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徳島地方裁判所 平成6年(行ウ)3号 判決

原告

福田文男(X)

右訴訟代理人弁護士

林伸豪

右同

川真田正憲

被告

(由岐町長) 松村静男(Y1)

(由岐町助役) 西村一誠(Y2)

(由岐町建設課長) 成清盟三郎(Y3)

右三名訴訟代理人弁護士

小出博己

右同

豊永寛二

事実及び理由

第三 争点及び法律上の問題に対する判断

一  本件訴えの適否について

地方自治法二四二条の二第一項四号前段の「当該職員」の意味については、被告らの主張するとおり、当該訴訟において適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至った者と解すべきであり、由岐町が本件工事の請負代金を支出した当時、被告松村静夫は由岐町の町長であり、右請負代金支出権限を法令上有する者であるから「当該職員」に該当するが、被告西村一誠、同成清盟三郎はそれぞれ同町の助役、建設課長であり、右請負代金支出権限を法令上本来的に有する者ではないし、また、右権限の委任を受けていたものでもないから「当該職員」には該当しないというべきである。しかしながら、原告は、被告らは、共謀のうえ、右請負代金を水増しして違法に支出したとしてその損害賠償を求めているのであるから、右請負代金支出権限を有しない被告西村一誠、同成清盟三郎については、右権限を有する被告松村静夫と共謀して違法な支出をし町に損害を与えたが、町がその損害賠償請求権の行使を怠っているから、地方自治法二四二条の二第一項四号後段の「怠る事実に係る相手方」に該当するとして損害賠償を求めているものと理解することができるから、本件訴えは、いずれも適法なものというべきである。

二  駐輪システムの価格の水増しについて

1  原告は本件駐輪場設置が当初からアルミ製を前提としていたと主張するが、その根拠はほぼ四点あるから、以下これを順次検討する。

(一)  原告は、駐輪システムのような製品は公表価格から相当の値引きをした価格で販売されているのが業界の常識であり、本件で問題となっているトーア・スチール株式会社のアルミ製駐輪システムの場合、一〇二三万八〇〇〇円は公表価格であり、事業認可設計書に記載された七四一万七〇〇〇円が値引きした実勢価格であったから、本件駐輪場設置は当初からアルミ製を前提としていたものであると主張する。しかし、これを裏付ける証拠はなく、むしろ、〔証拠略〕によれば、平成四年七月、由岐町がトーア・スチール株式会社、八丁堀鋼材株式会社、株式会社山崎テントからアルミ製駐輪システムの見積を取ったところ、トーア・スチール株式会社が製品費一〇二三万八〇〇〇円、八丁堀鋼材株式会社が同一一三五万四〇〇〇円、株式会社山崎テントが同一四一二万円であったことが認められ、トーア・スチール株式会社の価格が公表価格あるいはこれに近いものであったとすれば、他の二社の価格も同様であったと推認されるのであるから、実際の契約時においてはともかくとして、見積の段階では、必ずしも原告が主張するような値引きがなされているとは断じ難いところである。そして、他に事業認可設計書に記載された駐輪システムの材料費七四一万七〇〇〇円がアルミ製の値引きした価格であることを立証する証拠もないのであるから、これはスチール製の価格であると認めるのが相当である。

(二)  次に、第二点として原告が指摘するのは、事業認可設計書の本工事費等内訳表・設計図面がトーア・スチール株式会社のアルミ製駐輪システムを前提としたものであったということであるが、これは、今津証人が証言するとおり、同証人においてアルミ製駐輪システムの設計図面をスチール製駐輪システムの図面であると勘違いし、そのため本工事費等内訳表の記載も誤ってしまったものと認められる。

(三)  原告は、第三点として、由岐町では、平成三年九月の時点で、株式会社タチバナ測量設計にスチール製及びアルミ製両方の駐輪システムの設計図と数量統括表を作成させているが、被告らが主張するように、スチール製に比べ高額なアルミ製の駐輪システムが予算的に無理であると分かっていたのであれば、アルミ製の設計図と数量総括表を作成させる必要はないと主張する。この点について、今津証人は、カタログの価格等だけで判断してアルミ製は予算的に無理であると思ったが、アルミ製駐輪システムの場合の総工事費を算出するためには、同システムによった場合に必要となる敷地の舗装、側溝等の付帯工事の費用がどのくらいかかるかという点の検討も加えた総合的な判断が必要であり、そのためには同システムの設計図と数量総括表を資料として作成する必要があると考えて、スチール製に加えてアルミ製の駐輪システムについても設計図と数量総括表を出してもらった旨供述している。そして、一般に計画立案の段階で各種の可能性を探って見積等を作成し彼比検討することは十分合理性があると考えられるところ、これと同趣旨の今津証言は説得力があり、他にこれを特に異とすべき事情もない。

