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徳島地方裁判所 昭和27年(行)4号 判決

原告 四宮隆雄

被告 徳島県知事 外一名

一、主  文

原告の請求は総てこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は被告知事が昭和二十六年十一月十九日附で為した被告坂野町北部土地改良区(爾後被告改良区と略称する)の設立認可が無効であることを確認する。仮に右無効でないとすれば右設立の認可を取消す。仮に右何れの請求も認められ無いときは被告改良区は原告に対し金三十万円を支払えとの判決並に右金員支払の部分については担保を条件とする仮執行の宣言を求むと述べ、その請求原因として、被告改良区は昭和二十六年十一月十九日被告知事の設立認可を受け、その地区内に原告所有の別紙目録記載の土地が含まれているが、右知事の設立認可は無効である。即ち知事が設立認可するには先づ土地改良区の設立認可申請につき当該土地改良事業計画及び定款につき詳細な審査を行い、これを適当と決定したときはその旨申請人に通知すると共に遅滞なく土地改良法(爾後法と略称する)第八条第四項により右旨の公告を為し、二十日以上相当の期間を定め該決定に係る土地改良事業計画書及定款の写を縦覧に供し、これに対する利害関係人の異議申立の機会を与えた後始めて設立認可の決定を為し得べく、右公告は改良区設立手続中頗る重要な事項でこれを欠如するときは、その後為された設立認可の所為を当然無効に帰せしめるものである。しかるに被告知事は、被告改良区の設立認可申請につき昭和二十六年十月十九日これが申請を適当と認めその旨の決定を為したが、これにつき前示法第八条第四項の公告を為して居らない。尤も被告知事は同年十月十九日附徳島県報に第二別紙記載文言を掲載して公告を為しているが法第八条第四項には「設立認可の申請を適当と決定したときはその旨を公告する」とあるに、別紙記載の文言中には「適当と決定した」旨の記載が無く、又「土地改良法第四項の規定によつて公告する」と記載せられ第何条の第四項を指すか不明で、同法による公告には法第八条第四項の公告の外第六条第四項の公告も存するので右何れの法条による公告か判明せず、何れの点よりするも別紙記載文言による公告は法第八条第四項の公告と認めることは出来ない。仮に右公告を以て法第八条第四項の公告があつたものとするも、右県報には縦覧期間を同年十月十九日から十一月七日迄と定め掲載しているが、県報が印刷発行されるには少くとも県報の日附日より一週間以上遅れるので、該県報を見てから一般県民が事業計画書等を縦覧し得る期間は十二日以内となり法定縦覧期間二十日間の三分の一以上も短い失当なものとなる。斯る失当な縦覧期間は認可手続に関する重大な瑕疵として認可を当然無効にならしむるものである。よつて被告知事の為した設立認可は無効である。仮に右無効の主張が容れられないするも前示の通り公告手続及縦覧期間に重大な瑕疵があるのでこれに基く右設立認可は取消さるべきである。仮に前示何れの主張も認められない場合は被告改良区に対し次の損害賠償の請求を為す、被告改良区が当初知事の認可を受けた事業計画は樋門、水路、作道関係のみで嵩上客土工事は右事業に含まれて無いので被告改良区はこれ等事項の事業計画を新に設定し知事の認可を受けこれが公告が為されるまで、嵩上客土工事を施行することが出来無いのに、不法にも右手続を為すこと無く同二十七年二月上旬から嵩上客土工事を始め同年四月上旬に約七割、同月二十四、五日頃には全部完了しその際原告所有の別紙目録記載の土地に対しても嵩上客土を為したが、被告改良区は同年四月二十三日に至つて初めて右嵩上工事の施行等をその事業計画に加え知事にその認可の申請を為し同月三十日被告知事に於てこれを認可公告したが、これにより右違法な客土工事が適法なものとなる理なく殊に元来原告の本件農地は嵩上を要しない土地で嵩上により何等利益を受けないことが明白な為め、原告は当初より強くその不必要を強調し反対し続けているので法第六十六条第二項により嵩上工事より除外しなければならないのに除外せず、右の様な違法な嵩上工事を為し収穫を皆無状態に陥入れ、これにより原告の蒙つた損害は一ケ年二十万円を下らず今後向う三年間毎年得べかりし利益金六十万円を喪失することとなるので、これをホフマン式計算法により年五分の利率によつて現在化するときは、五十四万六千三百七円となるので本訴に於てその内金三十万円の支払を求めると陳述した(立証省略)。

