。」、「地域社会に刺激を与え、徳島文化の質を高めるため、国際交流活動を今後とも促進するとともに、経済交流や国際会議の開催など、都市活動の中の国際化を積極的に推進する。」などの基本的な考え方を採用し、すでに締結されているポルトガルのレイリア市及び米国のサギノー市との間の姉妹都市関係のほかに、中国を初めとする環太平洋諸都市との新たな国際交流の推進を提唱している。徳島市は、昭和六二年、中国大使館から丹東市を紹介され、同年八月には、徳島市長、同市議会議長、同市の経済関係者などが丹東市長の招待を受けて丹東市を訪問した。また、平成元年九月には丹東市からも副市長らが徳島市を訪問し、徳島市長と丹東市副市長との間で、姉妹都市関係の締結及び各分野における交流推進に向けての相互努力を確認する覚書が取り交わされ、その中で、丹東市側から翌平成二年内における徳島市長、同市議会議長及び同市の各界代表者らによる丹東市訪問の要請と、これを早期実現する旨の徳島市側の約束が確認された。そして、この趣旨にのっとり、平成二年五月一九日、丹東市長から徳島市長に対し、市長及び議長が引率する各界関係者五〇名程度の代表団を丹東市に招待するとともに、市の職員及び市議会関係者のうち一二名の中国国内の費用は丹東市が負担する旨の申し出があった。(〔証拠略〕〕

(三)  本件訪問の内容

被告らは、本件訪問において、丹東市市長をはじめとする同市人民政府関係者との会談に臨み、その際、丹東市との間で、平成三年一〇月一日の徳島市置市記念日に徳島市において徳島市と丹東市との友好都市の締結が行われるよう双方が最大限努力すること、徳島市において丹東市商品展を開催するなどの経済協力を進めること、文化、教育等の交流をすすめ各種技術協力をすることなどを確認したほか、各種工場の経済施設や学校、図書館、病院、放送局などの文化、教育及び医療の各施設を班に分かれて視察した。(〔証拠略〕)

(四)  市長夫人及び市議会議員の参加の趣旨・役割

被告三木玲子の同行については、一般に市長などの海外への公式訪問の際には夫人の同伴が国際儀礼に沿うものであると考えられたことに加え、被告三木玲子は、本件訪問の前年に丹東市側から副市長らが徳島を訪れた際、徳島市長夫人として毎回歓迎レセプションに出席し、時には案内や接待をすることがあったこと、本件訪問にあたっても丹東市側から夫人の同行を要請されたことから、徳島市から同被告に対し本件訪問への参加を依頼したものであり、また、現地での視察にあたっては、市長とは別の班を率いて市長の代役を果たした。

被告らのうち徳島市議会議長及び議員の同行については、徳島市が、丹東市との間で友好都市関係を締結するにあたり、市民の代表であり、かつ友好都市関係締結の議決機関の代表である右被告らに、相手都市である丹東市の実情を知ってもらうために依頼したものであった。なお、右被告らに対する旅費の支払命令書及び本件訪問後の報告書には、本件訪問の目的の一つとして「先進都市行政視察」とされているが、このように「先進都市」としたのは丹東市に対する儀礼的理由からであった。(〔証拠略〕)

(五)  本件訪問中、団員の一人が現地の女性に対し性的いやがらせをしたとして日本で報道されたが、丹東市からは特に苦情はなかった(〔証拠略〕)。

2  以上認定事実を総合すると、本件訪問は、地方公共団体として正当な目的のために行われたものというべきであり、原告が主張するような行政視察や国際親善に名を借りた公務性のない観光旅行であったということはできない。

なお、原告は、徳島市の市民や法人に対する地方税の課税が過重であるとか、環境整備の状況が劣悪であるとか、姉妹都市関係の維持に要する費用の負担が大きくなっているなどと主張するが、地方行政の維持、発展と併せて、国際親善の推進に積極的に取り組んだとしても、それ自体が違法となる筋合いのものではない。

二  争点2について

被告三木玲子の同行については、前記認定のとおり、一般的な国際儀礼が考慮されるとともに、市長夫人として本件訪問において一定の公的役割を期待されたことから、徳島市が依頼したものであり、したがって、夫人を同行したことをとらえて本件訪問が観光旅行をかねたものであるとするのは当を得ない。また、仮に予定の一部に観光が組み込まれていたとしても、そのことから直ちに本件訪問の公務性が失われるものではない。

三  争点3について

証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告らのうち徳島市議会議員の旅費が議会費ではなく総務費から支出され、また徳島市議会においては委員会単位で行う視察先から外国を除外する旨の取り決めをしていることが認められる(〔証拠略〕)。しかし、前記のとおり、右被告らの訪問には、徳島市側からの要請として、市民の代表に友好都市関係締結の相手都市である丹東市の実情を知ってもらうという側面があったことや、徳島市議会においても必ずしも海外視察の意義が全く否定されているわけではないこと(弁論の全趣旨)に照らせば、本件訪問にあたって右被告らの旅費の支出に不明朗な部分があったということはできない。

四  争点4について

1  証拠によれば、以下の事実が認められる。

(一)  本件訪問は大阪空港経由で北京入りすることになっており、当初は平成二年八月二二日に徳島空港(松茂空港)から飛行機で大阪空港に向かうことになっていたが、当時台風が接近しており、日程どおり二二日に徳島空港を出発するということにしたのでは北京行きの飛行機に搭乗できない恐れが出てきたため、急遽二一日に徳島市を出発することが検討され、同日朝各団員に対し、午後三時には最終決断するのでそれまで待機するよう伝えられた(〔証拠略〕)。