(四)  さらに、原告は第四点として、平成四年四月一五日付けのトーア・スチール株式会社の関連会社であるトーアフエンス株式会社作成の見積書(〔証拠略〕)は、当初の計画がスチール製駐輪システムであったと取り繕うために事後的に作成された文書である疑いが強いと主張する。しかしながら、この点についても、今津証人は、平成四年三月定例議会に提出した駐輪場の予算に関する書類は、トーア・スチール株式会社のカタログと株式会社タチバナ測量設計が作成した設計図と数量総括表に基づいて積算・作成したものであり、この段階で特にトーア・スチール株式会社から見積書を取る必要は認めなかったが、その後、事業認可設計書(〔証拠略〕)を作成したときは、県に対する説明に必要があるかもしれないと考えて見積書を取ったものである旨、この見積書を監査請求があったときに提出できなかったのは、当時右見積書がキャビネットの後ろに落ちていて発見できなかったためである旨供述しており、その供述に格別不自然不合理な点はなく、また、この供述内容を覆すに足る証拠もない。

2  以上のとおりで、原告の主張する根拠はいずれも採用することができず、また、原告は、由岐町が、近藤俊男前町長のもとで(〔証拠略〕によれば、平成四年五月一八日まで同人が由岐町町長を務めていたことが認められる。)、本件駐輪場設置については、アルミ製駐輪システムを前提に、争いのない事実二1及び2記載の手続きを進めていてきたと主張するのであるが、原告の主張のとおりであるとするならば、近藤前町長の在任中に開催された平成四年三月由岐町定例会議において、本件駐輪場につき、スチール製であると仮装しなければならない理由は全くないから、アルミ製駐輪システムとして予算の審議、承認がなされているはずである。ところが、争いのない事実二4記載のとおり、同年九月由岐町定例議会において、これまで計画してきたスチール製駐輪システムをアルミ製に変更するとして、工事費を五〇〇万円増額する補正予算が成立しているのであるから、同年三月定例議会において、アルミ製駐輪システムを前提として予算の審議、承認がなされたとは認め難く、スチール製駐輪システムを前提としてこれがなされたものと認めるのが相当である。そして、証人今津の証言によれば、当時同証人は、本件駐輪場設置について、由岐町が海に近く塩害を受けやすいことからアルミ製駐輪システムにすることも考えたが、当初の予算(事業費二二〇〇万円)ではそれが不可能であったからスチール製に決定したこと、しかし、その後になって、県土木部道路保全課から、本件駐輪システムの材料をアルミ製に変更して工事価格を増額しても、国の補助金の増額を受け得ると聞いたので、その時点で、スチール製からアルミ製に変更したことが認められる。よって、原告の前記主張は理由がない。

3  原告は、仮に、被告ら主張のとおり、本件駐輪場設置が当初スチール製の計画であったものをその後アルミ製に変更したとしても、業界慣行や県の指示などに基づき、公表価格の八〇パーセントを積算すべきであったとも主張するが、徳島県土木部が作成した「平成四年度積算の運用」と題する書面(〔証拠略〕)の第一編総則2材料単価によれば、(1)材料単価は、設計書作成時点における市場価格を採用するものとし、積算に当たっては「土木工事実施設計単価表」によるもののほかは、「建築物価」(「建築物価」に載っていない場合は「積算資料」)による、(2)「建築物価」及び「積算資料」に掲載されていない資材単価については、原則として三社以上の見積りを取り内容をチェックし、裁定価格を採用するものとするとされているところ、〔証拠略〕によれば、駐輪システムは右(2)に該当するので、由岐町は、トーア・スチール株式会社、八丁堀鋼材株式会社、株式会社山崎テントからアルミ製駐輪システムの見積を取り、最低価格一〇二三万八〇〇〇円であったトーア・スチール株式会社のアルミ製駐輪システムを採用したことが認められ、したがって、製品価格(公表価格)をそのまま採用したからといって、これが違法であるとはいえない。

4  以上のとおりであるから、被告らによる駐輪システムの価格の水増しがあったとは認められない。

三  工事における諸経費の水増しについて

原告は、本件駐輪場設置工事に本来の工事費以外に諸経費を積算すること自体が不当である、仮に諸経費の積算を認めるとしても、建築工事としての最高額である二二・二九パーセントを超える部分は違法であると主張する。そこで検討するに、〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