被告等代理人は何れも原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、原告の行政処分無効確認並取消事件に対する答弁として、原告主張事実中被告知事が被告改良区の設立認可申請につき法第八条第四項を公告しなかつたとの点、第二別紙記載文言を掲載した県報の公告が右法第八条第四項の公告と認め難いとの点、県報が印刷発行されるのに県報の日附日時より一週間以上遅れるとの点被告知事が昭和二十六年十一月十九日附でなした被告改良区の設立認可が無効或は取消さるべきものであるとの点は、何れも否認するがその余の事実は認める法第八条第四項の公告と法第六条第四項の公告とは公告文言が異なり、又法第八条第四項の公告は改良区の設立認可の申請を適当と認めた場合にのみ為し、これが申請を不適当と認めた場合は何等公告を要しない事実より、第二別紙記載文言による公告が被告改良区の設立認可申請に関する法第八条第四項の公告であることは明瞭であると述べ、被告改良区代理人は原告の損害賠償請求に対する答弁として、原告主張事実中被告改良区が当初知事の認可を受けた事業計画に嵩上客土工事が含まれていないこと、その後これ等を新に事業計画として設定し知事の認可を得たこと、知事の認可公告前嵩上客土工事を始めたこと、原告所有の別紙目録記載の土地についても客土工事を為したこと、は認めるがその余の事実は否認する。被告改良区は昭和二十七年一月十三日新に嵩上客土及区劃整理の事業計画を設定し、同月十五日被告知事に右認可申請を為し同年四月上旬原告所有の関係土地部分を除く地域の嵩上客土工事に着手し同月二十三日知事が右申請を認可し同月三十日公告を為したものであるが、原告関係の地域については右認可後嵩上客土工事を為したもので、仮に原告農地に対する嵩上工事が右公告前に為されたとするも被告改良区の組合員である原告に対しては右認可を以て対抗し得るので、原告主張の如き何等違法な点は存し無いと述べた(立証省略)。

三、理  由

先づ被告改良区設立無効確認の主張につき按ずるに、被告知事が被告改良区の設立認可申請につき昭和二十六年十月十九日これが申請を適当とする旨の決定をなしたこと同年十一月十九日右設立の認可を為したこと、その地区内に原告所有の別紙目録記載の土地が含まれていること、知事が土地改良区の設立認可を為すには原告主張の手続を要すること、被告知事が昭和二十六年十月十九日付福島県報に第二別紙記載の文言を掲載して公告を為したこと、右設立認可申請に関する書類の縦覧期間を同年十月十九日から同年十一月十九日と定め、その旨右県報に登載公告したことは当事者間に争が無い。

原告は被告改良区の設立認可については、法第八条第四項の公告が無い。第二別紙記載文言の前示県報による公告は右法第八条第四項の公告と認め難いと主張するを以て考案するに、法第八条第四項には知事が土地改良区設立認可の申請を適当とする旨の決定をしたときは遅滞なくその旨の公告を為すべきことを規定するのみで、その他別段公告文言に制限が無いので右趣旨を表わすに足る文言を以つて足ること、又これが公告は申請を適当とする旨の決定を為した場合にのみ為され不適当と認めたときは何等公告を要しないこと明かで、これ等事実に鑑みこれを本件について見るに、第二別紙記載文言による公告は被告知事が被告改良区の設立認可申請を適当とする旨の決定を為しその旨の公告を為す趣旨なること誠に明白で、又本条第四項の公告と法第六条第四項の公告とは公告文言が全然異るを以て前示文言による公告を以て法第六条第四項の公告と彼是混同を生ずるが如きは存し得ない。右の次第で被告改良区の設立については、法第八条第四項の適法な公告があつたものと認め得べく、この点に関する原告の主張は採用することが出来ない。又原告は公告を掲載した県報の印刷発行が遅延する為め実際上の書類縦覧期間が著しく短期間となりその期間は認可を無効にせしむるものであると主張するが、仮に県報の印刷発行が遅延し実際上の縦覧可能期間が原告主張の様に十二日間になつても、未だこの程度の縦覧期間を以ては認可を無効に帰せしむる程の瑕疵とは認め難いので本件主張も爾余の判断を俟つ迄も無く失当として採用することが出来ない。その他被告改良区の設立認可を無効ならしむる事実については、他に主張立証無きを以て原告の右無効確認を求むる点は失当である。