(二)  同日午後三時、その日の午後九時に徳島市を出発することが決定され、団員は午後八時に集合し、午後九時過ぎにバスで大阪に向け出発して、淡路島を経由しフェリーを使って本州に渡り、翌日の午前零時三〇分ころ大阪市内のホテルに到着して休んだ後、同日の朝、大阪空港から飛行機で北京に向かった(〔証拠略〕)。

(三)  被告らは、平成三年九月二〇日、徳島市長から、条例に基づく旅費の調整により本件訪問の旅費のうち平成二年八月二一日分の日当を半日当とするので半額を返還するよう請求を受け、同年一〇月三日これを徳島市に返還した(〔証拠略〕)。

(四)  被告らのうち被告三木俊治、同三木玲子、同桑原正司、同高島豊、同桜木公夫、同川原嘉輝、同野々瀬利雄、同広瀬武、同隅倉純爾、同中野泰司、同坂井積、同凩晴巳は、中国国内の昼食代等を中国側で負担してもらうことになっていたが、細かな移動費用、通信費等については個人負担であったことから、本件訪問中の日当は半額に調整されて支給された(〔証拠略〕)。

2  旅費における日当は、旅行中の昼食費及びこれに伴う諸雑費並びに目的地である地域内を巡回する場合の交通費等を賄なうために支給されるものであるところ、徳島市職員旅費支給条例一五条、この例にならうとされる常勤の特別職の職員の給与及び旅費に関する条例一〇条、議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例四条二項によれば、公務のために旅行をする職員に対しては、日当が旅行日数に応じて定額で支給されることになっており、この場合の旅行日数は、旅行中の時間が二四時間に満たない初日や末日も原則として一日と計算するものとされている。そして、この日当については定額支給の建前がとられており、原則としてその用途をいちいち詮索する必要はないが、特別の事情により右条例の定める原則的な旅費の計算方法によることが適当でないとされる場合には、市長が合理的基準により認定した額に調整することができるものとされている(職員旅費支給条例二五条二項)。したがって、日当の額を調整する必要性の有無に関し市長としての判断の当否が問われることがあるとしても、市長の右判断が権限を濫用するものであるなどの特段の事情がなければ、日当支給それ自体が直ちに違法になるものとはいえない。

そこで、本件訪問にあたり被告らに支給された日当について検討するに、前記認定のとおり、出発日の平成二年八月二一日分については、公務として拘束された時間は午後八時以降であったものであるから、徳島市長が事後的に半日当にあたるものとして、被告らに半額を返還してもらう措置をとったことに格別の違法はない。また、中国側から中国国内の旅費を負担する旨の申し出を受けた被告らに対する中国国内滞在中の日当については、徳島市職員旅費支給条例二四条、この例にならうとされる常勤の特別職の職員の給与及び旅費に関する条例一〇条、議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例四条二項により、旅費法六条六項に規定される国家公務員に対する日当の定額支給の例に準じ、市長が認定した額を支給するものとされているが、前記認定の事実によれば、生活の本拠を離れたことにより余儀なくされる余分の費用の支出を中国側に全て負担してもらったわけではないから、これを半日当に調整して支給したとしても違法というべきではない。

五  争点5について

被告らに対する支度料の支給は、職員旅費支給条例二四条、この例にならうとされる常勤の特別職の職員の給与及び旅費に関する条例一〇条、議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例四条二項に基づき、旅費法三九条の場合に準じ、定額で支給されたものである。したがって、前記の日当の場合と同様、その用途をいちいち詮索する必要はない。

六  争点6について

前記認定の事実によれば、被告らは、午後九時過ぎにバスで出発して、淡路島を経由しフェリーを使って本州に渡り、翌日の午前零時三〇分ころ大阪市内のホテルに到着して休んだのち、同日朝大阪空港に向かったのであるから、車中及びホテルにおいて一泊したことになる。したがって、被告らに対しては、徳島市職員旅費支給条例一六条一項、この例にならうとされる常勤の特別職の職員の給与及び旅費に関する条例一〇条、議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例四条二項により、定額の宿泊料が支給されることになるのであるから、当日の夕食代などの支出の有無を詮索するまでもなく、被告らに右宿泊料を支給したことに格別の違法はない。

七  争点7について

外国旅行に伴う旅行雑費は実費額により支給するものとされているところ、徳島市職員旅費支給条例二四条、この例にならうとされる常勤の特別職の職員の給与及び旅費に関する条例一〇条、議会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例四条二項は、外国旅行に伴う旅行雑費について、旅費法六条六項に規定する国家公務員に対する日当の定額支給の例に準じ、市長が認定した額を支給するものとしている。被告鎌田本人の供述によれば、平成二年四月一日以前は、一般旅券には一回往復旅券と数次往復旅券があり、徳島市の公務出張においては、一回往復旅券の旅券交付手数料を実費支給していたことが認められるから、仮に、被告らのうちに過去に公務による外国旅行の際に旅行雑費として旅券取得手数料の支給を受けた者がいたとしても、本件訪問にあたっては改めて旅券交付手数料を要したと認めてこれを旅行雑費として支給することにしても違法とはいえないし、また、すでに個人的に旅券の交付を受け、それが本件訪問の際にも使用できる者がいたとしても、もしこれがなかったならば、本件訪問にあたって新たに旅券の交付を受ける必要があったのであるから、個人の負担で旅券の交付を受けて使用できる者とそうでない者とで取扱いを区別せず、本件訪問に際し一律に旅券交付手数料を支給したことをもって違法とまではいえない。

第四 結論

以上によれば、原告の請求はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 朴木俊彦 裁判官 近藤壽邦 佐茂剛)

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