徳島家庭裁判所 事件番号不詳 決定
少年 O(昭和一八・四・一八生)
主文
少年を教護院に送致する。
理由
第一、触法事実
少年は
(一) 昭和三十一年二月二十四日午後八時頃在学中の○○小学校担任教師に日頃再三注意をうけることを恨み学校を焼いてその恨みをはらそうと、徳島市○○○△丁目△△○○小学校の塵置物に携帯の先に同校理科室から持出したビーカーに入つたガソリンに火を放ち、同校校長K管理に係る、同校塵置物一坪半位を焼燬し因つて公共の危険を生ぜしめ、
(二) 同年四月二十四日午後十時頃前記同校塵置物に放火したが被害軽微で恨みがはらせないからと、前記○○小学校倉庫に立てかけてあつた、竹ほうきの中に携帯の同校理科室から持出したガソリンでひたした布切を入れて、これに火を放ち因て同校校長Kの管理に係る、現に人の住居に使用していない同校倉庫並に便所の屋根の一部等を焼燬し、
(三) 昭和三十二年三月十一日午後九時十分頃当日遠足中主任教師に叱責、殴打されたのを恨み、徳島市○○○○△丁目○○中学校第五校舎第一学年一組、教室において、同教室西角隅に備付けてある戸棚の中へ同教室のカーテンと古本を媒介物として押込み携帯のマッチで火を放ち、因て前記同校校長Sの管理に係る現に人の住居に使用していない二階建校舎(同校第五校舎)約延二百五十坪を焼燬し、
(四) 昭和三十一年六月頃の午後七時頃徳島市○○小学校西側校舎の渡り廊下に於て、同市○○○×丁目×の×小学校第三学年生C子(当九年)に対し、「黙つとれ」等と申し向け、同女の抵抗を抑圧して姦淫しようとしたが、その目的を遂げなかつた。
(五) 昭和三十年七月頃の午後四時頃前記○○小学校の塵捨場附近において、同市○○○×丁目小学校第三学年生、E子(当九年)の陰部に手を差し付けたり摩擦する等をして、もつて猥せつ行為をし
たものであるが、上記各項の所為は夫々刑罰法令に触れる行為である。
第二、主なる問題点(非行の要因)
(一) 家庭
父は勤勉だが病弱で偏執、固持的性格で家族並に少年に対しては暴君的態度で臨み、それに反し母は温和で感情に流され、盲目的である。兄も父に似た性格で父母の性格の差異が家庭に於ける規律を乱し、冷酷と盲愛が保護教育に一貫性と調和を欠ぎ、少年の発育と共に、父子葛藤を激しくし父母は手に負えない存在になつた少年の行動を放任黙認する様になつた。
(二) 身体的特徴
小学校時代から身体的に優れ精力、活動的な少年であつたが医学的鑑別の結果「巨人症」と診断された。
(三) 精神的特徴
知能は稍低い程度であるが精神病質中の「欲動人」に近く、即ち人格の層の中で、原始層に近い欲動部分が僅かの刺戟でむき出しになり易い傾性あり、上記身体的な「巨人児」と精神的発育が均衝を失い、外観に似ず「社会的未成熟者」である。一面性的早熟を来たしている。
(四) 地域社会、交友関係、学校社会の失調
近隣からは嫌悪され交友には敬遠され学校に於ても要注意児として警戒され対人関係の調和を失つている。
(五) 非行の習癖、重要化
小学校低学年時代から粗暴で激情して暴力行為が続発し小学校六年生当時に性的非行が始まり前後して放火事件を起し今回の母校放火事件を犯し、年少にかかわらず重大非行を犯し深刻な反省心もなく、将来非行が習癖化する虞が多い。
第三、処遇
以上の通り、少年の性格、環境並に非行性に照し現在の儘家庭で保護するのは困難で地域社会、学校にも適応できないから少年を収容保護することとし、少年に対しては「巨人症」の身体的な治療方法を期し、基礎的学習を通し社会性を涵養することが少年の更生を計る最善の方法であり、そのためには高度な個別指導、家庭的環境を備える施設で保護教育することが望ましい。
そこで少年法第二十四条第一項第二号を適用し主文の通り決定する。
(裁判官 芳村治通)