次に被告改良区の設立認可取消の主張につき判断する。

原告は法第八条第四項の公告手続及縦覧期間に重大な瑕疵があるのでこれに基く、設立認可は取消さるべきものであると主張するが、前記認定の通り右公告手続は適法になされ居り又証人宮田明の証言によると県報は日附日時には既に印刷され居り、通常同日中に徳島市内を除く、その他の県報配付の町村役場等へ郵便により発送されることを認め得べく、郵便物は県庁所在の徳島市内より被告改良区及原告所在町村へは遅くとも発送日二日内に到着すべきこと顕著な処であるから、前示十一月十九日附県報も同月二十日には原告等一般人の周知し得る状態に置かれたものと推認し得べく、成立に争の無い甲第十五、十六号証の記載によるも右認定を覆すことが出来ない。従つて右縦覧可能の期間は十八日間となり法定縦覧期間より二日間短期間となるがこの程度の瑕疵を以ては未だ右認可を取消さねばならない程の瑕疵と認め難いので、原告の右認可取消を求むる点も失当である。

次に原告の損害賠償の請求につき按ずるに、被告改良区が当初知事の認可を受けた事業計画には嵩上客土工事が含まれてないこと、その後これ等工事を新に事業計画として設定し知事の認可を得たこと、知事の認可公告前嵩上客土工事を始めたこと、原告所有の別紙目録記載の土地についても、客土工事を為したことは当事者間に争がなく、成立に争の無い乙第十乃至第十四号証の記載及被告代表者船越正信の訊問の結果によると、被告改良区は昭和二十七年一月十三日新に農地の嵩上及区劃整理を事業計画として設定し、同月十五日被告知事にこれが認可申請を為し、同年四月二十三日認可を受けたこと被告知事は品月三十日右認可の公告を為したことを認め得べく、原告本人訊問及検証の結果によると、被告改良区は右嵩上工事を知事の認可前である同年二月上旬から開始し原告の別紙目録記載の土地については、同年四月初旬頃該工事に着手し同年五月中旬終了したことを認め得べく、この点に関する被告改良区代表者船越正信の訊問の結果は措信し難い。しかして被告改良区が前記認定の通り嵩上工事に知事の認可前着手したことは違法なること明かであるが、その後右の通り知事の認可が為された為めこれにより、右瑕疵は治癒されたものと解すべく又、知事の右認可公告前工事に着手して居ることも前示認定の通りであるが、これが知事の認可の公告は組合以外の第三者に対する対抗要件に過ぎず、従つて組合員である原告はこれが公告の欠如につき異議を唱えることは許されない。次に証人幾原春三、茂松和行の証言及前示乙第十、十一号証の記載並に検証の結果によると被告改良区の殆んどの農地は地盤沈下の為め同二十七年二月頃は約三十糎の客土工事をしなければ耕作可能の十五糎の水位に達し得ないこと、原告所有の別紙目録記載の農地も同様であつたこと。右工事には必然的に区劃整理を伴い原告の土地のみ除外しこれ等事業を遂行することは不可能であることを認め得べく、この点に関する原告本人訊問の結果は措信し難くその他原告の立証によるも右認定を左右することは出来ない。右の次第で被告改良区の右客土工事はその手続上も工事施行の技術上も適法妥当に行われたことを認め得べきを以てこれが違法失当に行われたことを前提とする原告の本件請求も爾余の判断を俟つ迄も無く失当である。

以上の通り原告の本訴請求は総て理由無きを以てこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 今谷健一 小川豪 白井守夫)

(別紙省略)

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