1  本件駐輪場敷地は、平成二年一〇月八日及び同三年九月三〇日、由岐町が国鉄清算事業団から取得し(それぞれ同二年一〇月一九日及び同三年一〇月一六日登記)、同三年一〇月一六日、公衆用道路に地目変更され(同五年一二月一〇月登記)、同四年六月一日、町道の区域変更及び町道供用開始に関する告示がなされており、由岐町道西の地五号線の一部である。

2  建設省道路局監修の平成四年度版道路局所管補助事務提要(〔証拠略〕)によれば、自転車駐車場は、道路局所管補助事業の採択基準による特定交通安全施設等整備事業の二種事業に該当するところ、右補助事務提要の「補助事業等に係る工事設計書の作成について」と題する部分(〔証拠略〕)の費目の説明の項において、本工事費につき、「事業の主体をなす施設の工事の施行に直接必要な労務費、材料費及び土地の借料並びに補助事業者等が負担する労務者保険料とする。ただし、請負施行の場合にあっては、別紙1補助事業等土木請負工事工事費積算要領第3に定める直接工事費、間接工事費及び一般管理費等とする。」旨記載され、さらに、右間接工事費は、共通仮設置及び現場管理費に分類されている。

3  建設省道路局地方道課市町村道室監修の「まちづくりみちづくりへのやる気を応援します(国の支援制度)」と題する書面(〔証拠略〕)には、自転車駐車場整備事業につき、「道路事業では国が補助する特定交通安全施設整備事業の二種事業で実施。」と記載されている。

4  争いのない事実二2及び4記載の建設省道路局に対する補助金交付申請及び補助金交付決定額変更申請は、いずれも土木工事として諸経費が積算されているが、これに対し、建設省道路局からも経由庁の徳島県からも特段の指摘はなく、そのまま承認されており、また、同じく土木工事として諸経費が積算されている本件駐輪場設置工事の実施設計書及び第一回変更実施設計書についても、日和佐土木事務所及び県の土木部道路保全課で協議のうえ証人されている。

右各認定の事実によれば、本件駐輪場は町道の一部に設置され、本件駐輪場設置工事が道路局所管補助事業の採択基準による特定交通安全施設等整備事業の二種事業として実施されたものであることが明らかであるから、右工事に直接工事費としての材料単価に加え、諸経費である共通仮設費、現場管理費、一般管理費を積算したことは、前記事業において認められた費目の積算であって何ら問題はない。次に、本件駐輪場設置工事が土木工事にあたるかどうかについてみるに、同工事のうち、敷地部分に舗装、排水設備を施す工事自体は純然たる土木工事であると解される。そして、右敷地の上に設置される駐輪場の構築物の部分も、右舗装部分に付着し固定されており、右道路の付属的な施設であると解することが可能であるから、全体として本件駐輪場設置工事を土木工事と認めるのが相当である。また、建設省道路局においても、駐車場が道路上に設置され、これが道路事業と認められる場合は土木工事と考えているものと認められる。なるほど、建築基準法二条一号は、建築物とは、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)等のことであると定義しているから、本件駐輪場も建築基準法上の建築物という概念には含まれるが、同法は国民の生命健康及び財産の保護を図る目的から建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定める趣旨で制定されたものであるから、このことから直ちに、本件駐輪場設置工事を建築工事とみなし、諸経費の算出においても建築工事で定められた二二・二九パーセントを超えてはならないということには繋がらない。よって、原告の主張は理由がない。(なお、本件駐輪場設置工事が土木工事であるとして、その諸経費の積算課程について検討しておくと、〔証拠略〕によれば、本件駐輪場設置工事の実施設計書及び第一回変更実施設計書における諸経費は、いずれも徳島県土木部が作成した平成四年度土木工事標準積算基準書、同年度土木工事実施設計単価表及び土木請負工事における諸経費率の早見表並びに財団法人建設物物価調査会作成の建設物価と題する書物(平成四年一〇月号)を参考にして積算したもので、かつ、土木工事のうち、一般管理費率は同じでも、現場管理費率と共通仮設費率が最も低い公園工事の諸経費率を採用していること、かつ、諸経費の積算課程はいずれも被告らの主張のとおりであることが認められ、何ら違法な点は見当たらない。)

四  結論

以上のとおり、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本久 裁判官 大西嘉彦 大島淳司)

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